<今年の現代の名工>畳店を営む畳工の片岡武さん【徳島】
国が卓越した技能者に贈る「現代の名工」に、今年、徳島県内から過去最多と並ぶ3人が選出されました。
『フォーカス徳島』では今週、その3人の名工たちをシリーズでご紹介します。
22日は、阿波市で畳店を営む畳工の片岡武さん・83歳です。
佐々木聖夏フィールドキャスターのリポートです。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「畳の火は消さないと、誰よりも強い希望を持っております」
そう強く語るのは、阿波市土成町の畳工・片岡武さん・83歳です。
畳を作り続けて60年以上、今年度、国が卓越した技能者に贈る「現代の名工」に選ばれました。
数多いる畳工の中でも、片岡さんは神社仏閣で使用される畳の紋合わせの技能に優れています。
畳べりの紋を寸分たがわず合わせる技術を持ち、これまで多くの歴史ある寺社の施工を手掛けました。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「(紋が)4つ揃うという仕事。ここ(真ん中)が揃うということは、入り口がここならここ(入口)も揃わないかん。ただ真ん中だけを揃えたらいいんと違うんです。紋というのは、縁も縦も横も揃わないかんね」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「例えばここ、丸合わせるとするじゃないですか。ここちょっとずれてるじゃないですか。どうするんですか」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「この畳を伸ばすんです。1m97cmぐらいまでは(畳は)伸び縮みできますんでね」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「柄に合わせて、畳の長さをミリ単位で調節しているんですか」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「そうですそうです、紋に合わせてね。紋を付ける場合はね」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「緻密な作業」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「そうなんですよ、手間はかかるんです」
一口に「紋」といっても、様々な種類があるそうで。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「お雛さん人形を飾るでしょ、春に。それの下の台にする畳なんです。これらは大紋・中紋ていうてね、お殿様の(位の)高い部屋に敷くへりなんです。これは、京都二条城専属のヘリです」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「お城ごとに専属のへりがあったんですね」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「昔は誰でもこの紋は使わせてくれなかった」
ということで。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「どうぞ佐々木さん、へり選んでください」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「私が選んでいいんですか、ありがとうございます。どれにしよう」
センスが問われる「紋」選び、5分ほどかけて私が選んだのは。
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「決めました。この青に金の模様が入った華やかな柄に決めました。これでお願いします」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「はい分かりました。早速つけさせていただきます」
選んだヘリを、丁寧に縫っていきます。
仕上げは、昔ながらの手作業で行います。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「これでできました」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「ここが畳作りで大事なポイント?」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「一番大事。あんたええところに気が付くな、佐々木さん。昔から『畳の角造り』って言われとんですけど、ここにしわができるような縫い方では弱りますけんね。ゆるみができたらいけませんのでね、引っ張って縫いよんです。これができたら一人前じゃ、んまに」
誰も気が付かないような細かいところにこそ、匠の技がきらりと光る畳作り。
片岡さんによりますと、昔は県内に400軒近くあった畳店も、今は70件ほどにまで減ってしまったと言います。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「いま現在、洋風化してきているが、畳の火を消さないと。どなんぞ畳の掘り起こしを」
畳の良さを後世に残したい・・・そんな思いから、片岡さんはここ10年ほど県内の小中学校を訪れ、子どもたちに畳作りを教えています。
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「皆さん喜んでいただきます。畳の匂いがね、『これは先生良い匂いがする』 って言うてね。それが私たち嬉しいですわ、やっぱりね」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「どうですか、受賞が決まった時どんな気持ちでした?」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「得も言われぬくらい嬉しかったね。ほんまに感動しました。今まで(畳作りを)してきてよかったなあっていう」
(佐々木聖夏フィールドキャスター)
「畳職人の人生を振り返ってどうですか?」
(「現代の名工」に選出 畳工の片岡武さん(83))
「山あり谷ありの。職人は、いつが来たって天井はありませんからね。『日本の名工』をいただいたということは、私にとってこの上ない幸せです。これからも努力させていただきます」