【独白】「あの日は家族でお寿司を食べに行く約束」札幌女児タイヤ直撃…父親初告白「この1年」
「娘はずっと必死で生死の境をさまよっている」。
札幌市で軽乗用車のタイヤが外れ、女の子に直撃した事故から1年。
なぜ事故は起きたのか、なぜ娘を守れなかったのかー
苦悩の日々が続く女の子の父親が、初めてカメラの前で語りました。
(女の子の父親)「事故があってから、ずっと思い出していた場所なので、あのときのままだなという感じで。娘のことを思いたい時と、フラッシュバックみたいに勝手に思い出す時がある」
事故があった歩道に立つ、女の子の父親です。
1年経ったいまも忘れる日はありません。
(女の子の父親)「いい歳した大人が遊びや趣味で車を改造して、安全を十分考慮できずにこういうことを起こして、その結果娘の人生が台無しになったので、自分たちがどんなひどいことをしたのか向き合って反省してほしいです」
一瞬で奪われた家族の日常と苦悩の日々。
初めてカメラの前で明かしました。
あの日、静かだった住宅街が一変しました。
札幌市西区で軽乗用車のタイヤが脱落し、歩道にいた当時4歳の女の子に直撃。
いまも意識不明のままです。
札幌地検は2024年10月、車を運転していた若本豊嗣被告を道路運送車両法違反と過失運転致傷の罪で。
また、車の所有者だった田中正満被告を道路運送車両法違反の罪で起訴しました。
起訴状などによりますと、2人は共謀して軽乗用車を不正に改造。
若本被告は車の点検を怠った結果、ナットの緩みに気付かないまま運転して、タイヤを脱落させ、女の子にけがをさせたとされています。
事故が起きたのは幼稚園からの帰り道。
この日は家族でお寿司を食べに行く約束をしていました。
(女の子の父親)「ここの坂を上っていくんですけど、娘2人と歩いていて、上の子が前を歩いていて(私は)下の子と手をつないで。事故が起きたと」
父親は女の子と手をつなぎ、前を歩く姉と3人で歩道を歩いていました。
すると、およそ70メートル先で軽乗用車の左前のタイヤが外れ、女の子に直撃したのです。
(女の子の父親)「そのときはちょうど下の子と話をしていて、体はこっち向いて話していて。一瞬で、何が起きたかわからなくて、娘が飛んでいくところは覚えています」
一瞬にして娘が手から離れ、気づいた時には、数メートル先のガードレールまで吹き飛ばされていました。
(女の子の父親)「息もしていないと思って危ないと思って、そこから園の中に連れて行って」
これは、事故が起きた直後の映像です。
救急隊や幼稚園の関係者でしょうか。
慌ただしい様子が映っています。
まさにこのとき、幼稚園の中では生死をさまよう女の子の懸命な救命措置が続けられていたのです。
幼稚園の近くにある公園。
娘たちと幸せな日々を送っていました。
(女の子の父親)「これがいつも姉妹で遊んでいた遊具ですね。よくここで遊んでいましたね。事故後に来るのはきょうが初めてなんですけど、思い出しますね」
もう一度、娘と遊びたいー
そう願うも、医師からの言葉が重くのしかかります。
(女の子の父親)「頸髄を損傷しているので、そのダメージが大きくて、一度受けた損傷は治らないと聞いていて。何かしらどこかで再生医療とか期待して探してみたんですけど、なかなかなくて。もう意識が戻ることはないというふうに言われている」
これは、父親が書き記したノートです。
保険や治療費…将来的な自宅での介護。
途方に暮れるような額を目にして、精神的にも経済的にも追い詰められています。
(女の子の父親)「助成などを利用して、生活をなるべくできるようにしていきたいんですけど、自分の稼ぎではもしかしたら足りないぐらいのお金がかかるっていうので」
(記者)「いまタバコに火をつけ、車の所有者の男が出てきました」
事故の後も普段通りに仕事をする田中被告。
警察は2024年6月、車を運転していない田中被告を過失運転致傷の疑いで逮捕しました。
極めて異例の立件に踏み切りましたが、札幌地検はこれを不起訴とし、父親の思いを踏みにじる判断を下しました。
(女の子の父親)「これで起訴までされるから逮捕されるもんだと思っていたら、結局されず。一緒に運転していなかったとしても、危険だとわかっていて運転させたというところは、所有者も悪いのかなと思っています。納得いかないという気持ちです」
愛する娘がなぜ事故に巻き込まれなければならなかったのかー
怒りと不満は募るばかりです。
(女の子の父親)「どうしたら事故にあわずにいられたんだろうって、何回も考えたんですけど、どうしても、逆に一歩間違えたら3人とも当たっていた可能性もありますし、自分だけだったらまだよかったんですけど、娘が当たるって。加害者側はこの1年経った今もまだ罰せられていないという状況で、そういうところに不満も感じているし、娘はこの1年ずっと必死で生死の境をさまよっているのに、それはおかしいなって。加害者は普通に生活してるのって。そういうところに不満を持っています」
タイヤ脱落事故から1年。
娘の回復を祈り続ける父親の苦悩と葛藤は消えることはありません。