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20年後には9割の公共施設が老朽化…〝ハコモノ”とどう向き合う?

2023年10月28日 9:00
20年後には9割の公共施設が老朽化…〝ハコモノ”とどう向き合う?
愛媛県庁第二別館の完成イメージ(提供:愛媛県)

高度経済成長期やバブル期に建てられ、時には「ハコモノ」と表現される公共施設。
災害時には対応の拠点になるなど、欠かせない存在でもあります。

そうした公共施設が老朽化し、建て替えの時期を迎えようとしています。

現在建て替え工事中で、2025年度の運用開始を予定している愛媛県庁の第二別館。

県職員の執務以外にも、入庁式や選挙の届け出会場などとしても使用され、半世紀以上にわたり県政推進の舞台となってきた第二別館ですが、最先端の施設に生まれ変わろうとしています。

しかしこうした公共施設の建て替えを巡り、我々の生活にも関わる大きな問題が指摘されているのです。

▼新たな災害拠点、命を守る砦に

「防災・災害対応は、いつの時代にも最重要課題であり、そのオペレーションの拠点になるのがこの庁舎です」

今月行われた起工式で、中村時広知事は新第二別館について「明日の愛媛を担う重要拠点」とその重要性を強調しました。
 
建設から50年あまりが経過していた県庁第二別館。
耐震性や老朽化などの問題から3年前に建て替えが決定していました。
 
新たな建物は地上11階、地下1階建てで、のべ床面積はおよそ1万4000㎡。

県の災害対策の中核拠点となる建物で、3階には国などの各機関から来た連絡要員となる職員や各対策班の職員が一堂に会し、連携するためのスペース「防災オペレーションルーム」が設けられ県の災害対応の要を担うことになります。
 
また隣接する第一別館の3階には防災危機管理課や原子力安全対策課、河川課など、県民の安全に関する様々な部局が集中しており、連絡通路でつなぎ、一体運用をすることでさらなる防災機能強化を図ることにしているのです。

また新型コロナを踏まえ、多様な働き方に対応できるエリアを整備。
産官学が共同で利用できる「官民共創拠点」を設置し、全国に先駆けたDX推進にも取り組むとしています。

南海トラフ巨大地震など大規模な災害から県民の命を守るために、このような庁舎を新しくしていくことは必要ですが、その裏でこうした公共施設を巡って大きな問題も指摘されています。

▼近い将来やってくる「一斉老朽化問題」

今年8月の県議会の常任委員会で、公共施設が一斉に老朽化するという問題が議題に上がりました。

県の資料によると庁舎や警察署、学校などの県有施設は、高度経済成長やバブル景気などを背景に1970~90年代に建てられたものが多く、県有施設2632棟のうち7割近くがこの年代の建築物です。

一般的に設備の更新や大規模修繕が必要になると言われる築30年を迎える建物は、今年8月時点で69.0%、20年後には93.7%に上るというのです。

一斉に老朽化し、対策を取る必要が出てくる公共施設。

機能低下や倒壊の危険性を減らすためには何らかの対策を取らなければなりませんが、全てを修繕・建て替えするとなると、財政的な問題に直面することになります。

▼人口が激減、未来の公共施設を考える

愛媛県が発表した人口予測によると、このまま何も対策を取らなければ2020年に133万人いた県の人口が、40年後の2060年には78万人にまで減少するとしていて、これに伴い税収や行政サービスの利用者の減少が懸念されます。

愛媛県は社会情勢の変化を見据え、利用者減少を踏まえた施設保有のスリム化に向けて検討を進めています。

いくつかの公共施設を1つにまとめることで財政負担を軽減しつつ、住民の利便性を向上させる方法。
他にも統廃合や転用を通して効率化を図るなど、その方法は様々です。

例えば高知県と隣接し、南海トラフ巨大地震で甚大な被害が想定されている愛南町。

2016年に新庁舎となった愛南町役場には県土木事務所が入り、同じ庁舎での業務が行われています。

合同庁舎を想定した新たな市町村の庁舎建設は、中四国初の事例だったということです。

建設費や維持管理の経費を減らすだけでなく、災害時に迅速な連携が図れるほか、住民はワンストップサービスの恩恵が受けられます。

もう一つ、去年完成した西予市野村町の野村支所は、交番や愛媛信用金庫の支店などが同じ建物に入る複合施設となり、住民の利便性向上に一役買っていて、人口減少が大きな問題となっている地方にとって今後さらに複合化が進んでいくとみられます。

いずれにしても公共施設の老朽化問題は、税金をどう使っていくか、私たちの生活にも直結する問題で、計画的かつ十分な議論をした上での問題解決が不可欠です。

人口が減少し、かつDX化が進むなか、その施設が本当に必要なのか。
これまでの規模と同じものが必要なのか。

県民にとっては、予算の使い方や建て替え計画を長い目で注視していく必要があると言えます。