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【特集】「夢を諦めない」交通事故で全身不随に…それでも夢に挑み続けた妹の生涯を描く 鳥取県

2023年12月9日 6:00
【特集】「夢を諦めない」交通事故で全身不随に…それでも夢に挑み続けた妹の生涯を描く 鳥取県

『ドキュメンタリー制作』を夢見た全身不随の女性。夢半ばでこの世を去った後、遺志を引き継いだ姉が作品を完成。妹の生涯が一冊の絵本につづられています。
可愛らしい猫が主人公の絵本『マイケルのお手伝い 夢の種まき』。登場人物は、猫のマイケルと・・・

車いすの女性、栗原佳苗さん。20年前、交通事故で全身不随になりました。そんな佳苗さんの夢は、南米の人々の暮らしを追う『ドキュメント制作』。夢を追う姿を間近で見てきたマイケル。佳苗さんが過ごした15年間がマイケルの目線でつづられています。

豊かな自然に囲まれた鳥取県の中部・三朝町。ここで、絵本・『マイケルのお手伝い夢の種まき』の作者が生活しています。

絵本を描いたのは、栗原紀子さん。佳苗さんの13歳年上の姉です。今は、絵本に登場するマイケルと一緒に暮らしています。

栗原紀子 さん
「佳苗さんの生き方が誰かの力になればいいなという想いで作りました」

幼いころから好奇心が旺盛で、『思い立ったらすぐ行動』の人だったという佳苗さん。地元テレビ局に就職し、デザインを考える美術部門で持ち前の好奇心と独創的な発想で番組を支えていました。しかし、2003年交通事故に遭い寝たきりに・・・。わずかな口の動きを読み取り会話はできますが、ドキュメント制作の夢は絶たれ、リハビリの日々となりました。

栗原紀子 さん
「(佳苗さんに)事故に遭って悲しい?辛い?と聞いたら『いや、辛くない。ただ出来ないことが沢山出来たのが悔しい』と言っていて。ああそうだったんだって」

■夢への再挑戦

事故から7年・・・。懸命にリハビリに励む佳苗さんの姿に感銘を受けた教育関係者が交流会を依頼。これが佳苗さんの夢への挑戦の始まりでした。

紀子さん
「佳苗さんが小学生の皆に色々質問されて好きな言葉は何ですか?って聞かれたときに『諦めないこと』って口で言ったので」

小学生から届いたお礼の手紙。そこには、「夢を諦めない佳苗さんは本当にすごい」「わたしも夢を諦めないようにしたい」という諦めないことの大切さを学んだ感謝の言葉が・・・。
佳苗さんが口にした『夢を諦めないこと』。この言葉に紀子さんも動かされました。佳苗さんの夢、南米の人々の暮らしを描くドキュメント制作へと踏み出しました。

紀子さん
「出来なかったりそんなことを考えるんじゃなくて、自分が今何ができるのか、何がしたいかというのを思っているなというのがすごくあったので」

無謀と思われる佳苗さんとの南米取材。その夢を叶えるため、佳苗さんをサポートする二人三脚の日々が始まりました。その様子は、マイケルもしっかりと見ています。

事故から11年。ついにその日は、やってきます。2人で話し合い、舞台はペルーに。佳苗さんの兄夫婦に帯同してもらい取材へ向かいます。目指すは、世界遺産に登録されているインカ帝国時代の遺跡『マチュピチュ』です。佳苗さんの唇の動きをガイドに伝え、現地の人々にインタビュー。ここでの生活、文化の違いを9日間取材します。

佳苗さんが口にした「諦めない」。その言葉通り、南米での取材に成功。佳苗さんの夢、『南米の人々の暮らしのドキュメント制作』まであと一歩です。

紀子さんは、今でも当時の写真を、眺めるのが日課だと言います。

紀子さん
「これが一番好きな写真ですね。 いい時間でした。最高の時間でした。マチュピチュの芝生で風に吹かれて・・・」

帰国してからは、ドキュメントの構成を考える日々。佳苗さんの夢がかなう日は、すぐそこまで近づいていました。
しかし・・・。

■佳苗さんが45歳で…想いは姉・紀子さんに

ペルーでの撮影を終えてから4年。佳苗さんの体調が急変。45歳の若さでこの世を去りました。

紀子さん
「佳苗さんが亡くなってもうどうしていいかわからなくて、自分自身も。でもドキュメンタリーは作らんといけんっていう想いもあって」

佳苗さんの遺志は、紀子さんが引き継ぎます。佳苗さんが他界してから半年。ついに佳苗さんの夢、『南米の人々の生活のドキュメント』が完成しました。

作品の完成は、佳苗さんと交流があった人たちにも伝えます。その中には、小学生の時、佳苗さんとの交流会に参加していた男性の姿が・・・。あの交流会で佳苗さんの生き方に影響を受けていました。

小学生の時 佳苗さんと交流した 西尾涼さん
「自分はどちらかというと何かこれ無理なんじゃないかって最初に思っちゃって、行動に踏み出せないタイプなので佳苗さんとか見ていると、それでも『挑戦してみたら何かあるかもしれない』そういう考え方ってワクワクするし、自分にはなかったので見習いたいなって」

何事も諦めない佳苗さんの姿・・・。マイケルの目にもしっかりと焼き付いています。
絵本の最後のページは、こんなマイケルの言葉で締めくくられています。

マイケル
「夢は終わらない。佳苗さんが教えてくれた。だから僕もあきらめないよ。いつか佳苗さんになでてもらうんだそれまでみんなの夢のお手伝いをするよ!さあ 夢を聞かせて」

読者が最後のページに自分の夢を書き込んでこの本は完成します。

紀子さん
「この絵本だけで終わるんじゃなくて佳苗さんの夢は誰かの夢に繋がって、その誰かの夢はまた誰かの夢につながる・・・そうやって繋がっていってほしいなというので」

一番近くで佳苗さんと過ごしてきた紀子さん。佳苗さんの夢を叶えたいま、自分の夢に向かって歩んでいます。

紀子さん
「私の夢は 看護師になり誰かの役に立つことです」

63歳になった紀子さんは現在看護大学に通っています。勉強と実習の日々。背中を押すのは、『命ある限り一生懸命生きる』という佳苗さんと交わした約束です。

Q.「(今のお姉さんの姿を見て佳苗さんは)どう思ってると思いますか?」

紀子さん
「佳苗さんは、私がどう生きようが良いと思うんです。『この人はこういう生き方をしなきゃいけん』と思う人じゃないので、「いいんじゃない?」って、そのぐらいの感じだと思います。」

一冊の本から始まった『夢の種まき』。絵本につづられた佳苗さんの諦めない姿は、これからも多くの人の夢の花を咲かせていきます。

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