地域によってこんなに違う!?知られざる愛媛の「お雑煮」を調査
新年を祝うのに欠かせない料理と言えば「雑煮」です。辞典で調べてみると…「餅に具をあしらった汁物。地方により具はさまざまで、仕立ても澄まし汁・味噌汁といろいろ。主として正月の祝い膳に用いる」とあります。
こちらチャンネル4のスタッフがこの正月にそれぞれの家庭で食べた雑煮の写真ですが…愛媛県内だけでも、所変われば雑煮も全く別物のようです。
今回調査に当たるのは伊予市出身、雑煮の具材は大根とカイワレ!水口調査員と、石川県出身で小豆が入りのぜんざいが雑煮だという三宅調査員の2人!
まず向かったのは、松山から車で1時間30分、四国の最も西に位置する伊方町におととし8月に誕生した佐田岬半島ミュージアムです。
髙嶋賢二館長に、伊方町の雑煮文化を聞いてみると…
髙嶋さん:
「各お家でちょっとずつ違うんですけど、例えば具の中にイカとかサザエとか磯物を入れて、それをハガタメといってそういうのを入れるんだという おうちもあったり、エソの切り 身を入れるんだっていうおうち があったり色々個性的ですね」
水口調査員:
「やっぱり海に近いので海産物、魚やそういったものが多いんですか?」
髙嶋さん:
「そうですね。きょう行くお宅も多分そういう地区だと思うんですけど。私、香川県なんで…白みそ仕立てであんもちが入るっていうお雑煮がふつうだったのでなんていうんでしょう…えーっていうか、おーっていうか…」
香川出身の髙嶋さんが、思わずうなってしまうような雑煮とは…?!
塩成地区に住む緒方二三子さんに教えてもらいました!
(こちらが?)
緒方さん:
「自慢のお雑煮です。大根、ニンジン、おいもさん」
(おお大きい!)
緒方さん:
「おでんみたいでしょ?」
(本当に!おでんの大根みたい)
こちらが緒方家の雑煮。とにかく1つ1つの具材が大きいんです。
緒方さん:
「お正月なので丸く丸ごと入れた方がいいよってことで、このぐらいの大きさになるように育てていたそうです」
昆布といりこでとった出汁の中には、ご主人が育てた大根にニンジン、ご近所さんからおすそ分けされた里芋など野菜がたっぷり。
Q.お醤油とかは入らない?
緒方さん:
「少し入れてるんですけどこれからメインのものを入れるので、その塩分によって味が変わるので薄く」
これからメインを入れる?さらに…
緒方さん:
「大晦日はここでストップします。おでんと一緒で3日目ぐらいの方が美味しいんで、本当は30日ぐらいに作るときもあります」
ん!?おでんと一緒??
「説明するときは、おでんにあるモノがのってる状態よって説明します」
塩成地区で食べられている“おでんのような”そして“塩気のあるメイン食材”が入った雑煮とは?
水口調査員:
「し、塩サバ?!」
緒方さん:
「これがうちの自慢の塩サバの雑煮になります」
そう、“塩サバ入り雑煮”なのです。グツグツと沸いた鍋の中に塩サバの切り身を生のまま投入!
緒方さん:
「焼いてから入れるんよね?って言われるんですけど、違うんですよ。塩サバの塩分がどれくらいか分からないので薄味にしてて」
髙嶋さん:
「写真を撮りたい衝動にかられた。初めてみる景色です」
漁業が盛んな町で、なぜ獲れたての魚ではなく塩サバなのか…
緒方さん:
「地域の先輩にも聞くんですけど京都から来てるって…」
京都の塩サバ文化が入ってきたという説もあるようですが、緒方さんにとっては幼い時から59年間食べてきた普通のお雑煮なのです。
さらに盛り付け方にも特徴が…使うのは“お椀”ではなく“平皿”です。
緒方さん:
「お正月なので家の神様にお供えするのに作ってるんですよね。お皿に盛ってお供えして下げたのを、もう固くなったのをいただきます」
じっくりと煮込んだ野菜に餅、そして塩サバが乗った伊方町塩成地区の雑煮です。出汁は少しかける程度。雑煮を楽しんだあと、この出汁で小イモを炊いたりと活用するそうです。
髙嶋さん:
「うんおいしい」
水口調査員:
「魚のにおいがするかなと思ったんですがそんなことない」
佐田岬半島ミュージアム 前田美和学芸員:
「噂に聞いてた塩サバ雑煮。やっと食べられて嬉しいおいしいです」
Q.改めて塩サバ雑煮ってどんな存在?
緒方さん:
「普通。こうやって誰かに食べてもらうのが好きかな。故郷から離れてないので離れてたらもっと感動とかあるかもしれないけど、普通のおかず」
ほかにも、番組スタッフが集まり県内各地の雑煮文化をリサーチ。スタッフそれぞれに聞いてみると…松前町在住のスタッフの自宅では、砂糖を使わず塩だけで味付けした塩あん入りのお餅が入った雑煮!すまし仕立てで具材は大根だけです。
福岡市出身のスタッフはあご出汁のすまし汁をベースにブリ・鶏肉と具沢山の雑煮!
母親が西条出身のスタッフは、昆布だしのすまし汁に具在は白菜だけ。香りづけに、ゆずの皮を煮詰めた「ゆねり」を入れるんだそうです。
チーム南予は…
清家アナ:
「じゃこてん・かまぼこが入るのが定番」
練り物が欠かせないとのこと。
植田記者:
「じゃこてんかまぼこがないと買い忘れたぞーって大ごと」
ほかにも…
滝口記者:
「うちは白菜とニンジンとすまし汁とお餅、あと鶏肉」
ところ変われば、家庭も変われば…続いて向かったのは、しまなみ海道の大島。高級食材を使った雑煮が島で伝統的に食べられていると聞いて訪れたのは、漁協が運営するレストラン「能島水軍」です。
水槽には、この時期おせち料理用に注文が増えるというタイやサザエ、イセエビが並びますが…島の雑煮に使われる食材とは。
宮窪の漁師:
「もう全然獲れなくなって幻の貝です」
それがこちら!地元の漁師も“幻”という瀬戸貝です。殻を開けると中には白く輝く大きな身が。
県漁業協同組合宮窪支所 関洋二組合長:
「子どもの頃から雑煮には必ず瀬戸貝が入っとったわいね」
女性スタッフ:
「瀬戸貝を入れるのが宮窪流です。毎年正月には絶対食べます」
島近くの漁場で豊富に獲れていたことから宮窪流の雑煮として広まったといわれる「瀬戸貝入りの雑煮」。醤油、みりん、酒などで薄めに味付けした出汁に白菜やニンジン、魚の身を…そしてそこに瀬戸貝を入れ、数時間煮た貝の風味が広がる雑煮です。
大島周辺の海で潮どまりの時間帯に限られた漁師しか獲ることができない瀬戸貝。
県漁業協同組合宮窪支所 関洋二組合長:
「昔は山ほどあったんやけど、ものすごく少なくなって貴重な貝になった。瀬戸貝小屋いうて5つも6つもあった」
海の環境の変化とともに水揚量が減少し、今では牡蠣の2倍以上の価格で販売される貴重な貝だといいます。その貴重な貝を使った雑煮の味は。
三宅記者:
「身がプリップリで、噛めば噛むほど口の中に磯の香りが広がります。はぁ~うまい」
時代を超えて受け継がれる各地域、各家庭の雑煮。今を生きる私たちがまさに、その伝承者なのです。以上、2025愛媛の知られざる雑煮調査でした!