シニア世代の「就活」厳しい現実… 働きたいシニアの労働力をどう生かすのかー 少子高齢化社会の課題 北海道の高齢者有業率が低いワケ

人手不足のなかで注目されているのが、シニア世代の労働力です。
働く意欲のある高齢者が増えていますが、シニア世代の就職活動は厳しい現状がありました。
その現場を取材しました。
(記者)「何歳まで働きたいですか?」
(マチの人)「60歳。体が動けるうちにちょっと自由な時間が欲しいなと思って」
(マチの人)「定年(65歳くらい)まで働きたいなとは思うんですけど。年金ですかね。年金もらえればの話なんですけど。いま不景気の中じゃないですか。物価高くなっていますし」
(マチの人)「仕事しないと、知り合いの人とかを見ていても急に老け込んだりするので、体が元気なうちは何か刺激を得る意味でも働いた方がいいんじゃないかなと」
人生100年時代。
年金への不安もあっていま、働く意欲のある高齢者が増えています。
札幌市内のハンバーガー店です。
材料の仕込みに励んでいるのは、望月郁子さん64歳。
半年前からこの店でアルバイトを始めました。
清掃から仕込み・調理まで、週5日・1日5時間働いています。
(望月郁子さん)「うちは高齢の父と妹と私の3人家族で。やっぱり私が働かないと生計が立たないので、それで働いています」
2024年2月に前の仕事を退職した望月さん。
生活への不安から就職活動を始めましたが、仕事探しは困難を極めました。
(望月郁子さん)「一般公募の募集見ても、年齢不問とはありますけども、履歴書だけで返されてしまったりとか、面接していただければ働く意欲とかお伝えできるなと思っても、そこまで到達できないこともよくありました」
こちらは札幌市が開催している就職セミナーです。
参加者の半数が65歳以上の高齢者です。
(相談員)「第一印象はですね、入ったところから着席して一つの質問が終わったあたりでその方の印象が決まると言われているんですね」
厚別区に住む渡辺さん65歳。
年金だけでは生活が厳しく就職先を探しています。
以前はホテルの洗い場で働いていましたが、現在、ビル清掃の仕事を希望しています。
(渡辺さん)「(洗い場の仕事で)けがをしたりとかがあって、手に負担のかからない仕事とかを考えて。若くなっていくならいいんですけどだんだん歳をとっていくので、そういう部分でも職種を変えないと。だんだん狭き門になっていきますよね」
3か月ほど仕事を探していますが、なかなか希望条件にあう仕事が見つかりません。
こちらは半年前まで管理栄養士をしていた70代の女性です。
先日、同じ職種の求人を見つけ応募しようとしましたが…
(女性)「ハローワークコーナーの方が電話で『まずは年齢なんですけど』ということで」
(相談員)「選考対象になるかどうかをまず聞いてもらうのが先なんですよね。だめって言われた」
(女性)「年齢不問と書いてあったので、スキルははっきりいってあるつもりなんだけど」
高齢者は年齢が壁となって断られるケースが多いといいます。
(女性)「経験はしてきたし、いろいろな気遣いはできると思うんです。いままで積んできた経験を活かしたいなって」
仕事をしている高齢者の割合は、北海道は全国平均を下回りワースト4位。
製造業など高齢者が働く受け皿が少ないことが理由の一つとされています。
希望する仕事が見つからない厚別区の渡辺さん。
この日、向かったのは札幌市の就業サポートセンターです。
(相談員)「今回このシニア人材バンクというのにまずは渡辺さんに登録をしていただきます。登録をしておくことによって、企業さんのスカウトが届くというシステムなんですよね」
「シニア人材バンク」とは、自身の経歴などアピールポイントを専用サイトに掲載。
登録された企業が魅力を感じたシニアをスカウトし、マッチングする仕組みです。
(札幌市就業サポートセンター 水木佳緒里さん)「(希望職種でなくても)企業さんの状況ですとかを聞くことによって、自分だったらできるかもしれないというふうに気持ちを切り替える方もたくさんいらっしゃいますので。間違いなくシニア求人を受け入れてくれる企業と求めているシニアの方、双方メリットがあるというシステムになっています」
登録者500人に対し100人以上が就職につながったということです。
ハンバーガー店に勤める望月郁子さんも、シニア人材バンクをきっかけに就職できました。
この店ではシニア世代のスタッフを積極的に採用。
その仕事ぶりは若い人の模範になっているといいます。
(バーガーキング札幌白石店 藤谷彰店長)「(シニア世代の方は)お仕事に対する熱意というんですかね。自分のお仕事をちゃんと最後までやり通す。中途半端に投げ出したり手を抜くことがまずなく、みなさんの見習うべき存在となっておりますね」
勤務して半年、望月さんは働くことの喜びを感じています。
(望月郁子さん)「ハンバーガーを手にしたときにほんとにうれしそうな顔してみなさん美味しそうに召し上がるんですね。わたしそういうのを見てるときにお客さまを喜ばせれるいい仕事してるんだなとつくづく思います」
人手不足が叫ばれるなか、働きたいシニアの労働力をどう生かすのか。
少子高齢化社会の大きな課題となっています。
シニア世代の労働力が必要とされる背景の一つがこちらです。
一般に働き手とされる15歳~64歳=生産年齢人口は、2030年代から減少が加速すると推計されています。
本当に2030年代なんてすぐそこ、待ったなしの状態なんです。
政府の諮問会議はこれを「国難とも言える成長下押し」と表現し、健康で意欲のある65歳~74歳の活躍などが重要だとしています。
働く意欲のある高齢者が増えていますが、課題なのが働きたいシニアと企業のニーズがマッチしていないことにあります。
こちらは、札幌市のシニア人材バンクのデータですが、介護などの「医療・福祉」やタクシーなどの「運転・配送」は求人数に対して希望する求職者が少ない状況です。
一方で、事務系の職種には希望者が集中していて企業と働きたいシニアのニーズがマッチしていないことが課題です。
また働き方のミスマッチも課題としてはあるようです。
「シニア人材バンク」ではシニア側も話を聞くと興味を持って就職までつながるケースも多いということです。
企業とシニア側の双方が歩み寄ることが就職につながるうえで大事なのかもしれません。