「ぼくのにぃに」障害のある子どもたちが笑顔に 広がる絵本の輪 そこに込められた思いとは 北海道
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障害がある兄弟姉妹がいる人の視点で描かれた北海道発信の絵本『ぼくのにぃに』。
当初は家族のために描いた絵本が、いま想像以上の広がりをみせています。
「ぼくのにぃに」に込められた思いとはー。
(絵本)「ぼくのにぃには、赤ちゃんにぃに。しゃべれないし、歩けない。ごはんは食べさせてもらうし、いつもママに抱っこ。うんこだってたれる。でもそれが、うちでは「フツウ」。」
障害のある兄とその弟の日常を描いた絵本「ぼくのにぃに」。
(庄司あいかさん)「周りから障害者っていう概念を知るようになってからというか、うちのお兄ちゃん普通じゃないんだって恐らく気付く瞬間がある」
最初は娘のために描いた絵本がいま、予想もしなかった広がりをみせています。
「しゃべれない、歩けない、それがぼくのにぃに」
絵本作家とその家族の物語です。
(庄司あいかさん)「助かりました、本当にいい会場が見つかって」
石狩市の庄司あいかさん。
2024年11月。初めて自身が主催するイベントの準備に追われていました。
家事や育児の合間を縫って、絵本作家として歩み出しておよそ3年。
そのきっかけはー
(庄司あいかさん)「ちょっと強いね。うちの子は呼吸が止まったりはしないので、基本見守りなんですけど、急にぐんと来るので座っているとバタッと倒れたりすることはありますね」
12歳になる長男の隼人くん。
生後まもなく、体に腫瘍ができる難病・結節性硬化症を発症しました。
(庄司あいかさん)「最初、病院にかかってから数日後に初めて母に電話して、死んじゃうかもしれないって言ったんですけど、そのときが1番苦しかったかもしれないですね」
言葉を交わせない隼人くんは「どうしたら笑ってくれるんだろう」。
ふと思いついたのが得意の「絵」。
隼人くんのために絵本を描いたのです。
(読み聞かせ)「うわうわ 高いぞ ゆーらんゆーらん」
なにより見たかった隼人くんの笑顔、そして笑い声。
(庄司あいかさん)「もう、うれしかったですね。あー、笑ったと思って。絵本を読んでいる時間は少しだけ通じ合えるみたいな感覚がありますね」
5人家族の庄司さん。
(読み聞かせ)「がたがたどんどん がたがたどんどん」
10歳の妹・陽菜ちゃんも絵本を読み聞かせ。
でも、この日常が訪れるまでには複雑な思いがありました。
(絵本)「にぃには入院するらしい。ママも一緒に行くらしい。にぃにはやっぱり普通じゃない。ママがいないとつまんない。保育園なんて行きたくない。ぼくはボソッと「にぃになんて死んじゃえ」って言った。」
「にぃになんて死んじゃえ」。
陽菜ちゃんの口から実際に出た言葉です。
(陽菜ちゃん)「周りの人からじろじろ見られたりとか、これうちのお兄ちゃんって見せたときに「あっうん」って感じの反応がちょっと、なんか他の人とは違うんだなって」
(庄司あいかさん)「寂しい思いをさせた分、これから大きくなっても抱きしめてあげたいし、大好きだよ大切だよと伝えていきたい」
(陽菜ちゃん)「(いまは)私からしたら「わたしのにぃに」なんですけど、でもほんとうに大好きなお兄ちゃんです」
札幌市の鈴木瞳さんのヨガ教室。
参加者には共通点があります。
(参加者)「みなさんそういう肢体不自由になるような子で、私の子も全然障害が違うので、本当に全然わからない世界なので逆に教えてもらいたい」
このヨガ教室は「スペシャルキッズママヨガ」。
障害のある子どもを持つ母親だけの教室で、ヨガの後の情報交換が特徴です。
講師の鈴木瞳さんは「ぼくのにぃに」から力をもらったひとりです。
5人で暮らす鈴木瞳さん。
(奏くん)「初めて会った時から恥ずかしかった」
(鈴木瞳さん)「初めて会った時から恥ずかしかったって。照れるもんね」
11歳の長男・奏くんは、出産後に脳性麻痺を発症。
一部関節などは動きますが、立ち上がることはできません。
(鈴木瞳さん)「平均寿命とかそういうのも調べちゃったり、すごい落ち込んだりして、やっぱり友達にも生まれたよって言えなくて」
さらにもうひとつ、長い間、誰にも言えなかった「気がかり」がありました。
障害のある弟を持つ長女・詩ちゃんへの思いです。
その思いを吐き出せるきっかけになったのが「ぼくのにぃに」との出会いでした。
(鈴木瞳さん)「私には言えないことが胸の奥であるんじゃないかなとすごく思っていて、私からお姉ちゃんに面と向かって聞くことができなかったですけど、お姉ちゃんもこれを読んでくれて、「私はそんなふうに思ってないよ」って言ってくれたのがすごくうれしくて、今までの肩の荷が下りた」
(詩ちゃん)「(母が)すごい泣いてて…。全然そんなこと思っていなかったから、聞かれるのちょっとびっくりした」
(読み聞かせ)「がたがたどんどん がたがたどんどん バスが行くぞ バスが行くぞ」
11月30日は「絵本の日」。
絵本作家の庄司あいかさんが主催した読み聞かせコンサートです。
長女の陽菜ちゃんも読み聞かせで活躍します。
オンラインも含めて200人が集まりました。
鈴木瞳さんのヨガ教室も開かれ、好評!
「ぼくのにぃに」隼人くんも楽しそうです。
家族へ思いを伝えるために描いた絵本が、多くの人の心を動かしました。
(参加者)「インスタで見て来ました。すごくあたたかくて心がほっこりするイベントでした」
(庄司あいかさん)「1番最初に絵本を描き始めたときは、もちろんここまでは想像していなかったですね」
(陽菜ちゃん)「それ(会場に)来るときに話していた」
(庄司あいかさん)「娘が、こんなふうになるとは思わなかったって言っていて、小さいことから全国にいって、ゆくゆくは世界に…そこまでいけたらすごいね」
(陽菜ちゃん)「すごい」
「絵本が奏でる優しい世界」。
その物語がゆっくりゆっくり広がっています。