【挑戦者たち】伏木相撲で被災地に元気を 震災から1年…元日に土俵入り
能登半島地震の被災地、高岡市伏木地区。
元日の午前0時、震災の爪痕が残る神社に現れたのは…。
まわし姿の男たち。
気温2.8度。
身を刺すような寒さの中、土俵入りを奉納したのは、伏木相撲の力士、桶ノ谷こと桶谷知生さん(38)です。
桶谷さん「金刀比羅神社も見れば分かるんですけど、当時のままというか、そういう中でできたのは、神聖な気持ちになったというか。これで仕切り直しができた」
桶谷さんは30年以上続く地元の素人相撲団体、伏木相撲愛好会の看板力士です。
年明け早々に行った土俵入りには、地域を元気づけたいという今年にかける強い思いが込められていました。
新婚生活を襲った地震 暮らしは一変
去年、元日に発生した能登半島地震。
伏木地区は液状化で道路や家屋に大きな被害を受けました。
地区の中心部にある桶谷さんの自宅は地盤が大きく傾き「大規模半壊」と判定されました。
桶谷さん「いやあ、見た瞬間ぼう然としましたね、あー沈んどると思って」
「ここはもともと水平やったがです。それがここまで落ちてしまって」
能登半島地震の5か月前に結婚したばかりでしたが、地震の影響で今もそれぞれの実家で離れて暮らしています。
住民の流出が深刻化している伏木地区。
桶谷さんは、今後の地震で再び液状化する不安を感じながらも、同じ場所に家を建て直そうと決意しています。
桶谷さん「25坪ほどの平屋を建てようと思ってます。津波が来たらどうしようもないですけど、地震対策いう面では平屋にした方が2階建てよりも躯体自体も軽いですし」
「3月の末までに解体が終わって。そのあとすぐ新築に取り掛かれたとして、8月の盆過ぎくらいかないう感じですね」
「生まれた街やし、親兄弟もおるし自分だけさっさと違うところ行くという判断は、薄情なんじゃないかと自分では思う」
地域の相撲大会を心の拠り所に
被災後、心の支えになったのが8年前に始めた伏木相撲でした。
今から35年前の1990年に始まった伏木場所大相撲。
大人から子どもまで多くの住民が参加する地域の相撲大会が、毎年9月に開かれてきました。
去年4月の初稽古は能登半島地震の影響で、30人以上いる力士のうちわずか5人しか参加できませんでしたが、仲間と稽古をすると自然と笑顔がこぼれました。
被災した人たちに相撲で元気を届けたい。
そんな思いでメンバーたちは大会の準備を進めていました。
台風接近で…予定していた大会が中止に
しかし…。
過去最強クラスといわれた台風10号の接近にともない安全を考慮し、残念ながら伏木場所は中止となりました。
桶谷さん「被災地域の復旧と復興を祈願して行います各々方むかいましょう」
有志「OK」
大晦日の夜、自宅近くの神社へ向かう桶谷さんと相撲愛好会の有志たち。
桶谷さんには元日に神社で土俵入りを行いたい理由がありました。
実は去年の元日には相撲愛好会の新年行事で伏木神社を訪れていました。
「ヨイショー」
地中の邪気を払い大地を鎮めるといわれているしこを力強く踏みしめました。
しかし数時間後、皮肉にも大地は激しく揺れたのです。
桶谷さん「大地を鎮める儀式なのに(苦笑)」
「実際は関係ないですけど、何か引っかかるなと、やり直ししたいなと思って」
今年の元日に土俵入り 新たな1年へ
「これで仕切り直しができたなという気持ちです。まだ復旧も復興も済んでないですけど、これでまた1年頑張ろうかないう気持ちを新たにしてます」
被災した人たちを伏木場所で元気づける。
そして自宅の再建という2つの目標を掲げ、桶谷さんにとって仕切り直しとなる1年が始まりました。