【「ウクライナ」復興の足かせは「ロシア」による地雷】「地雷探知技術」持つ仙台市のベンチャー企業に期待(宮城)
ロシアによるウクライナ侵攻から、2月24日で2年。
ウクライナでは、戦争を継続しながら復興への道筋を模索し始めているが、その足かせになっているのがロシアが仕掛けた地雷だ。
こうした中、高い地雷探知技術を持つ仙台市の中小企業に期待が集まっている。
ウクライナの復興に日本が果たす役割とはー。
岸田首相
「経済復興を進めることは、いわば、ウクライナ、日本、そして世界への「未来への投資」 です」
2月19日、東京で開かれたウクライナの復興を話し合う会議には日本とウクライナの政府関係者とおよそ130社の民間企業が参加した。
岸田首相は、ウクライナのインフラなど経済復興に官民挙げて協力する姿勢を鮮明にした。
ウクライナ政府が、地雷探査の技術で期待を寄せるのが東北大学発のベンチャー企業。
その代表を務めるのは、東北大学名誉教授でもある佐藤源之さん。
佐藤さんが、長年研究してきた高性能のレーダー技術をもとに開発したのが「地雷探知機ALIS」だ。
佐藤源之さん
「地雷があることやありえることによって、その場所が使えない。経済復興の足かせになっている」
2年前の2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻。
これまでの死傷者は両軍合わせて50万人と試算される。
そうした中、地雷の被害の実態はあまり知られていない。
佐藤源之さん
「20年前にアフガニスタンに行った。大量にソビエト製の地雷をみたが今ウクライナも同じ地雷を使っている」
地雷は、最前線の兵士だけでなく一般市民も無差別に被害を受けることから、悪魔の兵器とも言われる。
ウクライナでは、これまで民間人含め200人以上が命を落とし、足を失うなどの負傷者は数千人に上ると見られる。
そして、ロシア軍が埋めた地雷はウクライナ国土の3割にも及ぶとされ、その除去には10数年かかる見込みだ。
そうした中、「ALIS」が注目される理由は、その優れた探知能力だ。
去年11月、佐藤さんはウクライナ政府関係者に「ALIS」の使い方を指導。
その後、50台余りが日本政府を通しウクライナに提供され、すでに現地で活用されている。
佐藤源之さん
「私たちの技術が応用するチャンスがあるなら、一所懸命やる」
これまでの地雷探査は、主に金属探知機だったが、「ALIS」は高性能レーダーを地中に投射し跳ね返ってきた波長から埋設物を3次元で可視化できるため、より早く確実に探知することができる。
さらに、探査データをグーグルアースに連動させ地図上に落とし込むことで、除去計画が立てやすくなる。
それでも、探知作業は人手がかかる地道なものだと言う。
佐藤源之さん
「1.5mの幅のレーンを作る。地雷が見つかれば一つずつ掘って完全になくなったら、50センチ進む」
この技術は、すでに様々な分野で活用されている。
東日本大震災では、砂浜に埋まった遺体や遺品の捜索に貢献。
仙台城跡では、地中に江戸時代の遺構を発見し、石垣の復元に導いた。
さらに、現在 エジプトではピラミッドの遺跡調査にも採用されている。
佐藤さんは、20年以上から世界各地の紛争地域に赴き、「ALIS」を使って地雷除去に取り組み実績を積み重ねてきた。
佐藤源之さん
「経済復興を促す重要な基礎、経済復興の第一歩が、地雷除去」
1月、佐藤さんのもとを訪れたのは南米コロンビアの軍関係者。
コロンビア軍
「これまで3種類使ったことがあるが、レーダー画像が出るので最も期待できる」
コロンビアでは、半世紀にわたる政府と反政府ゲリラによる紛争の影響で、年間最大1200人が地雷の被害を受けてきた。
2017年に和平合意が結ばれ、平和が訪れるはずだった。
しかし地雷が原因で、農地は荒れ果てたままで、貧困が固定化。
略奪なども絶えず、治安は改善できていない。
コロンビア軍
「地雷があるため和平は難しい。地雷がどれくらい埋まっているか全くわからない、今も戦争中とも言える」
佐藤さんと活動を共にしてきたのが、「JICA=国際協力機構」の小向絵理さん。
JICA国際協力専門員・小向絵理さん「和平合意しました、それで完全に平和になりましたというパターンは少ない。人口格差、経済格差が大きくなってそれが次の紛争要因につながる。国連も地雷対策が終わらないと平和が来ないと」
平和な暮らしを取り戻すのに不可欠な地雷除去。
しかしロシア軍が仕掛けた地雷はー。
佐藤源之さん
「ロシア軍が撤退する時にアパートに地雷を仕掛ける。建物が壊れている所に隠す。逃げて行く時に追いかけられないように地雷を埋める」
ロシア軍は、土の中にだけでなく撤退する際に破壊された建物などにも地雷を仕掛けていた例が見つかっていると言う。
佐藤源之さん
「(がれきに)金属が沢山落ちている。金属探知機では地雷との区別がつかない。『ALIS』は区別が付けられる可能性がある」
佐藤さんを強力に後押しするのが「JICA」だ。
「JICA」は、地雷対策の先進地カンボジアで、「ALIS」など技術の提供のみならず、探知する技術者の育成や除去の計画策定などで30年にわたって伴走支援してきた実績があり、国際的な信頼を得ている。
カンボジアでは、地雷原が農地に復活した事例も出ている。
JICA・小向絵理さん
「ウクライナの場合も同じ、お金だけあげるとか機材だけあげるのではなく、彼らがより使えるような研修を耳を傾けながらやっていく。終戦を待っているわけにはいかないので、いったんが戦争が落ち着いた場所に対して早く支援する」
佐藤源之さん
「戦争の結果がどうであれ荒れているウクライナは復興させないといけない。すぐ戦争が終わったとしても20年~30年かかってしまう。私たちの技術が少しでも早く解決する手段になることが大切」
ウクライナの復興に、日本の技術が貢献することが期待されている。