ダムに水没したはずの橋が姿を現す!渇水が深刻…アユも産卵場所まで川を下れない!?
普段なら見えるはずのないひび割れた地面に、底に沈んだはずの石造りの橋。
いま、‟カラカラ”の状態になっているのは、愛媛県大洲市の鹿野川ダムです。
原因は、少雨。大洲ではこの秋、9月と10月の降水量が観測史上最少となるなど、記録的な少雨となっています。
鹿野川ダムの主な役割は「治水」で、肱川に流れる水の量を調節することで洪水を防ぎ、渇水の時には貯めた水を流して川の正常な水の流れを維持します。
しかし、11月1日にこの役割を果たすために使う水の貯水率が0%になりました。
この少雨で深刻な影響を受けているのが、ダムの下流、肱川で行われるアユ漁です。9月上旬から、下流域での産卵に向けて川下りを始めるアユ。
肱川流域では毎年この時期、川幅いっぱいに、等間隔に打ち込んだ竹の杭の間に“しめ縄”を張ってアユの行く手を阻み、これに驚いたアユを投げ網で捕まえる伝統漁法、「瀬張り漁」が盛んに行われます。
地元では焼鮎で出汁をとった雑煮やあめ炊きと呼ばれる甘露煮で親しまれているほか、炭火で炙った後、藁の束に差して乾燥させて作る「焼き干し鮎」は、冬の保存食として重宝されてきました。
しかし、この秋の少雨の影響で川の水が少ないためにアユが川を下ることができなくなっているとみられ、アユの漁獲量が激減しているのです。
肱川でのアユ漁歴55年、肱川漁業協同組合菅田支部の水関勉支部長は「収獲量は、例年の5分の1ほど。こんなに川の水が少なく、アユが獲れない年は記憶にない」と話します。
1年で一生を終える年魚・アユ。
肱川では例年、川を下って産卵したアユはその場で死にますが、卵は1週間ほどで孵化し、稚魚は冬の間を海中で過ごしたあと、春になると川を遡上し、新たな命を紡いでいきます。
アユ漁の関係者は、「産卵ができないと、来年の漁にも影響が出るのでは」と懸念を示しています。
鹿野川ダムは、アユをはじめとするダム下流の生物環境に影響が出るとして、1日から14年ぶりにダムの底に蓄えている‟緊急用の水”「堆砂容量内貯留水」を活用し、対応しています。
しかし、その‟緊急用の水”も、このままだと11月18日頃には底が尽きる見込みです。
四国地方の今後1か月の予想降水量は平年並みですが、このまま少雨傾向が続く場合、産卵したアユの卵が干上がる恐れがあるほか、長浜地域の地下水源に海水がしみ込み、家庭用水の取水に影響が出る可能性もあるということです。