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観光客にも人気の郷土料理「阿蘇たかな漬」がピンチ 害虫の影響でタカナ生産量が激減

2024年2月29日 18:26
観光客にも人気の郷土料理「阿蘇たかな漬」がピンチ 害虫の影響でタカナ生産量が激減
世代を超えて受け継がれ、今後も継承を目指す、文化庁の「100年フード」に認定されている「阿蘇たかな漬」。その原料となるタカナの生産量が大幅に減少する事態に直面しています。現状を取材しました。

2月26日、阿蘇市にある「道の駅 阿蘇」。商品棚には、特産の「阿蘇たかな漬」がすらりと並んでいます。原料になるのは、この時期に地元で収穫されたタカナ(高菜)。しかし、ある異変が起きているというのです。

■菊池食品 菊池秀一代表
「ここはタカナの畑ですが、見ての通り、できている所とできていない所があるんですよね。できていても、もう枯れ果てている」

「阿蘇たかな漬」の製造・販売を手掛ける菊池食品の菊池秀一さん。自社の農園3ヘクタールでタカナを栽培しています。収穫前の畑では、隙間が目立ち、葉が変色し枯れている場所も多く見られます。

その原因は…。
■菊池食品 菊池秀一代表
「いますね。赤い足の虫がいるんですよ。この先に」

枯れたタカナの根にいたのはハクサイダニ。体長1ミリに満たない大きさで、名前にあるハクサイだけでなく、ダイコンやホウレンソウなど様々な野菜に被害を及ぼします。冬の時期に農作物の茎や葉から汁を吸って枯らします。
菊池さんの農園では、今後被害が拡大すれば、今年の生産量は例年の4割ほどになるおそれもあるといいます。

■菊池食品 菊池秀一代表
「タカナの収量が減るので、そこに一番影響がある。そこの不安がある。やっぱりショックですよ」

実は菊池さんの農園では、去年もハクサイダニによる被害が確認され、2年続けて収穫量が大幅に減少しています。

■菊池食品 菊池秀一代表
「ここが通常、本漬けの阿蘇タカナを漬けるためのタンクです」

前の年に漬け込み、保管するタンクです。本来、今の時期は満杯ですが、空の状態です。

■菊池食品 菊池秀一代表
「あそこにある1つのタンクしかない。この量しかない、残っていない。来年度分が出回る7月までもたせないとという感じなので、綱渡りどころか、多分途中で切れるんじゃないかなと、ちょっと不安に感じていますね」

ハクサイダニによる被害は阿蘇の広い範囲に及んでいます。阿蘇では、2020年までは例年5000トンから6000トンのタカナが生産されていました。しかし、農家の高齢化による担い手不足などで年々減少。加えて、去年はハクサイダニの被害で1600トンまで落ち込みました。今年はさらに下回る見込みです。

危機感を募らせる菊池さん。去年の被害を受けて、夏に畑に水を張るなど対策を行ったものの、効果はさほど見られなかったといいます。駆除に有効な農薬はありますが、タカナは国から対象の農作物に登録されていないため使用できません。このため菊池さんは1月末、地元の他の会社とともに、農林水産省に早期登録を求める陳情書を提出しました。

こうした状況に地元の道の駅を訪れた人は。
■地元の人
「阿蘇たかな漬はなくてはならないもの。なくなったら寂しいんじゃないですかね」
■横浜からの観光客
「昨夜は高菜飯とかも食べたが、すごくおいしかった。食べづらくなるっていうのを考えると残念」

■菊池食品 菊池秀一代表
「阿蘇たかな漬は、文化庁の100年フードの認定を受けた。阿蘇地域の食文化を途絶えさせたくない」

阿蘇の食文化を守りたい。生産者たちの模索は続きます。

【スタジオ】
熊本県農業研究センターによりますと、ハクサイダニによる被害は2006年から報告がありました。少しずつ増える中で、去年、爆発的に増えたとということです。なぜ阿蘇地域でハクサイダニが大量に発生したのか、気象の影響など様々な要因は考えられるものの、詳しくは分からないということです。

取材した菊池さんは、被害があった畑には卵が産み付けられ、来年も同様に被害が出る可能性がるということで、別の土地での栽培も検討するということです。