荒廃農地が「ヤギ牧場&レモンカフェ」に変身 手づくり農園『りもねん』地域に癒やしと活力を《長崎》
ヤギ牧場に、レモンカフェ。長崎市に地域の新たな拠点ができました。
町へ活力を与える取り組みを取材しました。
長崎市の南部にある自然に囲まれたまち「蚊焼町(かやきまち)」。
2月、新たに完成したのが、ヤギと触れ合える農園『りもねん』です。
(訪れた子ども)
「ヤギのところに入ったことが楽しかった」
(訪れた人)
「動物と身近に触れ合えてよかった。ペットを飼っていないので、こういうところで動物に触れ合えるのはいいと思う」
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「うれしい。お客さん同士が会話する場になってほしいし、癒やされる空間にもなってほしい」
オープン3日前、一人黙々と作業をする男性の姿が…。
矢野 駿平 さん 35歳。
半年前から、手作りで農園の準備を進めてきました。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「これはヤギの柵の扉になります。ヤギが暮らすところ」
近くの住民も心待ちに…。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「2月1日、ヤギ牧場としてオープンするのでよかったら遊びにきてください」
(まちの人)
「通るたびに楽しみにしてる」
農園を手掛ける大きなきっかけとなったのは “遊休農地” に対し、ある思いを抱いたことでした。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「“遊休農地” が農家の減少でどんどん増えている状況。
土地を活用していかないと土地自体も使いづらくなるし、所有者の世代はもちろん次の世代が使う分にも、土地が荒れていたら使いづらい。
遊休農地をメーンに、畑として使って維持もできれば」
再生して利用することが可能な「荒廃農地=遊休農地」が高齢化などにより、全国的に増えています。
各市町の農業委員会や農林水産省の調査によりますと、県内の耕地面積は2019年以降、年々減少している一方「遊休農地」が占める割合は21年から増加。
23年には、耕地全体の7%あまりを「遊休農地」が占めるという結果に。
地域に活力を与えるためにも「遊休農地」の活用方法が模索されています。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「今はビワの実の花が咲いているので、実を大きくするために “摘らい” という作業をしている」
近くの畑で、露地ビワの栽培を行う矢野さん。
県外の大学への進学。就職を経て26歳の時、父の病をきっかけに長崎へUターン。
ふるさとに恩返しをしたいとNPO法人で地域活動をしながら、10年間も手つかずとなっていた祖父の畑を、9年前に引き継ぎました。
荒れ果て農地が、今ではすっかりよみがえりましたが…。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「ちゃんと収穫できるようになるまで、収入になるまで時間がかかった。世話して、維持していくことで畑の状態も保たれるし、次世代の人にもつながりやすいと思った」
農業を志す次の世代が始めやすい環境を整えたいと、農園のオープンを決意しました。
矢野さんと思いを同じくする、道下 晃平さん 37歳。
農園の中心メンバーの1人です。
4年前からトマトの栽培をしていて、矢野さんからヤギを譲り受け、育てています。
(道下 晃平さん)
「(ヤギのことを)最初は何とも思っていなかった。除草目的で。今となっては、かわいい家族」
そう言うと、生まれたばかりの子ヤギも見せてくれました。
白と黒も模様が愛らしい、元気な子ヤギです。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「りもねんオープン日に生まれた記念すべき子。長生きしてほしい」
完成したヤギ牧場に加えてその周りでは、今後 “レモン” を栽培する計画を立てています。
2400ヘクタールと広大『りもねん』の敷地。
そのほとんどが遊休農地ですが、2人で力を合わせて、草刈りや開墾などを行ってきました。
本業をしながらでも比較的、育てやすいというレモン。
去年から、近くの遊休農地で220本を栽培。
2年後の本格出荷を目指し、『りもねん』が取り組む事業の大きな柱となるよう、期待しています。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「空いている農地にレモンを植え付けて、長崎市南部をレモンの栽培地で盛り上がるところにしていきたい」
農園の中には、開放的な手作りのカフェも作りました。
ここでは料理研究家が考案した、レモンを使った飲み物やお菓子なども楽しめます。
はちみつと合わせて作ったレモネードは、炭酸を入れるとレモンスカッシュに。
寒い季節は、お湯を注いで作るホットレモンが人気です。
(訪れた人)
「(レモンスカッシュは)ハチミツの甘さが合わさっておいしい」
(料理研究家 古賀 みゆきさん)
「国産のレモンって、なかなかない。しかも南部でできたレモン。地元の人にも愛されるようなお菓子づくり、飲み物に展開していきたい」
地域に “癒やし” と “活力” を…。若き生産者が奮闘はまだまだ続きます。
(ヤギと触れ合える農園『りもねん』 矢野 駿平さん)
「命の大切さとか子ヤギもいるので、そこらへんを感じてもらいたいのと、実際に餌やりをしてもらって癒されてほしいというのが一番の目的。
ヤギをきっかけに、会話の弾みになれば」
『りもねん』では、荒れ地の解消にと草刈りの代行も行っていて、来月はレモンの苗木の植え付け体験も行うそうです。
詳しくはインスタグラムをご覧ください。