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輪島市の新人職員に密着 復旧・復興担う若い力…ふるさとへの思い強く

2024年4月8日 19:02
輪島市の新人職員に密着 復旧・復興担う若い力…ふるさとへの思い強く

輪島市役所に先週、14人の新規採用職員が加わりました。
復旧・復興の中心となる市の職員として第一歩を踏み出した若い世代の思いを取材しました。

先週、輪島市役所で行われた、新規採用職員の辞令交付式。
今年度の新人職員は14人。
その中の一人、大宮正晴さん19歳。
特別な思いでこの日を迎えました。

大宮さんは地元・輪島市出身。
自宅のある名舟町は元日の地震により多くの家が崩れました。
地盤の隆起によりおよそ150メートルにわたり海岸線は後退。
被害は町の人が大切にしてきた場所でも。

大宮正晴さん:
「ここが祭りとかの舞台ですね」
「土砂が来て上から被さった感じですね」

面を被りながら大迫力で和太鼓を叩く「御陣乗太鼓」。
名舟町に生まれた男だけが叩くことを許される伝統芸能は450年近く受け継がれ、大宮さんの家でも、先祖代々、打ち手を担ってきました。
人口減少とともに打ち手は減っているものの近年は20人ほどのメンバーで活動を行ってきました。

大宮さん:
「名舟の男しか叩けないという面で、そういうところに誇りを感じながら」
「せっかく名舟に生まれたなら自分が受け継いでいきたいなと思いながら」

しかし、毎年7月末の名舟大祭で御陣乗太鼓を披露する舞台は大量の土砂の下敷きに。
打ち手のメンバーもほとんどが市外で避難生活を行っています。

「何も考えられない状態でした」
「名舟なくなれば多分自然と御陣乗太鼓もなくなってしまうので」

大宮さんの自宅は大きな被害こそ免れましたが…

大宮さん:
「ここは後ろから土砂来て、2枚ガラスが割れて土砂が入ってきて」


さらに、断水は いまも続いています。
震災後は一時、金沢に避難していた大宮さん。
当時、自分の将来については、考えられなかったといいます。

大宮さん:
「本当に想像つかん感じで本当に心配ばっかしてました」
「仕事できるのかなっていうのはずっと思ってましたね」
「無理かなとは思いましたね」

しかし、輪島を離れようとは一度も思いませんでした。

大宮さん:
「離れていく人もいっぱいいると思うんですけど、そこで離れたらやっぱり地元がなくなるじゃないですけど、消えていくんで、それを残すために市役所に入ったっていうのもあるんで」

地元を残す、御陣乗太鼓を残す。

「辞令、大宮正晴。輪島市職員に採用する。」

地震によりさらに思いを強くした大宮さんの、新生活が始まりました。

そして同じ日。

この春、輪島高校を卒業した岡田隼翔さんも市の新規採用職員として辞令を受け取りました。
配属されたのは小中学校を担当する教育総務課です。

輪島市内では、地震の前から、ある課題がありました。
児童数の減少です。

10年前は1000人を超えていましたが、去年はおよそ700人あまり。
さらに地震の影響が加わり、今年度の児童数は401人と去年のおよそ6割にまで減少しました。
児童数だけでなく、安全な教育環境の整備も課題です。
輪島市中心部の小学校は6校が使用できなくなり、河井小学校のグラウンドに仮設の校舎を建設中です。

このうちの1つ、大屋小学校は岡田さんの母校です。
体育館は避難所として使われ、廊下には支援物資が並んでいます。
また、外を見ると。

岡田さん:
「仮設住宅立ってるのか」

グラウンドには48戸の仮設住宅が建てられています。
子どもたちの学び舎は復旧を待ち望む避難住民たちの生活の場となっていました。

岡田さん:
「しょっちゅうサッカーしに出てたりとか、あとはあっちのなんか木生えてるとこあると思うんですけど、あそこでなんか落ちてる木の実拾って遊んでたりもした覚えがあります。」

小学校時代に共に遊んだ同級生23人は全員、進学や就職で市外へ。
人が減り、さらに震災で町も変わった中でも岡田さんは輪島に残ることを決めました。

岡田さん:
「横の繋がりが割と輪島にはあると思っているので」
「手を取り合って生きていくみたいなことができると思っているので」
「(元の姿に)戻って、またその他のところから来た人たちを迎え入れるような姿にできる力があるんだぞ、みたいなことを発信していけたら」

新人職員たちは初日からさっそく配属された課で勤務をスタート。

手には、漆塗の真新しい名札が。

岡田さん:
「かっこいいなと思って、ちょっとびっくりしました」
「市の皆様に寄り添っていきながら復興や復旧に力尽くしていきたいなと思っています」

一方、名舟町出身の大宮正晴さんは、罹災証明の発行などに関わる税務課に配属されました。
早速、先輩職員と一緒に被災した住宅を確認しに向かいます。

この日は家の傾きの計測の方法などを教わりました。
建物の被害認定調査に重要な作業です。

大宮さん:
「大事な作業というのは自分でも、初めての自分でもわかったので、誤差とか生まないように慎重にと思いながらやってました」
「地震で不安抱えている市民の方々も多いと思うので、そういう人たちの力にちょっとでもなれたらいいなと思います」

能登半島地震から3か月。

被災した自治体職員として新たに加わった新人職員たちは、ふるさとの思いを強く、復旧・復興に向けて歩みだしました。