違法状態がなぜ20年間も…?動物たちはどうなる? 及び腰だった札幌市が認めた”反省点” ノースサファリサッポロの現在地

問題発覚から1か月が経ちました。
無許可で建物を建て営業している「ノースサファリサッポロ」。
違法状態はなぜ20年もの間、解消されなかったのか?
150種類以上いる動物はこの先どうなるのかー
今後の課題を検証します。
(渡辺カメラマン)「園内には動物とふれあう観光客の姿が見えます」
週末の「ノースサファリサッポロ」。
問題が明らかになってからも客足が絶えることはありません。
(来園者)「近くにイヌがいて写真を撮りました」
(来園者)「動物にストレスがかからない方法で安全な場所に移動できたらいい」
「ノースサファリ」は札幌市南区の山あいにある民間の動物園。
宅地や商業施設の開発が制限される市街化調整区域にあります。
運営会社の「サクセス観光」は、必要な許可を得ずに建物を建て、都市計画法に違反した状態で20年近く営業を続けてきました。
(札幌市開発指導課 坪田修一課長)「許可を得ないで建てていること自体が、建物が存在していること自体が違反」
札幌市によりますと、オープンする前の年の2004年に違法建築を確認。
その後、2回にわたって指導しましたがー
(サクセス観光 星野和生代表)「ここでは自然の中で至近距離で動物の本当の姿を見てもらうのがコンセプト」
運営会社は市の指導に応じず、動物園をオープン。
「日本一危険な動物園」と呼ばれ、人気を集めてきました。
それからおよそ20年、無許可の建物は156棟まで増えています。
(サクセス観光 星野和生代表)「営業許可をとって営業していれば、それほど問題ないのかなという認識が甘かったのが原因です。うちはほんと申し訳ないなという気持ちと、市の要請に従ってやっていきますと。法令違反のないようにということを目指すだけなので」
運営会社の代表は反省を口にしましたが、その後も法令違反が次から次へと明らかになります。
道路法で禁じられている国道沿いの国有地への看板設置。
キャンプ場の施設を河川敷に無断で建設。
さらに、園内のグランピング施設が水道法に違反している疑いもあることが分かりました。
なぜ問題が相次ぐのかー
これまでの市の対応に批判の声もあります。
【及び腰の姿勢】
札幌市は2004年から2024年までに、口頭や文書で17回も指導しました。
しかし、動物園の規模は拡大する一方。
なぜ、行政指導よりも強い措置を講じなかったのでしょうか。
(札幌市 秋元克広市長)「基本的には相手に是正の意向があるということで協議してきた。途中で規模を拡大していく状況が見えた段階で対応する余地があったのではないか」
【縦割り行政】
さらに、市は違法建築を把握していたにもかかわらず、動物園の営業に必要な届け出を受理。
旅館業の営業許可や飲食店営業の許可も出しています。
それぞれ市の別の部署が対応していました。
専門家は行政手続法の観点からやむを得ないと話します。
(京都大学 大学院法学研究科 仲野武志教授)「ある法律に違反したことを理由として、まったく別の思いもよらない法律に基づく、許可を拒否されたり取り消されたりするようなことがまかり通れば、それはいわゆる江戸の敵を長崎で打つということにもなりかねない」
これは旅館業法に関する市と運営会社のやりとりが記された文書です。
(サクセス観光 星野和生代表の発言)「早く許可を出せ。行政手続法に基づいて遅延なく答える責務がおたくにはある」
グランピング施設の営業許可を急ぐ運営会社の代表が、市の担当者に詰め寄ります。
担当者は「他の施設でも同じ取り扱いである」と答えますがー
(サクセス観光 星野和生代表)「正当な理由なく遅延させるのは行政手続法違反だ」
このおよそ3週間後、グランピング施設の営業が許可されました。
秋元市長は、手続き上、問題がなくても情報共有に課題があったと反省を述べました。
(札幌市 秋元克広市長)「何らかの違法の状況がありつつ、それらが(市役所内で)共有されることなく事業拡大をしてきたというところについては、しっかり反省をしなければならない」
そして2月18日。
(札幌市開発指導課 坪田修一課長)「ノースサファリサッポロを運営しているサクセス観光から撤去に関する計画書が提出された」
撤去計画書には2029年12月に作業完了と記載されていましたが、動物の取り扱いに関する具体的な記述は一切ありませんでした。
市が建物の撤去を命じる「除却命令」を出せば、事実上の閉園となり、150種類以上の動物たちの譲渡が課題となります。
しかし、受け入れ先を見つけるのは容易ではありません。
2018年に閉館した千葉県銚子市の水族館です。
水槽には1頭のイルカ。
さらにー
(記者)「イルカの水槽の奥にたくさんのペンギンの姿が見えます」
イルカやペンギンが取り残されていました。
道内でも2004年、札幌市南区の定山渓熊牧場が閉園。
ヒグマの譲渡先が見つからず、閉園から20年以上が経ったいまも2頭が飼育されています。
旭山動物園の元園長で円山動物園の参与を務める小菅正夫さんは、動物の譲渡には高いハードルがあるといいます。
(円山動物園参与 小菅正夫さん)「動物を飼うに足る施設がいま空いている施設があるかどうかがまず問題。空いている獣舎はそれほどない」
また、細菌やウイルスが持ち込まれないように動物の検疫もしなければならず、受け入れる側の負担も大きいといいます。
(円山動物園参与 小菅正夫さん)「少なくとも円山動物園は絶対に受けられません。おそらく北海道の4つの動物園はどこも受けられないと思います。安住の地になるような施設をつくって、それは生き物を飼った責任だから、そこまでやらなきゃダメでしょうね」
(住民説明会に出席 小林久公さん)「ここら一帯がノースサファリが買いましたと」
2024年7月にサクセス観光の住民説明会に出席した南区の小林さんです。
サクセス観光は、小林さんたちが住む地域に隣接する土地を新たに取得したことを報告しました。
(住民説明会に出席 小林久公さん)「マスコミ報道の中で、動物が第一なので動物の移転先として近くに買った場所があるのでそこに移転したいみたいな。そうするとここしか考えられないわけです。ここの静かな住環境を破壊されては困る」
サクセス観光はホームページに「動物たちの健康と福祉を守るための最善の策を講じている」と掲載しています。
動物の安全が保たれ、20年にわたる違法状態は解消されるのかー
ノースサファリには多くの課題が残されたままです。