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「あきらめた日常生活をもう一度」難病乗り越え介護の道へ 半日型デイサービス理学療法士が開設《長崎》

2024年6月20日 6:47
「あきらめた日常生活をもう一度」難病乗り越え介護の道へ 半日型デイサービス理学療法士が開設《長崎》

難病を乗り越えた男性が5月、長崎市でデイサービス施設を開設しました。

あきらめた日常生活をもう一度。自身の経験を踏まえ、一人ひとりに寄り添います。

▼カフェのような空間でリハビリを

(理学療法士 渡邉 彩友美さん)
「ゆっくり引っ張ります」

「(足は)ぐっと開きます」

背中や股関節を動かして筋力を測ります。諫早市の勝山 恵津子さん 90歳。

アドバイスを受けながら最新のトレーニングを体験しました。

(勝山 恵津子さん)
「筋肉が少しはついていると思う。スタッフの方がいろいろしてくれるからいい。最高」

5月1日、長崎市矢上町にオープンした「リハステージ矢上」。

自立支援に力を入れる半日型のデイサービス施設で、カフェのようなスタイリッシュな空間です。

施設を開いたのは、理学療法士の浦川春樹さん 42歳。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「特色としては自立支援の特化型なので、在宅でいつまでも元気に安心して暮らせるように、ただ足の筋力をつけるだけでなく、足を鍛えて歩けるようになったらどこに行くなど、その先のことが必要と考えている」

▼日常生活を続けるためのトレーニングをサポート

利用者の “自立” の支援へ。

「リハステージ矢上」では、料理や買い物などの日常生活ができるようにさまざまなトレーニングを進めます。

“洗濯もの干し” に必要な筋力トレーニングも。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「フラフラしない?」

(利用者)
「フラフラする」

立ち姿勢のバランス、腕や指先の筋力など、一連の動作を確認したあと、一人ひとりにあった筋力トレーニングを行います。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「課題にあげるならば、少しふらつくので もう少しリハビリが必要。足先、足回りの運動、柔軟性はトレーニングができる」

▼難病を乗り越えた経験 リハビリする人に共感

浦川さんは、長崎市日見地区出身。4歳の時に身体の異変に気付きます。

七五三の写真を見せてもらうと。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「真ん中が私。左肩が落ちてるのがわかると思う。姿勢が崩れている」

背骨が左右に曲がる “脊柱側弯症”。

症状を進行させないため、高校卒業まで装具を身に着けて過ごしました。

大学へ進学したあとは。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「装具を解放した18歳以降になると、座るのが苦痛で30分も座れなかった。立つと大丈夫だけど、座って講義を連続で受けることが難しくなった」

痛みが続き、4年生で中退。

その後、配送業や営業など職を転々としますが、27歳の時に転機が訪れます。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「お風呂上りにふとした簡単なストレッチをやると、痛みがふっととれた気がして。もしかしたら身体を動かすことで痛みがとれるなら、そんな職業はないと思ったのがきっかけ」

長崎市の専門学校に通い、32歳で理学療法士に。

自身も経験した側弯症のセラピストの資格も取得しました。

しかし、諫早市のデイサービスで働いていた2020年。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「朝起きると寝違いの100倍の痛さ。左手もあまり動かなくて、全身にしびれもあって、触った感覚があまりなかった」

国指定の難病 “脊髄空洞症”と診断され、2か月後に8時間におよぶ手術を受けました。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「当たり前のようにできることができなかった。どん底まで突き落とされた経験は、今後の糧となると自分に言い聞かせた。リハビリに携わった皆さん、もちろん同じように辛い経験をしているだろうなと、深いところが共感できるようになった」

(理学療法士 浦川春樹さん)
「寄り添いながら、困った方を一人でも多く救ってあげたいというか、助けてあげたいというのが、自分が独立した1番のきっかけ」

▼すべての人が「誇り」「生きがい」を持てる社会を

家に帰ると、2児の父親でもある浦川さん。

子どもたちとのコミュニケーションは欠かしません。

(浦川さんの長男)
「おしごとがんばってね」

(理学療法士 浦川春樹さん)
「日々の頑張れる糧。仕事の疲れも吹っ飛ぶ」

浦川さん自身もまた、自宅でのトレーニングをかかしません。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「左の湾曲を右側に戻す。これでもきつかったりするがやると楽になる」

オープンして3週間。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「(利用者は) 浴槽またぎの練習はしている?」

(柔道整復師 増輪 裕介さん)
「している人、していない人がいる」

リハステージ矢上のスタッフは、浦川さんのほか理学療法士と柔道整復師の2人が働いています。

誇りをもって楽しく働ける環境をと、制服はおしゃれなデザインのTシャツ。髪は形も色も自由。

毎日3人で、悩みや利用者の情報を共有しています。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「(スタッフが)どういう働き方をしたいか、将来どうなりたいかを聞き出して、働きやすいような環境にしてあげるのが私の使命」

諦めていた日常生活をもう一度。

自らの経験を胸に、一人ひとりに寄り添うサポートを進めます。

(理学療法士 浦川春樹さん)
「何かのせいで諦めていたことなどを、個別リハビリを通してできるようになり、生きがいを取り戻す。その人らしい生き方に着目したサポートをさせてもらえれば幸せ」