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“スーツ一筋60年”「阿波の名工」80歳の男性テーラーのこだわりとは【徳島】

2023年11月9日 18:42
“スーツ一筋60年”「阿波の名工」80歳の男性テーラーのこだわりとは【徳島】

優れた技術を持つ職人に贈られる「阿波の名工」に、徳島市に住む80歳の男性テーラーが選ばれました。

スーツ一筋60年、今でも仕事が楽しくて仕方がないという男性の、卓越した技術とこだわりを取材しました。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「僕の場合は、洋服が一番の趣味だろな、これ楽しいもん。洋服を縫っている時は何も考えてない、一番幸せ」

今年度の「阿波の名工」に選ばれた、徳島市のテーラー・後藤一平さん・80歳です。

20歳の時にこの道へ入り、今年で60年を迎えました。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「(若いころは)毎日、(午前)2時半、それくらい仕事が楽しいし、やりがいがあったし。みんなそれを苦労っていうんだけど、自分は苦労と思ってない」

後藤さんは2009年、職人として国内最高峰の「現代の名工」に次ぐ、全国技能士会連合会のマイスターに認定されました。

全国的にも高い評価を得ているその技術力が、今回「阿波の名工」として県からも認められました。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「無我夢中でしている仕事。それに賞をくれるってありがたい、めちゃくちゃ嬉しい」

洗練された後藤さんの仕事には、一切の無駄がありません。

通常、スーツを作るときは型紙を使ってそれぞれのパーツを裁断しますが、後藤さんは型紙はほとんど使わず直接生地を裁断していきます。

直裁ちと呼ばれるこの手法は、すべてのパーツの生地の大きさ、それに配置が頭にないとできません。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「僕が買う時は、(生地は)いつも30センチは少ない。できるだけ、いかに上手に生地をとるかという勉強は良くした」

時間にも無駄はありません。

通常、1着のスーツを作るには約60時間かかりますが、後藤さんは47時間ほどで1着を仕上げます。

「これで裁断終わりです、できました。これが袖の山袖と下袖、それで背中」

持ち前のアイデア力と、型に捉われない柔軟さで、時には邪道と言われるような新しいスタイルも取り入れてきました。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「後ろのこれやって2本つけている、邪道なんよ、これした方がズボンが下がらん。自分で思うたから、人には言わずにしていた。10年後に東京から講師が来て、ここには2本付けた方が良いっていう風な講習会があった。それから、全国的に広がった」

この日、後藤さんのお店にひとりの女性がやってきました。

徳島市内の洋品店で働く、髙橋絵奈さんです。

3年前から後藤さんの指導を受けています。

(髙橋絵奈さん)
「スーツはこうあるべきと、頑固なところがあって自分のやり方が一番って思っている職人が多いが、後藤先生は今の流れをくみとって、実用的な部分の技術を教えてくださる」

髙橋さんは、「1級紳士服製造技能士」を目指して後藤さんに弟子入りし、見事、合格を果たしました。

県内では女性初の快挙でした。

この日は最も難しいとされる「肩入れ」の技術を学びます。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「ズボンのきれいに入るのが3年、肩を入れるのが7年、肩入れが一番難しいので、それをきょう、やってみようかなと」

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「この芯を少し出す、そうしたらここがこうなる」

(髙橋絵奈さん)
「はい、できた」

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「これだけできて、上等」

(髙橋絵奈さん)
「きれいにできた。難しすぎて1回では絶対に覚えられない」

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「言ったとおりにしてくれて覚えが良い、熱心やし。ときどき勝手にすることあるけど」

若いなり手が少ないという現状の中、後藤さんにとって髙橋さんは将来を託す存在です。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「僕にしてみたら後継者だから。後継者をいかに育てるか、それは大変いいことだと思う」

(髙橋絵奈さん)
「先生が60年されてきた技術を私が受け継いでいる。それをまた私が後世に引き継ぐという使命があると思うので、この技術をもっとたくさんの若い人たちに引き継いで、職人を目指してくれる人を作りたいと思います」

最後に御年80歳、後藤さんの今後の目標を聞きました。

(「阿波の名工」に選ばれた 後藤一平さん(80))
「自分が元気な間はやっぱり針を持ちたいので、ずっと続けたいと思います。趣味だし、僕の命みたいなもん」


とにかく、服に対する情熱がとまらない後藤さんは、55歳の時に新しく婦人服を習い始めて、今では紳士服と婦人服の両方が縫える、業界内でも珍しい存在だということです。

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