針を使った一風変わった作品 四国霊場のご本尊を描く男性が仏の絵に込めた思いとは…【徳島】
■ギャラリーには八十八か所全てのご本尊が…
景勝地「午尾の滝」のふもとに広がる阿南市深瀬町。
この町にある一軒の民家に1月、新たなギャラリーが誕生しました。
展示されているのは輪切りの木。
そこには四国八十八か所のご本尊が描かれています。
よく見てみると…。
線に見えていたものは全て黒い点。無数の点で仏が描かれています。
ギャラリーには八十八か所、全てのご本尊が並んでいます。
作者はこの家で生まれ育った佐竹弘さん76歳。
(佐竹弘さん(76))
「最初は線を入れたり色々したが、針で突いた一点にしようと。針で描いたら細かいところ柔らかいところから硬いところまで表現できる」
描き方は佐竹さんオリジナルの「針描画」という方法です。
カーボン紙に転写した仏の絵を針で突き、なぞっていきます。
すると、カーボンインクが木に刻まれ、仏が浮かび上がります。
(針描画家 佐竹弘さん(76))
「1枚ですか、1枚はだいたい(完成に)2日ぐらいですね」
拡大鏡をかけ、1日5時間は机に向かいます。
(針描画家 佐竹弘さん(76))
「長い事使うと溶けてくる汗で。打てない。肉眼では」
気の遠くなるような作業。そうまでして針を使って仏を描く理由とは。
■佐竹さんが仏を描く理由とは
(針描画家 佐竹弘さん(76))
「いつもうちの家内が針を持っていたなと思って。いろいろ思い出します。あまり良い事は思い出しませんね。辛い事ばかり」
7年前、佐竹さんは40年以上連れ添った最愛の妻を亡くしました。
1年ほどは何も手につかず、悲しみに暮れていたそうです。
ある時、ふと、妻が愛用していた裁縫の針を使って在りし日の妻を描いたことが、全ての始まりでした。
佐竹さんはこれまで四国霊場を4回巡礼しました。
妻の供養のため、各霊場のご本尊を描き始め全て描き上げるのに6年かかりました。
(針描画家 佐竹弘さん(76))
「最後まで続いたのは家内に対する想いがあった供養もあったし、人への想いがなかったらこれはできないここまではしなかった」
木材も針も偶然身近にあったものです。
妻との死別を機に新たな生きがいと出会いました。
(針描画家 佐竹弘さん(76))
「人に想いが伝わるような作品。(今後は)自分で考えた構図で作品作りしていきたい。家内が遊びよって言ってくれた贈り物。描画しながら長生きしいよ」
針描画家、佐竹さん。きょうも静かに仏とそして己と向き合います。
■佐竹さんのギャラリー「四国霊場描画屋」は土曜日と日曜日に開かれる。3月3日は加茂谷地区でイベントも開かれ、ギャラリーでは針描画のワークショップも。