【王国復活のカギ?】梅ケ島の厳しい環境で育まれる香り高い希少茶「隠れ茶」の魅力とブランド化の取り組みに迫る(静岡市)
静岡と言えば「お茶」ですが…、2月、そんな、お茶王国を揺るがす衝撃的な数字が発表されました。これまで首位を守り続けてきた「荒茶生産量」で2024年、初めて鹿児島県に抜かれたのです。静岡のお茶は大丈夫なのでしょうか?
そんな中、静岡の限られた場所で、こだわって作られる、知る人ぞ知る貴重なお茶をブランド化して、広く知ってもらおうと活動を続ける女性がいます。それは、県内でも最も標高が高い茶の産地と言われる、静岡市の山間地「梅ケ島」で作られる「隠れ茶」。日照時間が短く昼と夜の寒暖差が大きいことから香り高く、力強い味わいが特徴の“山のお茶”ですが…。なんと、飲むだけではない新たな活用法を開発したり、現地に足を運んでくれる仕掛けを作ることで、茶農家の後継者につながるかもしれない思いがけない動きもあるのです。その注目の取り組みとは…?
「エブリィライフ」は、静岡茶復活のヒントがそこにも!?知られざるこだわりの「隠れ茶」の魅力と、そのブランド化で次世代に残そうと奮闘する、ある女性の取り組みに迫りました。
3月9日、山間地で冷え込みが厳しい梅ケ島の茶畑は、まだ冬の装いです。
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「こんにちは」
齋藤雅子さんは「隠れ茶」の名付け親です。
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「これが『隠れ茶』です、どうぞ」
(徳増 ないる キャスター)
「金色透明でとてもきれい」「とても力強い味わいで、山の清々しい香りがしておいしいです」「そもそも隠れ茶ってどういうお茶?」
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「農薬も除草剤も使っていない梅ケ島茶100%のものを『隠れ茶』と名前をつけた」
梅ケ島のお茶は収穫時期が5月末と遅いため、単独で市場に出回ることは少なく、隠れた存在です。
齋藤さんは、元々、梅ケ島の自然にひかれ移住し、そこで梅ケ島のお茶と出会い、無農薬で丁寧に、こだわって栽培されているのに、その存在があまり知られていなかったことから、この素晴らしいお茶を広く知ってもらうために「隠れ茶」と名付け、ブランド化を始めたのです。しかし、お茶をとりまく環境は厳しいのが現状です。梅ケ島の茶農家、秋山元さんは…。
(茶農家 秋山 元さん)
「一番のネックは後継者がいないということ。やりたいとは思っているけど、後継者とか茶価を考えるとやっていけない…というか、やめざるを得ないというか…」
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「価値を分かってくれる人にお届けできるような仕組みを作りたいし、絶やさずにつなげていけたらいいと思う」
齋藤さんが、ある場所に案内してくれました。
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「お疲れさまでした。ちょっと振り返って…」
(徳増 ないる キャスター)
「素晴らしい景色ですね。どれくらい上がってきた?」
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「今、ここが1000メートル。日本で一番高い茶畑です。もともとは耕作放棄地だった」「ボランティアさんと一緒にきれいにし始めて、今では地元の方が、元の素晴らしい茶畑に戻してくれているところ。ここが私の原点の畑です」
この素晴らしい環境で作られる梅ヶ島のお茶を守ろうと、16年前から活動を始め、耕作放棄地の再生活動やお茶のワークショップ、お茶ツアーの開催など、さまざまな形で梅ケ島の茶の魅力を広めています。
この日、齋藤さんのもとにはイタリアからお客さんが。
このロベルトさんは、世界中を回り、地元イタリア・マルケ州の魅力を伝える活動をしているそうです。
(徳増 ないる キャスター)
「なぜ梅ケ島に来た?」
(イタリア・マルケ州から来静 ロベルト・フェレッティさん と友人・森山 ようこ さん)
「マルケ州と梅ケ島の交流を図りたくて、情報交換のために来た。梅ケ島は風景、歴史や伝統、人々も素晴らしい」
茶畑を見学した後は、お茶のワークショップで、同じお茶でも製法によって味が違うことを体験します。
(イタリア・マルケ州から来静 ロベルト・フェレッティさん)
「そんなに違うの?」
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「では味わってみましょう」
(徳増 ないる キャスター)
「味はいかがですか?」
(イタリア・マルケ州から来静 ロベルト・フェレッティさん)
「心地良い感じがする。オイシイ!」
(徳増 ないる キャスター)
「こうしたワークショップやツアーを通して得るものもあると思うが…」
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「人が来てくれて農家と会う農家は消費者と会ったことがなかったから、そんな場を設けたかったのと、最初はツアーで来たのに次は草刈りをしてくれたり…交流人口を増やすことは、いろいろな意味で、自分では予想しない良いことがいっぱいあると思った」
そして、続いて登場したのが驚きのお茶。
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「『発酵ほろに』(食べるお茶)を使って簡単なスナックにしました」
実は、こちら「隠れ茶」を乳酸発酵させた食べるお茶「発酵ほろに」(食べるお茶)。茶の成分カテキンと乳酸菌を含むスーパーフードです。味も、プレーンや味噌など4種類あり、料理の具材や薬味として利用します。私は半熟たまごに乗せてオリーブオイルをかけいただきました。
(徳増 ないる キャスター)
「おもしろいです。ほろ苦くて酸味も少しあって、お茶の豊かな香りが口の中に広がって…」「どうして『発酵ほろに』(食べるお茶)を開発しようと思った?」
(隠れ茶を守る会 齋藤 雅子 代表)
「(梅ケ島のお茶は)収穫時期が遅すぎて、新茶が5月末というのはとても不利なんです。でも、加工品だったら遅くても関係ない。付加価値が高ければ農家さんの収入になるので、この開発をした」
梅ケ島のお茶を次世代に残したい…そんな齋藤さんの強い思いは、地元にも広がっています。
この宿では、食事メニューに「食べるお茶」を積極的に取り入れています。おすすめは「葵の家紋パスタ」。梅ケ島のワサビと食べる、お茶を合わせた冷製パスタです。
(徳増 ないる キャスター)
「おいしい。お茶の香りとワサビの香りが絶妙にマッチして相性いい」
(大野木荘 志村 美和 代表 )
「交代で香りがするというか打ち消さない感じすね」「『ほろに』(食べるお茶)のサラダです。パスタもいいけど、サラダにすると「ほろに』(食べるお茶)が際立つ…」
(徳増 ないる キャスター)
「爽やか、本当に爽やか…」
(大野木荘 志村 美和 代表 )
「梅ケ島の茶の良さを生かしてくれて」「ありがたいですし、見習いたいと思うし、何か店で使えないかなという思いです」