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【「能登半島地震」での『液状化現象』】「東日本大震災」時の<映像と証言> 避難の障害にもなる『液状化現象』 私たちにできる備えとは?

2024年3月6日 21:00
【「能登半島地震」での『液状化現象』】「東日本大震災」時の<映像と証言> 避難の障害にもなる『液状化現象』 私たちにできる備えとは?
能登半島地震」で起きた『液状化現象』は、「東日本大震災」の際に宮城県内でも確認されていた。

避難する際の障害にもなる『液状化現象』。
震災当時の証言と私たちにできる備えを取材した。
(動画の一部で、津波の映像が流れる。ストレスを感じる方は視聴をお控えください)

石川県内灘町。
発災から1か月、爪痕が残る町を、ミヤギテレビ・柳瀬キャスターが取材した。

柳瀬キャスターリポート
「こちらは液状化が激しかった内灘町です。車庫でしょうか床が浮き上がってしまっていますし、ここはアスファルトが大きくめくれ上がってしまっています。道路もねじれるようにゆがんでいて、歩いていると平衡感覚が失われたような感覚になります」

噴き出した砂に、波打った道路が続く。

震度5弱を観測した内灘町。
死者・安否不明者は確認されていないものの、建物やインフラ設備の被害は深刻で、今も一部で断水が続いている。

復旧の妨げの一つとなっている『液状化現象』。

「東日本大震災」では、宮城県内でも確認されていた。

インターネット関連の会社を営む齋藤邦男さん。
13年前、宮城・亘理町荒浜で暮らしていた。

震災当時住んでいた家の近くで、『液状化』の瞬間を目の当たりにした。
手持ちのカメラが、その様子を捉えていた。

「震災」で揺れてから10分後の午後2時52分。
避難先の荒浜小学校に向かう道路を見に行くと、舗装された道路一面に泥水が広がっていた。
これは津波ではない。1台の車が立ち往生している。

『液状化』を撮影した齋藤邦男さん
「水は長靴履かないと歩けないくらいの水かさ」

齋藤さんは、徒歩では時間がかかると考え、車で避難することを決めた。
逆方向の南側の道路や別の砂利道からの脱出を試みるが―。

その先には、前輪が泥に埋まってしまい進むことができない車が、あった。

『液状化』を撮影した齋藤邦男さん
「もう何台か車が立往生していた、その時には。右はダメ、左はダメ、どっから逃げようかなというので、完全に閉じ込められたような状況で。防災無線で避難しなさいって言うんだけれども、避難できないんですよ。要するに行けないんですね、 どこからも逃げるところがないんで」

車の下に角材などを敷くことで、その場から抜け出した。
荒浜小にたどり着いたのは、午後3時半すぎ。
通常なら5分で着くはずが、別のルートを探すなどして実際は40分以上かかったという。

そして、3月11日の午後3時45分過ぎ。

荒浜地区を、津波が飲み込んだ。
齋藤さんは、間一髪の出来事だったと振り返る。

『液状化』を撮影した齋藤邦男さん
「あとからわかるんだけど、液状化のこともこれから考えていかなくちゃないと。避難の経路も含めて」

想定していた避難経路を襲った『液状化』。

東北大学・風間基樹教授
「地割れがあって砂がこう浮き出てるような状態があるときはほぼ間違いなく液状化だと思います。砂が噴き出していますね」

『液状化』などの地盤に関わる災害について研究を行う 東北大学・風間基樹教授。

「東日本大震災」の後には、様々な研究機関と合同で、宮城県内およそ70箇所で『液状化』の調査を行った。

東北大学・風間基樹教授
「これは仙台です。川が向こう側にあるんですけれど、河川の擁壁が液状化で崩れて住宅が川の向こう側に移動してしまった。マンホールは舟のようなものですから、浮力によって上がっちゃう」

宮城県内では、地中の浅い場所で地下水が走る低地のほか、過去の下水道工事や埋め立て工事で地盤が柔らかくなった土地で『液状化』が起こったという。

東北大学・風間基樹教授
「名取・岩沼・亘理いわゆる低地部、 それから内陸部ですと大崎とか軟弱地盤上に池・沼を埋めて作られた土地なんかで(『液状化』は)起こります」

『液状化』現象のメカニズムはー。
砂が多く含まれる地盤では、砂粒同士がバランスをとってかみ合い、建物の重さを支えているがー。
強い揺れが起こると、このバランスが崩れ、砂と水が混ざり『液状化』。どろどろの状態になる。
『液状化』した地盤は、建物の重さにより砂粒と水が噴き出し、地盤が沈下する仕組みだ。

風間教授によると、建物や道路への対策には「安定剤を混合して土の強度を高める工事」、マンホールへの対策には「地下水を下げる工事」などが挙げられるという。

一方で、個人レベルで対策をすることは難しいという。

宮城県が、去年11月に発表した最新の地震被害の想定では、マグニチュード9.0の太平洋沖地震が発生した場合、『液状化』の影響で宮城県内のおよそ5千棟が全壊、およそ2万6千棟が半壊すると予測されている。

さらに、建物など生活の基盤への影響だけではなく、津波などに対する避難行動の妨げにもなる可能性がある。

東北大学・風間基樹教授
「今ある道路・堤防が、地震の後そのまま(使える)と想定するのはまずいと思う」

万が一に備えて。
多様な視点からの準備が必要だ。