特集は気候変動とコメ作りです。コメ王国・新潟では暑さに強い品種のコメ作りが進んでいます。県内でも温暖化を見据え品種改良の試行錯誤が続けられています。

★弘前大学大学院理工学研究科 石田祐宣 准教授
「将来的には三戸町では5℃くらい世紀末で気温が上がる可能性が出てきまして　白く濁るコメの割合が下手をすると3割ぐらいになってしまう」

気象学などに詳しい弘前大学の石田准教授たちは三戸町の依頼を受け2021年度から3年間温暖化が将来のコメ作りに与える影響を調査しました。
その結果2090年代には今の品種では8年に1回は高温障害で「凶作」となり白く濁った品質が悪いコメが3割以上発生する可能性があることがわかりました。

石田准教授は県全体で高温に強い新しい品種の必要性を指摘します。

★石田祐宣 准教授
「津軽地方は比較的やませの影響は受けなくて　そういった意味では津軽地方の方がより高温に対する対策が必要になってくるかもしれない　期待するのは品種改良ですね　より高温に対して耐性のあるような品種を作付けしていただくことが必要になってくる」

その津軽地方で作られる県産ブランド米「青天の霹靂」は去年の記録的猛暑で1等米比率が63％まで激減。食味ランキングでもデビュー9年目で初めて「特Ａ」ではなくなりました。
「まっしぐら」や「はれわたり」も影響は受けましたがおよそ70％にとどまり品種によって明暗が分かれる結果に。

「青天の霹靂」を作るコメ農家は。

★コメ農家 今信一 さん
「去年あたりから高温の日が多くてコメを作るのに難しくなってきています」「今の天候にあった品種を作ってほしい」

コメ王国・新潟も去年コシヒカリの1等米比率はわずか4.7％と大打撃を受けました。
しかし温暖化に備えた高温に強い品種もすでに作られていました。2017年デビューの「新之助」は1等米比率が何と95％、平年並みを保ちました。

また、去年一般向けに販売を開始した「新大コシヒカリ」は新潟大学が開発した暑さに強いコシヒカリで、去年の猛暑でも形や大きさが整ったコメの割合が通常のコシヒカリを上回りました。
一方、暑さに強い品種はまだ開発途上の青森県。弘前大学の石川教授は「青天の霹靂」について・・・

★弘前大学農学生命科学部 石川隆二 教授
「去年は「白未熟粒」ということで　歩留まりが悪くなっていると聞いている　安心して全量市場に回るようにするためにはもう少し（高温）耐性を付けていく努力をしていかないと　育種をしていかないと農家も安心できない」

★青森放送 能代谷俊朗
「弘前大学では高温にも強いコメの品種開発をこちらの田んぼで行っています」

石川教授は弘前市内にある20アールの田んぼでさまざまな特徴を持つ系統を独自に開発しています。田んぼの中には背の高いものから低いものまでさまざまな種類が植えられています。そしてこちらが暑さに強いコメです。

★石川隆二 教授
「これが「弘大ライケット1号」です　胴割れが少ないということで今の一般の品種よりは（高温に）強い耐性を持っている系統になる」

「弘大ライケット1号」は県産米初の香り米「恋ほのか」を基に品種改良したものでおととしには国に品種登録を申請しています。去年の猛暑でも高温障害の1つ「胴割れ」が現在の県産米に比べ少なくなりました。

★石川隆二 教授
「大粒の高度耐性系統はゼロパーセントほぼ割れないということで収穫したものはほぼそのまま市場に出すことができる」

さらに胴割れがほぼゼロでコメ粒がより大きく多収が見込める「弘大ライケット1号」の兄弟系統も。

★石川隆二 教授「県は県全体のことに取り組んでいるので大学は地域の企業や消費者が望むものを科学的な知識も含めて明らかにしながらそれを提供できる準備を進めていく」

ゆくゆくは県や研究機関にも新しい品種を提供できるよう準備を進めたいとしています。

★石川隆二 教授
「新しい形質を持ったものをどんどん組み合わせていくことでこれからの青森県の地理的な条件に合った品種を開発し続けていくことは必要ですし　良い品種は今できてはいますがその品種だけで10年20年後ずっと続けているかというとそういう環境ではないその時々の問題点を明らかにしてそれにどう対応できるかというかたちでの育種を進めていく」

品種改良には寒さにも強いことコメの形や食味、健康に良いかなどさまざまな性質が求められると言います。他県のコメに負けないよう将来を見越した品種改良が求められています。