大動脈なのに"細い動脈"に…渋滞解消のカギとなるか「熊本電鉄」を分析
「抜け出せ!渋滞都市!」
全国的に見ても深刻だと言われる熊本の交通渋滞について、KKTが徹底取材して伝えるシリーズ企画です。取材した宮澤奎太アナとお伝えします。
(宮澤奎太アナ)
渋滞解消に向けては先日、木村知事と熊本市の大西市長が会談し、マイカーから公共交通への転換を促す方針を確認しました。しかし市電はトラブルが相次ぎ、バスも人手が足りず減便をしています。
そこで今回は熊本市から合志市までを結ぶ「熊本電鉄」について分析します。
人口増加が進む合志市と熊本市内を結ぶ熊本電鉄。御代志駅と藤崎宮前駅をつなぐ路線と、北熊本駅で分岐し上熊本駅へ向かう路線があり、総距離12.9キロの民間鉄道です。しかし、沿線では…日々、渋滞が発生。国道3号線の熊本市北区清水本町から室園町と、国道387号線の合志市須屋~熊本市北区八景水谷の区間は、国土交通省の主要渋滞か所に選ばれています。実際に、平日の朝に向かってみると…。
■宮澤奎太アナ
「朝の合志市、再春医療センター前の交差点です。私の後ろ国道387号線も混雑しているんですが、ここに入ってくる脇道もだいぶ交通量が増えています」
朝7時半頃、熊本市から菊池方面へ向かう車で大渋滞…約30分で解消されたと思ったら…
■宮澤奎太アナ
「午前8時過ぎになりました。先ほどまでは菊池市方面の車が渋滞していたんですが、現在熊本市方面、反対側の道路も渋滞が始まっています」
上り線・下り線ともに、この渋滞…。合志市によると、午前7時半~9時頃までが最も混雑するといいます。
渋滞緩和の手立てとして期待されるのが、マイカーから沿線を走る熊本電鉄への転換です。
■国民の足を守る熊本県民会議・坂本正会長
「あれだけの市街地を通っているというのは、日本の中から見ても非常に優良な交通資源なんですが、まだ活用できていない」
こう話すのは、熊本の交通問題に詳しい坂本正さん。交通渋滞の緩和に向けて、熊本電鉄を活用するための対策を取るよう7月に県に要望しました。
■国民の足を守る熊本県民会議・坂本正会長
「大動脈なんです。大動脈なんだけど非常に細い動脈なんで、これを太い動脈にしていかないと、公共交通の活性化と渋滞緩和ができない」
2010年度以降、利用者が160万~220万人の間で推移している熊本電鉄。コロナ禍には109万人ほどまで落ち込みました。実際に利用している人に話を聞いてみると。
■利用者
「本数がもうちょっとあと1,2本増えたら嬉しいです。1時間に2本なので。通勤時間帯とかずいぶん人が混みますので本数増やしてもらえるとうれしいかなと」
1時間に2本運行している熊本電鉄。通勤通学の利用者が増える朝や夕方は4本に増やしていますが、それでもこの混雑です…。さらに。
■利用者
「学校行くときなどに使います。藤崎宮まで行ったあとに市電に乗り換えないと移動できないのでもうちょっと延長してくれるとうれしいと思うんですけど」
上り電車の終点・藤崎宮前で降りると、繁華街の通町筋までは、さらに歩くこと10分ほど。
マイカーからの転換促進には、利便性の改善がカギになりそうです。こうした利用者の声を熊本電鉄にぶつけてみると…
■熊本電鉄 鉄道事業部・中野育生さん
「本数を増やしたりとかその両数を増やしたりとかというのが 現実的になかなか難しい状況ですね」
単線である熊本電鉄が運行本数を増やすには、上下線が離合できる駅や運転士の数を増やすことが必要だといいます。その上、延伸や駅の増設となればさらに莫大な費用が。
■熊本電鉄 鉄道事業部・中野育生さん
「鉄道で一番負担になるのが設備投資の部分になってきますので、やはり昨年度も相当の営業赤字という形にはなっていますね」
電車のみの営業成績は過去70年間、赤字続き。厳しい経営状況の中で、レールや車両の交換など安全確保のための設備投資を優先しているため、新たな設備投資にはなかなか踏み切れないのが現状です。
坂本さんは利用促進に向けて「会社側が先行投資をするのか、あるいは県や市が協力をするのか、しないといけない」と訴えます。
■国民の足を守る熊本県民会議・坂本正会長
「熊本でも有数の人口増加地域なんですよ合志は。熊本電鉄はそこを基盤にしているわけですから、そこの交通を担う会社としては、もっと積極的なプランニングとか姿勢とか、成長していく都市にふさわしい交通体系というものを出して、それを支えるための合志市の流れと熊本との連携、そして県の役目というものが一体化しないと、県民、市民が利用しやすい公共交通機関にはならない」
渋滞都市の真ん中を走る熊本電鉄。交通の大動脈への期待を受けつつ、大きな課題に直面しています。
【スタジオ】
熊本電鉄は今年、合志市と熊本市との間で上熊本駅の交通結節機能強化に向けた協議会を立ち上げました。
上熊本駅は、現在熊本電鉄のホームと熊本市電の乗車場所が80mほど離れていて、相互乗り入れや対面乗り換えを視野に協議を重ねます。これが可能になれば、合志市から上熊本を経由して街中、あるいは熊本駅方面へのアクセスも向上し、利便性が高まるかもしれません。
一方で藤崎宮前から市街地へのアクセス強化は難しいようです。民間単独でスピード感をもって利便性を高めていくのが厳しい現状だと改めて分かりました。自治体も一体となって取り組めるかかが、カギとなりそうです。