【懸命に生きる小さな命】「リトルベビー」1500g未満で生まれた我が子…悩みながらも強く生きる母親の思いとは (every.しずおか特集)
生まれたばかりの小さな命…。集中治療室で一生懸命、生きています。
2500g未満で生まれる「低出生体重児」…なかでも、1500g未満の赤ちゃんは「リトルベビー」と呼ばれています。「リトルベビー」を生んだ母親たちが抱える大きな不安…。
(リトルベビーの母親)
「歩けるようになるのか、話せるようになるのか、生まれたときから心配で…」
「リトルベビー」を生んだ母親たち、そこには悩みながらも強く生きる姿がありました。
浜松市中央区にある「聖隷浜松病院」。新生児集中治療室=NICUには、高度な医療を必要とする赤ちゃんが入院しています。
(新生児集中ケア 認定看護師 寺部宏美さん)
「赤ちゃんがどんな気持ちでいるかを、赤ちゃんの観察をして読み取って、どういうふうにケアしていけばいいかを考えながら看護している」
実は国内で誕生する10人に1人の赤ちゃんが2500g未満で生まれる「低出生体重児」…なかでも、1500g未満で生まれた赤ちゃんは「リトルベビー」と呼ばれています。
NICUの赤ちゃんを診るのは、専門の資格を持つ「新生児集中ケア認定看護師」。看護だけではなく、ママたちの“心のサポート”役も担っています。
(新生児集中ケア 認定看護師 寺部宏美さん)
「自分の子どもがどんな状態で、どう育っていくのかという見えない部分が、一番不安なところだと思うので、お母さんが子どもと関わる中で、子どものことが理解できるように支援している」
焼津市に住む大石和美さんもその一人です。2022年、予定より3か月早い25週で長男の陽翔くんを出産。生まれた時の体重は 546g。「突然の出産に戸惑った」といいます。
(大石和美さん)
「出産準備をする前だったので、本当に気持ちがついていかなかった。何が何だかわからないまま出産になった。もうパニック、何が起きたか分からない感じ」
陽翔くんは、生まれてから呼吸など健康状態が安定するまで、約半年間 NICUにいました。
2023年11月には1歳に!元気に育っていますが、同じ時期に生まれた子より体が小さく、言葉の発達も遅れていて、悩みは尽きません。
(大石和美さん)
「やっぱりちょっと違うかなと思うときがあったり、陽翔が寝た後に、この先 大丈夫かなとか、いろんなことを調べたりして不安になったり」
掛川市の咲来ちゃん、2歳10か月。咲来ちゃんは予定より3か月早く生まれ、体重は774gでした。
(咲来ちゃんの母親)
「小さく生まれて発達がゆっくりで、将来どうなるのかな、歩けるようになるのか、話せるようになるのかなと、生まれたときからずっと心配で」
孤独になりがちなリトルベビーと母親のためのサークルが静岡市にあります。NICUを経験した、さまざまな年齢の子どもたちとその家族が、イベントなどを通じて交流を深めています。
代表の小林さんも22年前にリトルベビーの双子を生み、子育てを経験した一人です。
(ポコアポコ代表 小林さとみ さん)
「お母さんが心配するその気持ちは一緒だから、先輩のお母さんが新しいお母さんに情報提供をするので、とても貴重な場になっている」
陽翔くんのママ、和美さんもこのサークルのメンバー。同じ境遇の母親と交流し「悩んでいるのは自分だけではない」と前向きな気持ちになれたといいます。
(大石和美さん)
「『困ったことがあったら一緒に考えていきましょう』とか『私たちもこのとき悩みがあったよ』とか、通っていくところなんだと教えてもらえた、私だけじゃないんだと」
咲来ちゃんのママが手にしていたのは、全国に先駆けてこのサークルが作った、小さく生まれた赤ちゃんのためのハンドブックです。
(咲来ちゃんの母親)
「一般的な母子手帳は1キロから体重が始まるが、娘は700gで生まれたので、(成長)曲線のどこにも書けない状態で。このリトルベビーハンドブックは、体重が1キロ以下から始まるので、こんな感じで大きくなっていくから大丈夫と安心できた」
このハンドブックに出会い、咲来ちゃんの成長を実感できるようになったといいます。
(咲来ちゃんの母親)
「もう周りと比べない、娘なりの成長が見られたら、それで十分。娘には自分のこと、周りのことを大事にできる人に育ってほしいと思う」
ハンドブックは先行事例として全国でも導入する自治体も増えていますが、代表の小林さんには、その先に見据える未来があります。
(ポコアポコ代表 小林さとみさん)
「日本中どこで小さな赤ちゃんを産んでも、みんなで小さく生まれた赤ちゃんと親を支えるシステムができればいいなと思う」
リトルベビーへの理解がもっと広がり、成長を温かく見守る社会になることを願っています。
(静岡第一テレビ every.しずおか 2024年2月5日放送)