【切実な理由】建設会社5社が合同で野球部を創設 ライバル同士でチーム結成 その理由は
阿蘇にある5つの建設業者が集まり、野球部を創設しました。その裏には切実な理由がありました。
熊本でも盛んな軟式野球。県軟式野球連盟の加盟チームにはA級からC級まであり、そのうちC級で先月、県のトップに立ったのが、阿蘇コンストラクションベースボールチーム、通称ACBT。創部わずか半年ですが、九州大会も勝ち抜き、全国大会に出場しました。
■緑健一朗選手
「そんな、すぐすぐに全国とか行けるのかなっていうのが9割方思ってたんですけれど、できすぎだと思います」
実はこのチーム、阿蘇の建設会社5社が合同で作りました。道具代や遠征費など、チームの経費は会社が全て負担し、野球しやすい環境が整っています。
■熊本県軟式野球連盟 村岡隆理事長
「珍しいですね。普通はライバル会社同士なのに、共同で作るっていうのは」
チーム創設のウラには切実な理由が
社長は全員、スポーツ経験者。なぜこんなチームを作ったのかというと、実は切実な理由が。
■杉本建設 杉本素一社長
「今、なかなか人材が不足していて…」
■島村組 島村公章社長
「高齢化が進んでいって…まあ…この先の事を考えると…」
■藤本建設工業 藤本憲成社長
「このままの状態でいても変化がなかなか…」
主に土木工事に携わっている皆さん。慢性的な人手不足に悩んでいました。建設業界には今、なかなか若い人が来てくれないというのです。
■森本建設 森本剛志社長
「昔ほどじゃないけれど、やはりイメージ的に『きつい、汚い、危険』というのは、まだ残っているところはあると思いますので、建設会社に就職っていうと、『喜んで』という感じではない」
求人票を出しても…。
■森本剛志社長
「入る訳ねえよなって…。休日が山んごつある訳じゃないし、給料が、よそよりがーんと高い訳じゃないし…」
特に、もうすぐ熊本にできる某大手半導体メーカーなどと比べられようものなら…。
■森本剛志社長
「太刀打ちできんよなあと…」
■松本組 松本頼太社長
「我々の会社には、まず応募してくれる人が…来ないですね…」
野球を続けられるから就職先を決める発想も
そんな時、思い悩んでいた森本さんのもとをひとりの営業マンが訪れます。相手は息子の野球部時代の先輩。ひとしきり野球談議に花を咲かせた後、ふとこんな話に。
■森本剛志社長
「何で今の仕事選んだのっていう話から、『いや実は、特に何の仕事がしたいというよりも野球を続けたかった』って…」
決め手は、野球を続けられる仕事。確かに野球部がある会社に就職すれば、社会人になっても高いレベルで野球が続けられます。企業の野球チームというと、硬式野球を思い浮かべますが、実は軟式野球もチームを作っている会社がたくさんあります。
■森本剛志社長
「職を選ばんで、野球を続けたいで就職先を決めるという発想があるんだなあって…」
■緑健一朗選手
「学生時代、野球を続けたいから野球部のある企業に就職する人は結構多かった。軟式野球でも。草野球レベルじゃなくて、真剣に続けていきたいっていう気持ちはよくわかります」
しかし、なにぶん小さな建設会社。野球チームの運営は、1社だけでは負担が大きい…。そこで森本社長、閃いた!何社か集まってやればいいんだ!すぐに仲のいい同業者に相談です。
■松本頼太社長
「面白い話持ってきたなー、このおっさんはと…」
■島村公章社長
「アイデアがすごいなと」
■藤本憲成社長
「実になるように頑張ってやってみようかという事で…」
■杉本素一社長
「まあ一番のPRに繋げられればなあと」
皆、好感触。思いついてわずか半年ほどでチームが発足しました!ひとまず今年度は、5社以外の助っ人で部員を揃え、来年度からは5社の新入社員から部員を募集することになりました。
野球するために入社した社員に建設業の魅力を感じてほしい
■福山拓馬選手(電力会社勤務)
「建築業界は人が少ないとは聞いていたので、すごくいい取り組みだなと」
■中島裕介選手(製造会社勤務)
「人不足というのはどこでもある事だと思うので、野球を通して若い子がどんどん興味を持ってもらえたらいいなと」
野球ができることを、就職のきっかけにするねらい。チームを作った5社からは現在2人が参加していて、来年から入って来る新入社員に、建設業の魅力も感じてほしいと願っています。
■川上純選手(杉本建設)
「このトンネル工事に携わらせていただいて、一生残るものを施工できるっていうのは非常に自分にとって財産になりますし、いい思い出になる現場だなと思う。完成したら、ぜひ通ってみたい」
■山本遼太選手(森本建設)
「工事が終わった後の達成感だったり、地図に残る仕事なのでやりがいはあると思う」
■松本頼太社長
「まっさらな土地に道路が整備されたりとか、災害でズタズタになった道路を復旧させたり、自分が携わったからこそ持てるやりがいっていうのが…」
昔は、きつい、汚い、危険の3Kと言われた建設業界。しかし今は…。
■松本頼太社長
「業界として取り組んできたのが、『新3K』という言葉を使って、待遇の良い業界に改善していこうっていう…」
その新3Kとは?
■松本頼太社長
「希望…と?」
■緑健一朗選手
「俺、知らんす!」
社長!そこ大事です!
■松本頼太社長
「あ、給料、希望、休暇ですね」
なるほど、安心です。あとは野球部員を増やすだけ!これから就職活動を控える高校の野球部にも、建設業界と野球をセットでPRです。
■杉本素一社長
「稼げる業種になってきつつあるので、就職先として考慮していただければなと」
■島村公章社長
「福利厚生面とか、会社も成長していかないかんとかな」
■藤本憲成社長
「徐々につなげていけたら」
■松本頼太社長
「趣味の充実が作業にも充実してくると思います」
■森本剛志社長
「野球に夢中になれる子は仕事にも夢中になれます」
なお、上下関係やチームワークを学び、体力もある野球部員は、まさに建設業界が求める人材だということです。しかし強いチームでないとと部員も入って来ないので、今はA級に上がる事が目標。
また、5社の給与格差を無くすことも課題です。しかし、給与が低い会社は、これを成長への好機と考えているそうです。