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バス・タクシーの行く末は? 運転手不足が深刻 運送業界のあの手この手

2023年11月4日 6:00
バス・タクシーの行く末は? 運転手不足が深刻 運送業界のあの手この手

札幌市中心部から車でおよそ40分、清田区の住宅街です。

この地域では、札幌中心部へ向かうため、主に「バス」が使われています。

地下鉄福住駅や南郷18丁目駅行きなど4つのバス路線がありますが・・・

運転手不足で中心部への乗り入れ廃止も

(岡本記者)「北海道中央バスの清田団地バス停です。こちらには札幌駅前行きの直行バスがあるのですが、12月からは行き先が変わって福住駅までとなります」

この地域を含む清田区や北広島などと札幌駅前を結ぶ便は、12月から地下鉄福住駅までに路線が短縮され…

札幌中心部に向かうためには地下鉄に乗り換える必要が出てきます。

清田団地から中心部までの所要時間は地下鉄に乗り換えた方が早くなりますが、料金は140円多くかかります。

運転手不足を背景に道内最大手のバス会社が下した決断。

対象は「644便」で、過去最大の規模だということです。

利用者は(80代)「東急百貨店まで行きたいが、12月以降は、直行バスがないと言っていたから」「(地下鉄に乗り換えると)階段の昇り降りがね、これだけ年を取ってくると、足の方が言うことをきかないから、ちょっと大変になります。」

利用者は(70代)「運転手がいないということで、しょうがないのでは。少子高齢化で、運転手になる人がいないんだと思う」

深刻さを増す「運転手不足」

このバス会社では、4年前、およそ1300人の運転手がいましたが、現在は200人も減少しています。

また、道内全体でみても30年前、運転手は8000人を超えていましたが、右肩下がりの状態が続き去年は5500人を下回っています。

そして、追い打ちをかけるのが「2024年問題」です。

これまで、バス運転手は前の日の勤務終了から翌日の勤務開始までに8時間をとる必要がありましたが、来年4月からは「9時間以上」になります。

そこで、バス会社がとった対策が混雑が激しい札幌市中心部の乗り入れを減らすことで、乗務時間を短くしようというものです。

相次ぐ路線短縮 高速バスも

白石区にあるJR平和駅前のバス停です。

このバス停は、休日ダイヤの場合札幌駅前行きが1日7本でています。

札幌中心部にかけては、今でも大勢の客が利用していますがJRと路線が重なっているため廃止になります。

バス会社は「バスしか運行しない地域の生活の足を守るために理解してほしい」と話しています。

バスの路線見直しは札幌圏だけではありません。

こちらは、十勝の広尾町と札幌市を1日1往復する「高速バス」です。

様似町にある営業所が運行を担当していますが、この4か月で4人が退職したためあす11月から運休となります。

バス会社では「札幌圏から応援の運転手を出していたが追いつかなかった」と話しています。

利用者は(女性)「札幌に来るには1番いいバスなので、とっても残念です」「帯広まで、出ないといけないので、それが大変かなって・・・」

全道に広がるバスの運転手不足問題。路線の見直しが広がり深刻さを増しています。

タクシー業界も深刻・・・現状と対策は?

一方、運転手不足がとりわけ深刻なのが高齢者運転手が多いタクシー業界です。

そこで、業界ではこれまでの考え方を見直し、新たな試みで運転手を獲得しようという動きが始まっています。

帯広駅前のタクシー乗り場です。

帯広を含めた、十勝地区のタクシー運転手は現在530人。

運転手不足は深刻です。

北海道ハイヤー協会によると、今年4月時点で道内全体のタクシー運転手は、1万1000人いますが5年前から3600人も減ったほか、平均年齢も『63.4歳』と高齢化が深刻です。

専門家は、タクシーはバス以上に地域の事情にあわせた仕組みを整えていく必要があると指摘します。

(福島大学 経済経営学類 吉田樹・准教授)
「タクシーは、実はバス以上に厳しいと感じている。本来、札幌駅周辺で活躍するタクシーと、道内の他の都市で活動するタクシーとは、本来、市場・マーケットが違う。もっとタクシー自体も『値づけ』や『相乗り』も含めて、運用の形態を変えたりタクシー自体も選ばれるようにする構造も必要かなと」

運転手がベンガル語!?若手運転手の獲得作戦も!

講師「近くに誰かいますか」は「近くに日本人は誰かいますかみたいな・・・」

帯広市内で行われた、タクシー会社の経営者や運転手向けの講習会です。

講師「<ベンガル語>これは200円です」「最後、日本語でみたら、何となく『円』と言っているよ…」

帯広周辺では、外国人の利用が増えていることから「分かりやすい日本語」を伝えることで、さらなるタクシー利用につなげようと講習会が行われました。

(十勝地区ハイヤー協会 北村昌俊さん)
「外国人の旅行者も多くなってきていると。今回、コミュニケーションの取り方『やさしい日本語』ということで、何か気づきがないだろうかということで講演をいただいた」

いっぽうこちらは、札幌市南区にあるタクシー会社「TAXI NEXT」です。

おととし誕生したばかり、というこの会社の特徴といえば…

高橋輝さん「27歳・入社2年目になります」
吉田諭史さん「23歳です、入社2年目です」

20代や30代の運転手が多いということ。

20人いる運転手の平均年齢は32歳です。

吉田諭史さん「足元、頭上、気をつけてください・・・」

運転手がドアを開けるなど、細かい気遣いで他のタクシー会社と差別化を図るようにしています。

吉田諭史さん「高齢者は特に転ばないようにとか、支えることも「ドアサービス」するとできるので・・・

会社のなかを案内してもらうと。

TAXI NEXT 松岡信吾・取締役支店長
「休憩室兼研修室で多目的に使えるスペースとなっています」

まるで、おしゃれなカフェに来たかのような雰囲気です。

TAXI NEXT 松岡信吾・取締役支店長
「『休憩』というと車の中でごはんを食べたりする乗務員さん、よく見受けられると思うのですが、休憩は休憩だよ、ということをしっかりと区分けするためのスペースにしています」

さらに、シャワールームも完備して、清潔感あふれる社内にしているといいます。

また、勤務体系も大幅に変え「週休3日制」を導入しました。

入社2年目・高橋輝さん
「入社前は少し窮屈な業界というイメージがあったのですが、実際に入社して働いてみると『自由な働き方』だったりとか、休みの日がずっと充実したりとか、そういったところでは少し気持ちが楽になります」

TAXI NEXT 松岡信吾・取締役支店長
「現状としては 厳しくて、タクシー業界に足を踏み入れる若者たちがいないということで、若い人たちが働きやすい条件は何かを常に考え、今も動いているという形になります」

高辺昇平さん
「私は24歳で、まだ1か月経っていない」

今月入社したばかりの高辺昇平さん24歳です。

10月入社 高辺昇平さん(24歳)
「一番は面白そうだなと思った。お客様は1人1人求めるものが違う、やりがいを感じると思って、タクシー会社を選びました」

今は運転手になるための訓練を受けている高辺さん。

若者でも働きやすい環境があったことが、入社のきっかけだっだといいます。

松岡さんと指導員
「石山通と交差する、今、見えている横の通りは何ですか」
「福住桑園通です」
「この先、止まれを左に曲がります」
「こういうせまい通りは左・右から飛び出しに注意していきます」
「そう必ず目をやって通過して」

すでに2種免許を取得し、来月中旬にもデビューする予定の高辺さん。

接客は好きなほうだといいます。

高辺昇平さん(24)
「『あの運転手さんは良いな』と思ってもらえるような、運転手になれるよう頑張ります」

TAXI NEXT 松岡信吾・取締役支店長
「22歳23歳ということで、若い人たちが入ってきています。これから40年50年と働いていける乗務員さんになります。大切に育てていきたい」
            
私たちの身近な交通手段を、いかに守っていくのか。

「あの手」「この手」の試行錯誤は始まっています。