震災で壊滅状態の手作り自然体験施設「もう一度イチから」ケロンの小さな村
能登町の山間にある自然体験施設「ケロンの小さな村」。敷地内には遊具や遊歩道など、子供たちが自然と触れ合えるような仕組みが盛りだくさん。親子連れでにぎわう人気の場所でした。
1月1日、震度6強を観測した能登町。あの日上乗さんは、年賀状を見ながら自宅でのんびり過ごしていました。
上乗秀雄さん:
「こんだけ揺れたんだから家の中はいろんなものが落ちたり大変な被害でしたから、おそらく無事で済んでいないだろうなと思いながら2日の日に来たんですけど」
「やっぱりここにきてね…あ~これは夢でなかったんだなと愕然としました。」
覚悟はしていましたが、上乗さんが目にした光景は想像以上の被害でした。
大きく傾いた水車小屋。
がけ崩れや倒木で道はふさがれ、薪小屋は倒れ、薪が雪の上に散乱していました。
さらに上乗さんの心が折れるような状況が目の前に…
上乗さん:
「ここへ来たら石窯がドカーンと崩れとって見られない状態。」
「この石窯はケロンのスタートの時に作った我々の原点…ホロっと涙がね…」
元教員の上乗さんは高校の校長を定年退職後、子供たちの自然体験の場を作りたいと、耕作放棄地だった土地の整備をスタート。
道路を作り、電気を通し、木を切って、妻の純子さんと夫婦二人三脚。
2年の歳月を経て2009年、ケロンの小さな村はオープンしました。
湧き水を利用したビオトープやハーブ園。
敷地内で収穫したコメを米粉にして石窯で焼くピザやパンはケロンの名物になりました。
そんな里山の自然いっぱいの施設は週末だけの営業にもかかわらず、年間3千人が訪れる人気スポットでした。
上乗さん:
「正直言ってこれは僕の力ではどないもできん」
「これで終わりかなと一瞬思いましたね」
「だけどね…自分が手作りで自分たちの力でひとつひとつ作ってきましたから諦める訳にいかん」
「心は折れたけども何とかしたいという思いはふつふつと時間とともに強くなる」
1月20日。再生の手始めは石窯の残骸処理から。
崩れた道路やテーブル、枕木の補修など、妻の純子さんも参加して、少しずつ手作業での復旧作業。
そんな中、上乗さんに心強い後継者ができました。孫の古矢拓夢さんです。
古谷拓夢さん:
「小さいころから爺ちゃんがここをゼロから作り始めた時から一緒にここで遊んだりしてて」
「子供さん、親御さんの笑顔があふれる場所だったので、後継者がいなかったらやめるという話をしてたので、僕が跡を引きついで」
「もっと笑顔だったりいろんな人が来れる場所にしたいと、去年の冬にお爺ちゃんに話をして」
「次期村長!はっはっは」
能登の豊かな自然に親しみながら、再び子供たちの元気な声が響く場所をめざし。
春のオープンに向け、上乗さんの復旧作業にも力が入ります。
上乗さん:
「震災は大変ですけど、逆にこういうように一から二人でもういっぺん作り直すチャンスをね」
「拓夢は大変かもしれんけど」
「こうして一歩一歩来たわけやから、拓夢にも一緒にしてもらえれば拓夢なりの世界を作ってくれるんじゃないかなと期待しています」
ケロンの小さな村に、もうすぐ春がやってきます。