室井滋さん 翁久允をモデルに新作絵本を出版
立山町出身の小説家でジャーナリストの翁久允。
2023年は没後50年にあたり、高志の国文学館は企画展を開催しています。
これにあわせて館長の室井滋さんが、翁久允をモデルにした新作絵本を出版しました。
タイトルは「キューちゃんの日記」です。
高志の国文学館の「翁久允展」では展示室の入り口に、絵本の原画が並べられています。
高志の国文学館・館長 室井滋さん
「これもいいよね、絣の着物。これも、かわいい」
「キューちゃんの日記」。小学2年生のマリ子がお父さんに連れられて白いひげのおじいさん「キューちゃん」の家を訪ねた時の話です。
室井さん
「この中に登場する『マリ子』という女の子は私自身のことなんですけど。マリ子と翁さんとのやりとりみたいなことも、実際に私の記憶の中で生きているお話でしたので、それをいろいろ組み立てて一冊に仕上げました。」
立山町出身の翁久允は19歳でアメリカへわたり現地で多くの小説を発表し新聞記者としても活躍しました。
帰国後、富山で郷土文化を研究する「高志人」を創刊し富山の文化を支えました。
翁は室井さんの父方の親戚にあたり、室井さんは幼いころ、父親と一緒に翁の家をしばしば訪ねていました。
室井さんの新作絵本のおじいさん「キューちゃん」は翁久允がモデルです。
室井さん
「(父は)月に何度か、私を連れて土曜日とか日曜日に、翁さんの家に行って碁を打つんですよ。その間私は暇なのでコイと遊ぶ、っていうこの通りです。ものすごい巨大なコイが泳いでいる家だったんですよ。そのことが子ども心にすごく『なんでこんなでっかいコイおるが?』みたいな。マグロみたいなコイが泳いどったん」
2017年、文学館の特別コレクション室で翁の残した資料の一部が公開されました。
じっくりとみていたのは翁の三女、逸見久美さんと室井さんです。
室井さん
「私、すごくおばさんになついちゃってて」
逸見久美さん
「おかあさんより私の方になついてたの。かわいかったの。本当、すごくかわいくてね。私が帰ると泣くの」
室井さん
「東京へ帰るというと車の後ろを追いかけていって『おばちゃん!』っていって泣いたらしいんですよ」
逸見さん
「かわいい子だった(笑)」
室井さん
「私が小学校のときまでは、父が小説家を目指していたので、翁さんを頼りにしていて、私は(父に)白いひげのじいちゃんの所にまた行くが?とか言って。やっぱり、富山に一緒に行けるっていうのと、行くと私より年上のお姉さんとかいるから、みなさんかわいがってくれるので、夢のような感じだった」
室井さんは絵本のテーマを2つ選びました。
ひとつは翁が富山中学時代、学生寮の先生にしかけたいたずら。
当時、新聞で報じられるほどの大騒動となり、この失敗をきっかけに翁は東京の中学へ転校。
その後、アメリカへ渡ります。
室井さん
「もう一つはやはり日記。日記は友達でもあるし、自分の心の鏡でもある。そういうものを生涯大切にされた人なんだということを(伝えたい)」
室井さんの翁との思い出は絵本という形になりました。
室井さん
「だれも失敗しない人なんかいないわけでやっぱり、子どものときなんか特に失敗だらけじゃないですか。でも、変われるチャンスはいっぱいあるし。そのことはぜひ本当にバネにして、次につなげていくっていうか、よし自分も!っていうふうに思っていただけたらいいな、って思います」
絵本ができたことで翁久允のことを次の世代に伝えるチャンスも増えたと思います。
「キューちゃんの日記」は県内の書店などで購入できます。