【人手不足】“偏見”“蔑視”が影響!?外国人技能実習生の労働環境は…
■利用者の言葉に技能実習生の目には涙…老人ホームの日常
鹿屋市の介護付有料老人ホーム。この施設で働くのがミャンマー人の技能実習生、ズィン・ミョー・テッさんです。日本の監理団体での研修を経て、おととし7月から施設で働いています。テッさんは、ベッドから車いすへ乗せる作業や食事の補助など介護業務の全般を担っています。慣れない日本での生活に最初は不安もあったと言います。
(技能実習生 ズィン・ミョー・テッさん)
「最初は私の国と文化や習慣が色々違うから大丈夫かなと思って心配することもいっぱいあった。でも日本で1年以上経ってちょっと慣れてきた」
流ちょうに日本語を話すテッさんですが、今でも自作のノートで介護で使う用語を勉強しています。
(技能実習生 ズィン・ミョー・テッさん)
「みんな優しいから楽しい。色々な経験をしてわからないことや知らないこともいっぱい分
かった」
テッさんの熱心な働きぶりに利用者は。
(利用者)
「ちょっとしたことを頼んでもすぐやってくれるし、自分でトコトコ走るような感じ。なくてはならない人。私にとっては」
(利用者)
「優しい。とっても腰が軽い。飛んでくる。本当にありがたい」
利用者たちの言葉に、テッさんの目には涙が…
■外国人技能実習生受け入れによる“思わぬ効果”
(社会福祉法人以和貴会・西丸晴彦理事長)
「業界は人手不足なので外国人を雇用して人手不足解消につなげられたらなと思った」
人手不足から受け入れた技能実習生でしたが、日本人のスタッフにも思わぬ影響があったと言います。
(社会福祉法人以和貴会・西丸晴彦理事長)
「日本の職員も介護技術を教えることで指導力の向上につながっていると感じている」
(技能実習生 ズィン・ミョー・テッさん)
「まだわからないことがたくさんあるのでみんなから教えてもらって、介護の仕事を今より上手になりたい。いっぱい勉強していきたい」
テッさんの向上心、働く姿は他のスタッフにも好影響をもたらしています。
■劣悪な労働環境 国は“行政処分”も 課題は山積
(藤井ハルネ記者)
テッさんのように生き生きと働く技能実習生がいる一方で課題もあります。おととし、全国で行方が分からなくなった実習生の数は9006人。県内では163人で実習生全体の約3.5%と
全国平均よりもやや高い数字となっています。法務省の調査によりますと低い賃金や労働時間の長さなど劣悪な労働環境を挙げているケースが多いということです。
県内でも労働環境をめぐって問題が起きています。適切な技能実習計画の作成指導を行わず、家賃を実費より多く徴収したなどとして国は枕崎市の監理団体に去年、行政処分を行いました。このような課題を解決するためにはどうしたらよいのでしょうか。
■根底にある“偏見”“蔑視”課題解決の鍵は…
多文化共生を専門とする、鹿児島大学法文学部の酒井佑輔准教授です。
(鹿児島大学法文学部・酒井佑輔准教授)
「共生、受入れということに関しては、なかなか法制度においても隣国である韓国や台湾、中国といった所からも遅れている状況がある。東南アジア等から来る方々に対してのある種の偏見や蔑視、下に見てしまうような状況が今なお根強くあるのではないか」
技能実習生への偏見、差別を指摘します。
(鹿児島大学法文学部・酒井佑輔准教授)
「日本人であっても外国人であっても住みやすい働きやすい環境を作ることが大事。自分たちもその地域に住んでいて暮らしやすい、生活しやすい、働きやすい地域をいかに就労環境を含めて作っていくかが広い視点ですごく大事だと思う」
政府も実態に即した動きを見せています。先月、政府は現在の技能実習制度を廃止し新たに「育成就労制度」を設ける方針を決めました。新しい制度では最初の受け入れ先で1年働くなど一定の条件を満たすことで、同じ分野であれば別の企業への転籍を認めるとしています。
県内では、少子高齢化などによる働き手不足が今後ますます加速する見通しです。外国人労働者は欠かせない存在です。外国人労働者が希望をもって働けるような環境を整え「選ばれる企業、選ばれる町」を目指していくことが企業や行政には求められています。
(news every.かごしま 2024年3月5日放送)