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「田植えができない」球磨川の水せき止められず地元農家に影響

2024年6月4日 19:17
「田植えができない」球磨川の水せき止められず地元農家に影響
イグサ農家・田淵稔さん

球磨川から農業用水などを確保するための国の施設が大雨で被災し、5月末に国は八代市内の農地に影響が出るおそれがあると発表しました。現地を取材すると、地元の農家ではすでに影響が出ていました。

八代市を流れる球磨川。問題となっているのは「遥拝頭首工」と呼ばれる、水をせき止め農業用水などを確保する施設です。老朽化に伴い2018年から耐震工事が続いていました。

しかしことし3月、水をせき止めるためのゲートの工事中、設置していた仮の板が水量に耐えきれず変形。工事は中断、水を十分にせき止めることができない状態となっています。

九州農政局では、仮の板は過去5年間の同じ時期の球磨川の流量の試算から毎秒900トンに耐えられるよう設計したということですが、3月の大雨では想定の倍以上を上回る毎秒2200トンの流量になったと説明しています。またその後、応急的に設置した土のうのようなものも5月の大雨で流出しました。

この施設では、主に八代市と氷川町の農地、通常は毎秒13トンの水を5400ヘクタールの約6300人に供給。今は4割程度にとどまっています。

周辺地域で農地の整備や管理を行う団体の坂田孝志理事長。すでに地元農家に節水を呼びかけています。

■八代平野土地改良区連合・坂田孝志理事長
「田植えの時期に入っています。田植えに支障をきたしている。植えていない人には水が4、5日来ませんから田植えを延期してください(と伝えている)」

こちらの農家では、八代特産のイグサを育てています。
6月下旬から7月にかけて収穫の最盛期を迎えるイグサ。収穫前の今の時期がイグサの成長のため最も水が必要となるといいます。

Q.通常水はどこまである?
■イグサ農家・田淵稔さん
「コケが生えていますが通常はこのギリギリのところ。15センチ以上下がっている水の取水口にかかっていない。それだと水が田んぼに入っていかない。もし10日間くらいこの状況が続くと収穫がかなり遅れてしまうので収穫量が何割か減るのではないか」

農家にとって切実な“水”。
九州農政局や地元の団体は6日までに土のうを積み上げ、少しでも農業用水を確保したいとしています。
遥拝頭首工のゲートの工事は川の水量が一定程度少なくなる11月以降に再開する方針です。