「導入するだけではなく、いかに使用しやすい状況を作るかが非常に重要」 広がる「ジェンダーレス制服」 女子スラックスを取り入れる学校が急増 メリットや懸念点は?

気になる話題を取り上げる「読み解く」のコーナー。今回のテーマは、いま広がっている「ジェンダーレス制服」です。
■ 「女子スラックス」が急増!
大手学生服メーカーが、新たに女子スラックスを採用した学校数の推移を発表しました(※カンコー学生服の女子スラックスを導入している学校)。
2022年に急増していることがわかり、2023年には累計3000校を超えたということです。
以前は、北海道や長野県など寒さが厳しい地域の防寒用、自転車通学用として採用する学校がありました。転機になったのが2015年。多様な性のあり方、生徒の個性を尊重するようにという文部科学省の通達があったのです。これを受けて2020年ごろから増え始め、ここ数年急増しています。
■ 制服見直し 過渡期に
今まさに変わっていくタイミング。実際に山陰でも、制服変更に向けて動いている学校・地域があります。2月26日、倉吉市で決まったのが、市内5つの中学校の統一制服。男女ともにブレザーで、スラックスやスカート、リボン・ネクタイを自由に選べ、ボタンの位置も、右前と左前の両方を選択できます。
倉吉市教育委員会 中田 寛 教育長
「多様性に合わせての変更ということですので、子どもたち一人一人が、自分の思いを制服に表現しながら着ていけるというのが特徴です」
2026年度から3年間を移行期間として、リリースしていくということです。
LGBTQの啓発活動にも努める、松江市のモデル 佐藤みどりさんは、こうした動きについてー。
佐藤みどりさん
「良い時代になったと思います。私が学生だった20数年前は、性の多様性に関する知識が広がっていなかったので、中学生の時にスカートを履くのが嫌だったんですけど、なかなかそれを言い出せなくて。自分の性のあり方が周りにバレてしまうことが恐怖だったので、親にも学校にも言えなかったんです。実際に、トランスジェンダーの子どもたちの不登校の原因が制服ということもあるので、そういった子たちが救われる制度だと思います」
■ ジェンダーレス制服 山陰の現状
山陰の高校では、鳥取・島根の県立高校全てで、女子がスラックスも選択可能。
中学校は、先ほど紹介した倉吉市だけでなく、鳥取市では一部の学校で生徒会が提案し、女子スラックスの導入が実現。松江市でも多くの学校で女子スラックスが用意されています。また出雲市では、来年度から制服が変更され、選択可能になる学校が増えるとのことです。
また、女子スラックスがない学校も「男子用・女子用となっているが、どちらの制服を選んでも良い」というところが多く、山陰でも少しずつ選択の幅が広がっています。
■ 「女子スラックス」メリットと懸念
女子スラックス、メリットとして挙げられるのは、生徒の個性の尊重・防寒対策・動きやすいといった点です。一方、導入しても「周囲の目が気になる」と着用できないような状態を生んでしまう懸念があるという指摘もあります。
LGBTQの啓発も務める 佐藤みどりさん
「導入するだけではなく、いかに使用しやすい状況を作るかが非常に重要になってくると思います。周囲の目というのも、ジェンダーレス制服を使用することで、自分の性のあり方がバレてしまうんじゃないかという恐怖から来ているのかなと思います。導入の際には、性の多様性を全面に押し出すのではなく、防寒・防犯・動きやすさなどの機能面も打ち出して、いかに心理的安全性を確保して、使いやすい状況を作るかが重要かと思います」
既に女子スラックスを導入済みの学校では、スラックス「も」選べるではなく、男女共にスラックスを基本にして、スカート「も」選べる、とすると、それぞれの生徒が着たいものを自由に選択できるようになったという事例もあります。
制服の変更・導入の仕方や頭髪のルールなども含めて、変わっていく時なのかもしれません。