難病と生きる 富山市のオルガン奏者が思いを音楽にのせて
筋力が衰えていく難病と生きるオルガン奏者の女性が富山市にいます。
言葉で伝えきれない思いを音楽にのせて届けようと演奏を続ける姿を取材しました。吉田記者のリポートです。
病院に響く、柔らかな音色。
奏でていたのは、オルガン奏者の松原葉子さんです。
松原さんは、この病院に入院している患者でもあります。
筋力が次第に弱まっていく難病、「筋ジストロフィー症」を患っていて療養を続けています。
松原さん「力ないんですよ。ないんですけど、オルガンのペダルを踏む力だけは、なぜかあるという。だから不思議なことばっかりなんですね。もちろん手もそんなに動きませんし…」「人工呼吸器をずっとつけて、24時間サポートを受けながらなので、きょうも無事にコンサートを終えられることが一つの目標で…」
幼少期から、進行性の筋ジストロフィー症とともに生きてきた松原さん。
教会音楽を学びオルガン奏者として各地で演奏を続けてきましたが、7年前に肺炎による呼吸不全を起こし、死の淵に立たされました。
一命を取りとめましたが、その後は、気管切開し人工呼吸器を装着する生活となりました。
松原さん「7年前、私は寝たきりでした。声で伝えることができない。そうした状況におかれて、一番もどかしく感じたのが、〇〇さんって呼びかけることができないこと。それから『ありがとう』と、言うことができないことでした」
自分を支えてくれる人たちへの感謝の思いを音楽にのせて届けたい。
松原さんは、再びオルガンの前に座りました。
この日、医療関係者や松原さんの知人が集まる中、選んだのは、自身が作曲した歌「ありがとう」です。
♪ 苦しいときも 悲しいときも 心から微笑む ありがとうの代わりに 微笑む
「聴かせてもらってありがたかったです」
「当たり前に思っていることを、ありがとうと思うことを忘れていたなと思って、思い出させてもらいました」
松原さん「いま出会っている方はもちろんのこと、亡くなった仲間たちもですし 私を生かしてくださっている大いなる存在に対しての感謝を込めて(弾きました) いつまでかわからないけど、許されるまで(弾き続けたい)と思っています」
松原さんが思いを乗せ奏でるメロディー。
感謝の気持ちは聞く人の心の奥深くまで届いていました。