【特集】<なぜ”自民”は大敗したのか>衆院選・宮城5選挙区のうち”自民”獲得は1議席だけ ”政策”よりも”政治とカネ”
宮城の小選挙区のこれまでの勢力図の推移を見ると、2012年に自民が政権を取り返して以降”自民が圧勝”という図式だったが、今回自民党が獲得したのは県内5つの選挙区のうち1つだけ。
これまでと比べ大きく勢力図が変わる結果となったが、なぜ自民党は大敗したのかー。
宮城1区で落戦・土井亨氏(自民)「すべて私の力不足…」
今回の衆院選で、自民党は立憲民主党に対して選挙区で1勝4敗と、歴史的な大敗を喫した。
なかでも、この結果に衝撃が走ったのは、これまで自民党の支持層である保守層が分厚いとされてきた宮城3区と4区。
宮城3区で落戦・西村明宏氏(自民)
「勝ち抜けなかったこと、本当に申し訳なく思う」
宮城4区で敗戦。伊藤信太郎氏(自民)
「結果を出すことができませんでした。大変申し訳ありません」
西村氏、伊藤氏と深い交流のあった宮城・岩沼市の元市長・井口経明氏。
震災後 国会議員とのパイプを生かし、被災者の集団移転などを実現した。
井口さんは2人が敗れた理由について、次のように指摘する。
岩沼市の元市長・井口経明氏
「甘く見ていた。ずっと勝ってきたから。自民党に胡坐をかいてきた」
政治学が専門の東北大学・金子准教授。
「自民一強」の時代が続いたことで、“党の公認があれば勝てる”という感覚に染まり、議員の本来の役割を見失ってきたと指摘する。
政治学が専門の東北大学・金子准教授
「政党のラベルによって勢いのある政党に入っていれば、楽々当選してしまう。選挙区の代表者なので、選挙区の意見を国政に届けて選挙区に還元していくことが期待されている。地元との対話が大事」
一方、若い世代は今回の選挙をどう見ていたのかー。
選挙について意見を語り合うネットチャンネルを制作する仙台のNPO法人「メディアージ」だ。
大学生ら若いメンバーは、自ら立候補者にインタビューを行い、ネットに掲載した。
『メディアージ』メンバー
「思いがあって立候補しているわけだから、大人の真剣な思いに向き合えるのは相当貴重な機会」
「高学歴な大人が、死に物狂いで陣取りゲームをするのは、競技としてみると面白い」
『メディアージ』漆田義孝常務理事
「自民党総裁選があって、総理大臣が変わって、それなりの盛り上がりはあるかなと」
ところが、選挙中盤からある違和感を感じるようになったと言う。
『メディアージ』メンバー
「他の党を攻撃したところで何も生まれないし、そんな話聞きたいんじゃない。時間の無駄、話してほしくない」
若い世代が違和感を感じたという今回の選挙。
どのような舌戦が繰り広げられたのかー。
野党は「政治とカネの問題」を、徹底的に批判する戦法をとった。
宮城1区で当選・岡本章子氏(立憲)
「裏金自民党、特権政治を終わらせたい」
宮城2区で当選・鎌田さゆり氏(立憲)
「裏金をポケットに入れる」
宮城4区で当選・安住淳氏(立憲)
「だめでしょ。いいんですか」
なかでも、宮城3区で当選した立憲民主党の新人・柳沢剛氏は、500万円を超える政治資金不記載問題を抱える西村さんを激しく追及した。
宮城3区で初当選・柳沢剛氏(立憲)
「不記載なんて問題じゃない。分かっていたのにそのままにしていた。これ脱税じゃないですか?」
「裏金議員からの柳沢への選手交代」
これに対し、西村氏(自民)はー。
宮城3区で落選・西村明宏氏(自民)
「検察から一度も呼び出されていないという事実。ある意味巻き込まれた人間として…」
政治とカネの問題について謝るのではなく「巻き込まれた」と弁明を繰り返した。
そして、“裏金問題”とは無縁だったはずの宮城4区の伊藤氏(自民)も、その煽りで不利な情勢に立たされ、陣営は野党を非難する方向に進む。
宮城4区・伊藤陣営(自民) 本木忠一県議
「絶望の淵に追いやったのは、旧民主党政権。政治とカネだけで大事な日本の針路を決める大切な選挙を矮小化している。ここにいるマスコミも悪い」
応援に駆け付けた大物議員も…
自民党・麻生太郎最高顧問
「鳩山・菅内閣を覚えている人もいるでしょう。がちゃがちゃされてえらい目にあったじゃないか」
こうして政治とカネの問題だけがクローズアップされ、物価高や少子化問題など重要な課題についての政策議論は、自民・立憲ともに鳴りを潜めた。
『メディアージ』漆田義孝常任理事
「一般の人から何の選挙をしているのか分からないまま、あっという間に終わっちゃった。それをやったのは自民党」
そのうえで自民党の戦い方によっては、真逆の選挙結果もありえたと振り返っている。
『メディアージ』漆田義孝常任理事
「自民党が、自分たちで裏金が争点の選挙にした。能登(の復興)のための補正予算を組み、軌道修正した新しい政策を打ち出したうえで、これが石破総理の新しい自民党です、と示してから選挙をやれば大勝ちしていた可能性もあった」
政策議論ではなく、それぞれが党利党略に走った今回の選挙戦。
専門家は、今後一層 若者の政治離れが進むと指摘する。」
政治学が専門の東北大学・金子准教授
「20代が政党の戦略の蚊帳の外に置かれている。20年30年後、今の20代30代が社会の中核になった時に政党がアプローチしていないと、政治的な空洞、政治的な無関心がもっと問題が大きくなる可能性がある」