【特集】<”三陸”代表する海の幸に”明暗”>27年連続で水揚げ日本一『生鮮カツオ』は豊漁 一方『秋サケ』は深刻な事態(宮城・気仙沼)
いま、”三陸”を代表する海の幸に明暗が分かれている。
宮城・気仙沼では、27年連続で水揚げ日本一となっている生鮮カツオが豊漁となっている一方、秋サケは深刻な事態に見舞われている。
12日土曜日の気仙沼市内にある飲食店。
配膳)お待たせいたしました。カツオの漬丼でございます
カツオのタタキを自家製のタレに合わせた「カツオの漬け丼」。
人気がある店の名物メニューだ。
岩手から訪れた人
「気仙沼と言えばカツオですので、私はしょっちゅう気仙沼に寄っています」
「臭みもなくて、すごい濃厚な味で」
今年は、春先から水揚げが順調で、〝戻りカツオ〟と呼ばれる今の時期も脂ののったカツオが次々と港に入ってきている。
お食事処 浜の家・店主の小野寺信通さん
「漬丼は一日大体30食ぐらいは(注文が)出ますからね。結構好評です」
今シーズン、気仙沼港での生鮮カツオの水揚げはおよそ2万8000トン。
27年連続で日本一となった去年の水揚げを、すでに4000トン以上上回っている。
気仙沼漁協・齋藤徹夫組合長
「カツオは大変豊漁で、魚が良いというか脂の乗った良いカツオが獲れたということで。気仙沼にとってなくてはならない魚ですから」
これまでは、秋になればカツオが東北の沖合から南に移動していたが、ここ数年、八戸沖や三陸沖に留まっているという。
宮崎のカツオ船の漁労長
「残っているカツオはいると思います。また昨日ぐらいから釣れ出したので、次回は北に行ってみようかなと思っています」
この現状について、専門家は「海流の変化」に注目している。
宮城水産技術総合センター・伊藤博研究員
「黒潮の続流は、去年よりは南の方に宮城県沖あたりで留まっています。ただ黒潮続流から切り離された暖水塊が青森沖にありまして」
冷たい親潮が弱まっていることに加えて、暖かい黒潮が強まり、三陸沖の水温が上がっている。
これにより、暖かいエリアを好むカツオは、東北沿岸に長い間生息する一方で、冷たい海水を好むサカナは三陸に寄り付かないのが現状。
特に「秋サケ」の水揚げ減少が、深刻だ。
志津川湾に面した飲食店では、もともと地元の秋サケで仕込んだイクラ丼が人気だったが、このところの不漁で宮城県外からの仕入れに頼る状況だ
食事処松原・店主の渡邊浩さん
「何ともならないので、別なものに変えるしかないかなと。値段もすごく高くなってきていますし、飲食店でイクラをメインにしたメニュー作りはこれから難しいかなと思っています」
9月に刺し網漁が解禁されたが、南三陸での水揚げは2週間でわずか”2匹”。
去年の水揚げは10年前の0.2%以下と、深刻な不漁が続いている。
宮城県漁協志津川支所・行場博文運営委員長
「去年もかなり厳しかったんですが、今年はさらに厳しくて。(かつては)宮城県内で一番サケが揚がった市場でもありますので、サケの時期だけで年間生活営んでいた人たちも多かったので、そういう面では本当に深刻な状況です」
その影響は、漁業者だけでなく加工や小売店にも影響している。
山内鮮魚店 山内正文社長)こういう製品は、なるべく地元の魚で売るようにしているから、まだ地元の魚が若干残っている。あと1か月くらいかな
燻製やイクラなどサケの加工品を扱うこちらのお店では、原料の確保に頭を悩ませている。
山内鮮魚店 山内正文社長
「最悪の場合は、岩手・青森・北海道から原料を引っ張って作りたいなとは思っているんですけれど、もう少し待ちたいと思っています。サケを使った加工品とかいっぱい作っていたので、原料がないと…。地元のサケを使って作りたいので、今のところは残念な気持ちです」
環境の変化によって影響を受ける”三陸”の海の幸。
海の恵みとともに歩んできた地域にとって、その変化と向き合う日々が続く。