×

【海の掃除屋さん】ゴミがお宝に!?「海をもっと良くしていきたい」サラリーマンから“マリンスイーパー”になった男性に密着(every.しずおか特集)

2024年2月26日 13:49
【海の掃除屋さん】ゴミがお宝に!?「海をもっと良くしていきたい」サラリーマンから“マリンスイーパー”になった男性に密着(every.しずおか特集)

捨てられたルアーごみを宝石に変える魔術師!サラリーマンを辞め「マリンスイーパー(海の掃除屋さん)」になった男性の活動に密着しました。

『きらきらと宝石のように輝くルアー・・・』実はこれ、海の中に捨てられていたものをよみがえらせたのです。これまでに回収したルアーは2万個以上!時には、車中泊をしながら静岡から14時間かけて九州に…

マリンスイーパーの活動って?

2023年5月中旬、焼津の海でダイビングの準備をしているのは、土井佑太さん。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
Qきょうは何をする?
「石津浜の海に潜って、根がかり、釣りのルアーのゴミを拾いに行く」
「海を見たときに、多くのゴミが落ちてるなと。自分が釣り人なので、釣りのゴミが目立つなと。なんとかできないかなと思った」

近年、問題視されているのが、海の中に残されたままとなった釣り糸やルアーなどのゴミ。土井さんは、これを回収する “海の掃除屋さん”「マリンスイーパー」です。

この活動を5年ほど前から始めました。陸上から見ることができない海の中は、どのような世界なのでしょうか。

土井さんが活動するのは、水深約10メートル。“海のギャング”「ウツボ」や「アジ」の群れが泳ぐキレイで神秘的な景色が広がっています。しかし、その一方で、そのすぐそばにある岩には引っ掛かったまま放置されたルアーが。

釣り糸も蜘蛛の巣のように岩場にまとわりついています。また、別の場所では、たくさんのルアーが複雑に絡み合っているところも。この釣り糸などが、海の中の生き物に巻き付き、生態系に影響を与えています。この日は40分の海中清掃で、約1キロのルアーを回収。

土井さんがこれまで回収したルアーは、2万個以上になります。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「ここ最近では少ない方、みんな根掛かりに気を付けて釣りをしてくれているなと感じる。だいぶきれいですね。2週間たってないくらいでも、これくらいのルアーは落ちている。これをずっと放っておけば、1年くらいで1回では回収できないぐらいの量になってしまう」

地域と協力し環境教育も展開

回収した大量のルアーごみ。汚れたものも見受けられますが、これらはどうするのでしょうか?実は土居さん、これらをすべて持ち帰り、キレイに洗った後、1つずつ丁寧にばらしていきます。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「これがすごく大変。拾ってくるだけならまだしも、この作業を1人でやっていくとなると大変。1か月分を外すとしたら3~4日はかかってしまう」

糸や針が複雑に絡み合っているため、一つずつ外すのは非常に根気がいる作業。これに時間を取られ、水中清掃ができない日もありました。

そんな中、2022年の秋、県立藤枝特別支援学校がこの活動に協力したいと名乗り出てくれたのです。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「生徒たちにとっても、ちょうどいい難易度で、頭も手先も使いながら作業をするということで、彼らも地域に貢献していくというテーマで活動をしているので、彼らの活動のおかげで自分が海をきれいにできる。一緒に地域貢献をさせていただいている」

土井さんは、生徒たちへのお礼にと、海の環境問題について教える活動もしています。

大型釣具店も注目!“ゴミ”をリメイク

釣り糸や釣り針を取り外したルアーは、キレイに塗装して新品の様によみがえらせていきます。しかし、中には損傷が激しく、再利用できないルアーも…。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「直せないルアーを溶かして、新しい形にしたものを塗っている。拾ってきたものは傷が多いので、溶かせば新品と同等の物ができる」

そのまま再利用できないものは、一度溶かしてから新しいルアーに作り直しているのです。新品の一般的なルアーの価格は1000円前後ですが、土井さんは、リメイクしたルアーをウェブサイトや店頭で、それよりも安く販売しているものもあります。

さらに、2022年の7月からは土井さんの活動を応援しようと、大型釣具店にもルアーが並ぶようになりました。このルアーに釣り人も…

(釣り人)
「回収したのを直して使えるんなら、いいですよね」「釣りスポットの海底をSNSで見ると、大量にルアーが残っていたりする、それを見ると思うところがある、釣りをするものとして」

活動の資金調達と拡大へ奮闘

2021年にサラリーマンを辞めて、現在は「マリンスイーパー」の活動のみで生計を立てているという土井さん。しかし…

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
Q売り上げは?
「売り上げですか…実はあまりよくない、引くぐらいよくない。やりたいことは清掃なので、清掃ばかり行っていると売れない。販売は目的ではあるが、その先にあるのは活動費の捻出なので…」

現在は、釣り具メーカーなどがスポンサーについたり、クラウドファンディングで集まった資金で海中清掃に取り組んでいます。しかし、海は広く、1人での活動には、資金だけでなくマンパワー的にも限界が!

そこで、新たな仲間を増やす活動にも力を入れています。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「普段釣りをしている仲間。水中の清掃も手伝ってくれるということで、ダイビングのライセンスを取得して、夏に向けて水中清掃をやっていこうと考えている」

この日は沼津市のダイビングスポットで、ライセンスの取得講習。3人の仲間と、海中に潜る練習をします。

(羽山慎哉さん)
「いつか一緒に潜りたいですねと言ったら、もう予約をしていた。じゃあやりましょうと。僕は釣りをするが、少なからず環境に負荷を与えてしまっていると思う。逆に言ったら、自然に寄り添っているのも釣りなのかなと、常に環境を見ているので。釣り人が動くことによって回るというのが土井さんの理念だと思っている。そのお手伝いができるのが嬉しい」

さらに、土井さんは全国の海にも目を向け始めています。

「もっと海を良くしていきたい」全国規模の連携を目指して

2023年5月、福岡県に行くという土井さんに同行させてもらいました。焼津から目的地まで約900キロの道のりを、経費削減のため車で14時間かけて移動します。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「全国の海の状況は知りたい。全国での協力者もそうだし、最終的には情報の共有ネットワークをつくらないといけない」

福岡県で海の環境保全に取り組む団体と一緒に、海中の二酸化炭素を吸収し、地球温暖化を食い止める存在として注目される「アマモ」の分布を調査しました。ルアー回収とは違いますが、同じ海を守る活動です。

(マリンスイーパー 土井佑太さん)
「来てよかった、勉強になった。僕一人で全国は絶対無理だし、今後はいろいろな活動をしている人たちと連携していきたいなと。ルアーを拾って、ルアーのリメイクをしたいというわけではなく、一番やりたいことはリメイクを通じて、もっと海を良くしていきたい。最終的にはルアーを拾わなくていい海にしたい」

(静岡第一テレビ every.しずおか 2023年6月6日放送)