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【特集】すい臓がんと向き合う「イメージを変えたい」患者と家族の写真展

2023年11月6日 22:38
【特集】すい臓がんと向き合う「イメージを変えたい」患者と家族の写真展
<ぶどうの木 写真展>

仙台市内で開かれている写真展。宮城県内を中心に活動するすい臓がん患者とその家族で作る団体「ぶどうの木」が準備したもの。

<ぶどうの木 代表 濱端 光恵 さん>
「次の遺影はこれかな、みたいな」

会の代表を務める濱端光恵さんはすい臓がんを患っている。今年5月、青いドレスを着て定禅寺通で写真を撮影した。その背景には「すい臓がんへのネガティブなイメージを変えたい」という思いがあった。

<ぶどうの木 代表 濱端 光恵 さん>
「大変でした。私すごくやせすぎちゃったから、落ちてこないようにみたいな。一番きつく締めてもらって」

今から6年前。濱端さんは「すい臓がん」と診断された。早期の発見だったため、手術と抗がん剤治療を行い、それ以降、再発はしていないという。

【すい臓がん 〝難治性〟と言われる理由】

「すい臓」とは、胃のうしろにあって、食物の消化を助ける「膵液」を作ることなどが役割の臓器。国立がん研究センターが公表する「5年後生存率」によると、「がん全体」が「66.2%」なのに対し、「すい臓がん」は極めて低い「12.7%」。その理由をがんの専門医に聞いた。

<がんコーディネートくりにっく 和田 仁 医師>
「すい臓がんは早期発見がしにくく、症状が出て見つかったときにはかなり進行した状態が多い。手術とかで局所的な治療ができればいいんですけれども、すい臓の外に病気が転移する、肝臓や肺に転移するとか、お腹に水がたまる腹水ができてしまうといった症状が出やすいというのが難治性の理由です」

【全国でも少ない患者会「分かち合う仲間」自らで立ち上げる】

3年前、濱端さんは「ぶどうの木」を立ち上げた。

<ぶどうの木 代表 濱端 光恵 さん>
「闘病中には身近に同じ病気の患者がいたが、仕事復帰して、健康な人たちの中に入った時に、ものすごく寂しい思いをしたんですね。この気持ちを分かってくれる仲間がほしいなと思って。患者会を探したが見つからなくて、だったら自分で作ってしまおうと思って作りました」

すい臓がん患者で作る団体は全国で3つしかないという。その1つである「ぶどうの木」は月に一度、患者やその家族が集まり座談会を行っている。

「すい臓がんなんで、食は食費だと思っちゃいけない。医療費だと思ってます。びっくりするくらい筋力は落ちます。あっという間ですね」

同じ病気と向き合っているからこそ、分かり合える。会では悩みなどを情報交換している。その悩みの1つにあがるのが「記念写真」についてだという。

【記念写真を撮る理由「日常をみんなに見てもらいたい」】

<ぶどうの木 代表 濱端 光恵 さん>
「どうしても、がんになって写真撮るってなると、遺影とか思い出作りって思ってしまって。患者さんとほんと一緒に写真撮りたいんだけどって思っても、言い出せないっていう声を聞いたので。だったら私たちがそのきっかけみたいな、そういう機会を作ろうかなと思って開催しました」

そうして始まった「記念撮影」。2年前、プロのカメラマンに依頼して定禅寺通で初めての撮影会を行った。今回の写真展はそれ以来、2回目となる。

<ぶどうの木 石井 重明 さん>
「ほかのがんで闘っている方も見ていただきたいですし、がんになっていない方にも見ていただきたい。決して怖い病気ではないですし、今や。早く見つかれば、こうやってみんな元気にやっていける。怖がることはない」

【会場に訪れた患者 写真から受け取った〝希望〟】

写真展を訪れた人の中に、今年8月にすい臓がんと診断された女性がいた。

<すい臓がん患者 佐藤 明美 さん>
「(すい臓がんが)見つかった時はあたりが真っ白で。えっ、なんで…。一番は家族、旦那がショックだった。なんでお母さん若いのに見つかるんだって」

佐藤さんは写真の中の笑顔から希望をもらったという。

<すい臓がん患者 佐藤 明美 さん>
「写真展はやっぱ素敵だなと思って。私も何年後には撮ってもらいたいです。結婚式以来なので、こういうの撮りたいです」

「2年後はドレスですよ、何色がいいか考えていてください」。会の代表・濱端さんは、佐藤さんに次の写真展への参加を呼びかけた。

<ぶどうの木 代表 濱端 光恵 さん>
「すい臓がんっていうと、どうしても死のイメージがつきまとうがんで、実際になかなか難しいがんだとは思うんですけれども。それでも、ずっと元気がないわけではなく、普通の人と同じように楽しく日常を過ごしている姿を皆さんに見てもらって、病気でも前を向いて生きて生きていけるとか、楽しく過ごせるんだってことをわかってもらえれば嬉しいなと思っています」

「すい臓がん」と向き合い、支えあって生きる患者とその家族の姿。写真展は11月8日(水)まで、仙台市青葉区の仙台市福祉プラザで開かれている。

<<ぶどうの木写真展「彩」>>
仙台市福祉プラザ2F
(青葉区五橋2丁目12-2)
午前10時~午後8時
※8日(水)は午後3時まで