災害の専門家が見る被災地の課題「在宅避難者に一層の目配りを」
このゴールデンウイーク、全国からきた学生ボランティアが能登で活躍しています。
学生と被災地をつなぐのは災害社会学の専門家。
いまの被災地の課題についてどう見ているのか取材しました。
ゴールデンウィーク初日、輪島市の町野町に若者たちが集まっていました。
「東京の武蔵野大学の社会福祉学科です」
「福岡県の北九州市立大学です 」
「三重県伊勢市の皇學館大学からきました」
「自分自身消防士になりたいので」
「今まで学んできたことを人のために役に立てたいこともあったので参加した」
石川県内外の大学生と被災地をつなぐのは北陸学院大学で災害社会学などを専門とする田中純一教授。
東日本大震災や熊本地震など多くの被災地で調査にあたり、今回の能登半島地震でも多くの時間を被災地の活動に費やしています。
北陸学院大学・田中純一 教授:
「(ボランティアが)少ないという声をいろんなところで聞きます」
「一方で全国の大学生たちが何かしたい、どうやって現地に入っていいかわからない、なんとかつながりたい、そういう声も聞いていた」
「ハブの機能を大学の中で持たせて、現地と思いのある学生をつないでいく」
今回集まったのは15人。
この日は2つの班に分かれボランティアを行います。
名舟町で自宅が損壊した今寺さん。
被害が大きくボランティアにお願いするのは心苦しいと依頼をためらっていましたが今回、知り合いの伝手をたどり協力を求めました。
「ちょっとだけ重いです。お願いします」
扱うものの中には、大切な家財道具もあります。
声を掛け合いながら慎重に運びます。
そして、こんなものも…
「がれきの中からお年玉が出てきたんですよ」
「孫にとっては私の着物なんかより、このお年玉が大事だったみたいで本当にうれしく思ってるんです」
作業を進めること5時間、
多くの家財道具を運び出すことができました。
「助かりました」
「短い間だったんですけど」
「助かりました」
「ありがとうございました。」
依頼した人:
「若い人いないでしょ村に」
「明るく、私が迷ってても今出さなきゃだめですよとか、遠慮せず言ってくださいと動いてくださって感謝してます」
学生:
「笑顔を見れて、少しでも役に立てたのかなと、私もうれしい気持ちになりました」
「若い力と笑顔とコミュニケーションでこれからも活動していきたい」
一方、今回の地震では被災者の生活環境にも目を向けている田中教授。
この日訪れたのは輪島市の町野町にある仮設住宅です。
「何か不都合なことだとか、特にないですか?」
「駐車場もないしね、全然足りない」
「ちっちゃい子なんかお母さんいないっていうのはなんか寂しがっちゃうんじゃないかなと思って」
「やっぱり子どもの心の安定(が不安)」
住民から聞こえてくるのは生活での不都合や精神的な不安など。
田中教授はこうした悩みの積み重ねが心身の不調、特に高齢者においては災害関連死につながると注意を呼びかけます。
「災害初期の災害関連死はエコノミークラス症候群であるとか、要は狭いところで過度なストレスがかかったことによって」
「血栓ができちゃってとかですね」
「そのあとは、向こうは(熊本は)みなし仮設が多かったのでつながりから絶たれてしまったっていう中で、やっぱりそこで精神的に苦しまれた方もいらっしゃるので」
石川県内では現在災害関連死と認定されているのは15人。
関連死が直接死のおよそ4倍となった熊本地震では発生の1ヶ月の関連死疑いは19人でしたがその後の判定で124人が1ヶ月以内に死亡していたことが判明しています。
また熊本地震では災害関連死した人のおよそ4割が自宅で持病を悪化させるなどして亡くなっていると指摘する田中教授。
特に在宅避難者にはより一層の目配りが必要だといいます。
「仮設はあるんだけど、やっぱり家で寝る方がいいやといって、 壊れた家に戻られてそこで生活される人だとか、中にはいると思いますから」
「どこで何をされているかっていうことをできるだけキャッチして、取りこぼしがないような形」
今後は避難所以外に分散した被災者に対する訪問支援を強化すべきだと強調します。
能登半島地震から今日で4か月。それぞれに事情を抱える被災者に寄り添い1人も取り残さない支援体制の構築が求められます。