「子どもたちと団らんしたかった」旧優生保護法で不妊手術強制 熊本の原告と国が和解
1948年に制定された旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして、国を訴えた熊本県内の男女2人が7日、福岡高裁で国と和解しました。
和解が成立したのは、熊本県内の70代の女性と、今年2月に79歳で亡くなった渡邊數美さんの2人です。2人は、旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制されたとして、国に賠償を求めていました。去年1月、熊本地裁は原告勝訴の判決を言い渡しましたが、国が控訴。渡邊さんは福岡高裁の判決を前に今年2月に亡くなり、遺族が裁判を引き継いでいました。
全国でも同様の裁判が続き、最高裁判所は今年7月、旧優生保護法は「憲法違反」と判断しました。これを受けて、9月には国が補償を支払うことなどで全国の原告と和解する合意書に調印。原告1人あたり慰謝料1500万円を支払うなどの内容が盛り込まれました。
そして、7日の福岡高裁。法廷で弁護団の吉野雄介弁護士が亡くなった渡邊さんについて、「『国に謝ってもらうまで死んでも死にきれない』と言っていたにも関わらず、国が訴訟を長引かせた。渡邊數美という人がいたことを忘れないでほしい」と述べました。国は、「訴訟が長引いたことを重く受け止めている」と2人に謝罪。それぞれ弁護士費用を含む2100万円あまりを支払うことで和解が成立しました。
和解を受けて、原告の女性が思いを述べました。
■熊本訴訟の原告女性
「弁護士の先生方や支援者の皆様のおかげで、きょうでこられたことは本当に良かったと思います。私の一生の中で、神様が一日だけ願いをかなえてくださるとしたら、子どもたちと普通にお話しをしたり、普通にお食事をしたりして団らんの時を過ごしたかったです」
【スタジオ】
旧優生保護法をめぐっては来年1月に被害者の補償立法が施行され、障害により不妊手術を受けさせられた人に裁判の和解金と同じ1500万円が支払われるということです。