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いったいなぜ? 高齢化社会で重要性が増す「介護」業界に異変が 4月から訪問介護の基本報酬引き下げ【徳島】

2024年3月15日 22:19
いったいなぜ? 高齢化社会で重要性が増す「介護」業界に異変が 4月から訪問介護の基本報酬引き下げ【徳島】
高齢化社会の到来で、ますます重要性が増す「介護」業界にいま、異変が起きています。

介護医療法人の経営支援などを行っている福祉医療機構の最新の調査では、高齢者や障害者などの自宅を訪問しケアを行う「訪問介護」、いわゆるホームヘルパーの事業所は約4割が赤字であることが分かりました。

にもかかわらず政府は、2024年4月1日から、この訪問介護の基本報酬を「引き下げる」ことを決めました。

いったいなぜこんなことになったんでしょうか?

そもそも介護報酬は1割が利用者の自己負担、残りの9割は公費でまかなわれていて、3年に一度、国が改定することになっているんです。

今回の報酬改定に訪問介護事業者は、「ただでさえ人出不足なのにさらに経営が厳しくなる」と、危機感を募らせています。

現場を取材しました。




介護士歴10年の福居めぐみさん。

この日、高齢者の訪問介護に同行させてもらいました。

(介護士 福居めぐみさん)
「きょうはとりあえずお掃除をさせていただこうかなと思っています」

訪ねたのは徳島市内で一人暮らしをしている米田稔さん(77歳)の自宅です。

週4回、掃除や食事のケアのため訪問介護を利用しています。

この日、福井さんは1時間かけて台所や寝室などを丁寧に掃除しました。


(訪問介護を利用 米田稔さん(77))
「(Q.どういうところがいちばん助かる?)生きとるか死んどるかの確認、心強い」

(介護士 福居めぐみさん)
「すごく顔色が良くて安心した、良かった」

この日は元気な顔を見せた米田さんですが、足腰が不自由なため自宅で転倒することもあるそうです。

(訪問介護を利用 米田稔さん(77))
「ふらっと頭打って」
「ここ傷になっている」

幸い、これまで大きなケガはしていませんが、訪問介護は病気やけがの早期発見という意味でも心強い存在です。

その介護に対する報酬は、サービスに応じて国が定める「単位」が与えられ、「1単位」あたり10円の報酬が事業者に支払われます。

米田さんに行うような食事や掃除の介護は、「生活援助」というサービスに分類されています。

4月1日からの改定では、これまで45分以上の利用で225単位だったのが、220単位に引き下げられます。

金額にすると、1回あたり50円のマイナス。

米田さんは週4回利用しているため、1か月に換算すると少なくとも800円は報酬が下がることになります。

(訪問介護を利用 米田稔さん(77))
「今でも安いわな。(仕事が)厳しいわりに大変やな。(介護士がいないと)単純に困る」

(介護士 福居めぐみさん)
「これからどんどん高齢者の方が増えていくのが分かっているのに、やっぱり現場のことが理解されてないのかなって感じる」

一方で、研修の実施など国が定める要件を満たせば、事業所に対して補助が出る「処遇改善加算」という制度があます。

今回の改定では基本報酬が引き下げられた一方で、この「処遇改善加算」の要件のハードルが緩和され、加算率が引き上げられました。

国はこの制度をより多く利用することで、トータルではホームヘルパーの賃金を上げることができるとみています。

しかし、大手はともかく、中小の事業所では話はそう簡単ではありません。

「こんにちは。よろしくお願いします」

徳島市で訪問介護事業所を経営している松山大輔さんです。

自宅で暮らす高齢者だけでなく、有料老人ホームの入所者のケアなど、幅広いサービスを提供しています。

(訪問介護事業所経営 松山大輔さん)
「ほな背中流しますね、この辺とかってかゆいですか?((男性)「いやかゆくない」)赤かったけんね」

この日は汗だくになりながら、入浴の手伝いなど1時間あまりの介護を行いました。

(訪問介護事業所経営 松山大輔さん)
「必要じゃないのかなと。僕自身では訪問介護はいらないのかなと、国からしたら感じた部分はあるけど、処遇改善加算で従業員の給料もアップして、ただ会社に残るお金は少なくなってくるけども、これからどうなるのかなっていう不安は正直なところあります」

従業員が少ないため、経営者である松山さん自ら現場に出ています。

ギリギリの人数で事業を続ける中、従業員に研修を受けさせ要件をクリアできるのか不安を抱えています。

(訪問介護事業所経営 松山大輔さん)
「講習があったら従業員を参加させるとか、そういったことができるのであれば(処遇改善加算が)可能な部分はあるけど、やっぱりヘルパー一人一人が現場に入ってというところで収入を得ているというか、なかなかそこ(要件)まで行きつかないのかなっていうのが現状にある」

来年度の収益がどうなるのか、先が見通せないままただひたすら目の前の利用者に全力で向き合っています。

(訪問介護事業所経営 松山大輔さん)
「若い人の力も必要だし、やっぱり従業員の給料を打ち出さないと誰も来てくれないと思っているので。かといって、お金を払って募集をかけることも今できないので、そこは(経営者)としての責任というか、不足している部分かなと感じている」

日本介護支援専門員協会の山口浩志常任理事は、基本報酬の引き下げに危機感を募らせつつも、処遇改善加算の引き上げが事業所の経営強化のきっかけになると話します。

(日本介護支援専門員協会 山口浩志常任理事)
「加算というのは、あくまで手段。加算を取ることが目的ではなくて、加算を取れるような体制・仕組みづくりをすることによって機構改革していく。人手不足の中、どのようにして効率よく仕事をしていくようにするかということが大事なことであって、支える人を支える改革で、目的は加算を取ることの向こう側の経営をどうするかということ。やはりこれは、経営努力が必要な時代じゃないかなと思う」




基本報酬を下げて処遇改善加算を取らざるを得ない状況にすることで、事業所の経営改善を促す狙いもあるのではないかと感じますね。

今回の訪問介護報酬の引き下げについて、徳島県が介護事業者に聞き取り調査などを行ったところ、処遇改善加算を評価する声もあった一方、今後の先行きを不安視する声もあったということです。

県の担当者は、「引き続き、現場の実態把握に努めていきたい」と、しています。

介護を必要とする全ての人に安定してサービスが行き届くよう、政府は現場の声に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。

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