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【特集】病気と闘う子どもに勇気と癒しを!「ファシリティドッグ」驚きのパワーを引き出す“働く犬” その活動と課題とは?(every.しずおか)

2024年2月16日 13:57
【特集】病気と闘う子どもに勇気と癒しを!「ファシリティドッグ」驚きのパワーを引き出す“働く犬”   その活動と課題とは?(every.しずおか)

入院中の子どもたちと仲良く遊ぶのは、4歳のゴールデン・レトリーバー“タイ”。
タイは、ただのペットではなく、病院で病気と闘う子どもたちに勇気と癒しを与えるために活躍する“働く犬”、その名もファシリティドッグ!

子どもたちから驚きのパワーを引き出す「ファシリティドッグ」の活動と現状を追いました。

専門的に育成され、検査や治療のサポートも

静岡市葵区にある県立こども病院。“タイ”は、この病院で3年前からスタッフの一員として働いています。病院で活動するために専門的に育成され、処置室や手術室まで付き添ったり、リハビリの応援をするなど治療の手伝いも行います。

この日は小学1年生の杏夏ちゃんのもとへ。杏夏ちゃんは”腸閉塞”という、腸の流れが悪くなる病気になり、4日前に緊急手術を行ったばかりです。まだ術後の痛みが残るため、レントゲン撮影に行くのも嫌がる杏夏ちゃんに、タイがリードして一緒に向かいます。
 
(杏夏ちゃん)
「いたーい、歩けない」

痛がる杏夏ちゃんをタイが側でやさしく励まし、なんとか終えることができました。

(杏夏ちゃん)
「タイ君は?タイ君がいい」

すっかりタイのことがお気に入りに。側にいてくれたことで、杏夏ちゃんにパワーを与えたようです。

子どもたちにとって「ファシリティドック」は、経験したことのない入院生活への“怖さ”を和らげてくれる存在です。

子どもに寄り添い “病気に立ち向かう力を引き出す”

海外では20年以上前に導入され広く活用されていますが、国内では、静岡県立こども病院で2010年に導入されたのが最初です。この病院でタイは3代目の「ファシリティドッグ」です。

常にタイと一緒に行動する谷口さんは “ハンドラー”と呼ばれ、看護師経験もあり、命に係わる病院で、タイが子どもと安全に関われるように気を配ります。何より信頼関係が大切なため、プライベートもいつも一緒で同じ家に暮らしています。

(ハンドラー 矢口めぐみさん)
「一つ一つのしぐさに、どういうことを訴えているのか分からなかったけど、今はすぐに分かるようになって、信頼関係ができていると思う」

この日は“血液の病気”で入院するハルカちゃん5歳のもとへ。実は、双子のお姉ちゃんですが、今は免疫力が低下しているため、妹とも会うことができません。母の美優紀さんは、そんなハルカちゃんの元へ、仕事を辞めて毎日通っています。しかし、双子の妹のお迎えもあるため、夕方には帰らなくてはなりません。

(母・美優紀さん)
「大丈夫だよ。あした早く来るからね」

まだわずか5歳のハルカちゃん。夜は一人ぼっちになってしまうのです。

(母・美優紀さん)
「寂しいですね…毎日泣いてくれるから」

そんなハルカちゃんに元気を与えてくれるのもタイです。一緒に遊ぶうちに、ハルカちゃんにも元気が出てきました。

(ハンドラー 矢口めぐみさん)
「大人がいろんな手を使って説得してもできないことも、タイならものの数秒で子どもの心を動かしてしまう力を持っています」

ファシリティドッグの普及へ課題も

現在、国内の病院で働く「ファシリティドッグ」は、タイを入れてわずか4頭のみ。アメリカなど海外ではファシリティドッグの活動が当たり前になっている一方で、日本ではまだ“認知度”すら低いのが現状です。

さらに、ファシリティドッグは専門のトレーニングが必要で、その育成費は約800万円もかかります。デビュー後も年間1000万円もかかり、その大部分を寄付によって賄っているため、運営費的にも課題があるのです。

それでも、タイは静岡県立こども病院で、のべ5000人を超える子どもを見守ってきました。

そんなタイのことが大好きな患者がいます。

ファシリティドッグが持つ可能性に期待

ダウン症の妃那さんです。今は“血液の病気”を患い、夏からここに入院しています。この日は“薬の投与”の日。しかし、お腹の調子が悪く、ぐったりした様子です。

(妃那さん)
「頑張れないかも・・」

そんな妃那さんを元気づけようと、タイがやってきました。

(妃那さん)
「タイちゃん、おいで」

すると、タイが妃那さんのもとへ。

(妃那さん)
「タイちゃんいるとうれしい。あったかいなあ、タイちゃん」

痛かったお腹をタイに温めてもらい、妃那さんは、いつの間にか夢の中。

(ハンドラー 矢口めぐみさん)
「検査や処置、手術とか待っている間が一番ドキドキして、不安が強くなると思うので、タイが添い寝をしてリラックスして待てるっていうのは、タイのパワーだと思う」

妃那さんは日記に「治療はつらいけど、タイちゃんがいてくれたらがんばれるかもしれません」とタイへの思いをつづっています。

(妃那さん)
「タイちゃんがいると、検査とか色々なことできるから」

この日も、タイと一緒に治療を終えることができました。

たとえつらい治療でも、子どもたちから “がんばろう” という驚きのパワーを引き出す「ファシリティドッグ」。全国で病気と闘う子どもたちのためにも、さらなる普及が期待されます。

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