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無断で畑に侵入 道路の真ん中で写真撮影 観光客のマナー違反に苦悩 北海道美瑛町

2024年3月2日 8:00
無断で畑に侵入 道路の真ん中で写真撮影 観光客のマナー違反に苦悩 北海道美瑛町

道路の真ん中で写真を撮る観光客に進入禁止の畑で寝そべる人も。

雄大な丘の景色が人気の北海道美瑛町で長年問題となっているのが、観光客のマナー違反です。

農業と観光の両立を図ろうと試行錯誤を続けています。

丘が広がる雄大な景色が観光客を魅了

大雪山系の山々とゆるやかな丘が広がる美瑛町。

季節によってさまざまな表情をみせる雄大な景色は、国内のみならず海外から来る観光客を魅了します。

(韓国から来た人)「素敵という言葉しか似合わないです」

(中国から来た人)「すごくきれいで美しいと思います」

車道をふさぎ畑に侵入 相次ぐマナー違反

しかし、その一方でー

(山﨑記者)「クリスマスツリーの木なんですが、写真撮影をする観光客でごった返しています。みなさん車に全く気をとめず写真撮影に夢中になっています」

写真を撮ろうと車道をふさぐ観光客。

レンタカーやツアーバスで次から次へとやってきます。

なかには道路の真ん中に三脚を立てたり、車が来ているのに気づかない人もー

さらにー

(山﨑記者)「あちらの男性、畑の中に入ってしまっていますね」


男性が入り込んだのは畑の中。

近くに中国語や英語などで書かれた進入禁止の看板がありますが、気にする様子はありません。

(畑に入った観光客)「奥に行った方が木が近いからきれいに写る」

(畑に入った観光客)「かわいい写真を撮りたい」

観光客の狙いは“写真映え” SNSで人気

彼らの狙いは、いわゆる「写真映え」。

韓国などでは雪に覆われた丘の風景がSNSで人気を集めていて、少しでもいい写真を撮ろうと畑に入る人が後を絶ちません。

畑の上に倒れたり寝そべったり。

大胆な行動をとる人も。

(佐野カメラマン)「看板を見て!」

取材班が注意を呼びかけますがー

(畑に入った観光客)「規制線がないから入った。看板は理解したがあそこには看板がない。看板がないから中に入った」

悪びれる様子は全くありません。

連日パトロールにあたる地元の観光協会は神経をとがらせています。

(観光アドバイザー)「わーっと開放的になっちゃうんでしょうね。来てもらうのはありがたいが、交通ルールやマナーを守ってほしい」

10年以上も前からマナー違反に直面

しかし、こうした問題はいまに始まったことではありません。

(山﨑記者)「池の上に寝そべっています。写真撮影していますね」

去年は凍りついた青い池に入り、写真を撮る観光客が。

町では10年以上前からマナー違反に直面してきました。

畑が踏み荒らされる農家 病害虫の侵入を懸念

観光スポットの近くで農家を営む大西智貴さん。

小麦やジャガイモなどを栽培しています。

(大西智貴さん)「動物の足跡も見えますけど、大きいのは人の足跡ですね。入っているみたいですね…」

畑が踏み荒らされる現状に、ある懸念を抱いています。

(大西智貴さん)「農作物の病気が靴の裏から伝搬されるリスクがある。悪影響を受けやすいジャガイモの品種は壊滅的に影響を受けるので作れなくなります」

農家にとっての脅威。

それは、観光客の靴底を介した病害虫の侵入です。

代表的なジャガイモシストセンチュウは根から養分を吸収し、収穫量を大幅に減らします。

こうした被害を防ごうと、ある取り組みを進めてきました。

(大西智貴さん)「こういう人が作っていると情報発信できる看板で示せたらという思いで立てています」

畑の所有者の名前と写真を載せた看板です。

QRコードを読み込むと、農家のSNSにアクセスできます。

農家の思いを知ってもらおうと地元の若手農家と始めた取り組みで、今後は畑で採れた農作物を看板から直接購入できるようにしたいといいます。

(大西智貴さん)「畑で採れたジャガイモを買って食べたら観光客との距離も縮まるのではないか。畑に入ろうという気持ちにもならないと思うし、いい関係になれると考えています」

AIカメラが人を検知 観光スポットに設置 

町も新たな対策に乗り出しています。

一部の観光スポットにAIを搭載したカメラを設置。

AIが人の数を識別し、観光客に混雑状況を知らせる実験を始めています。

さらにー

(山﨑記者)「観光名所の青い池に来ています。人が池に入ろうとすると近くのカメラで侵入を検知して、警告音を流す対策がとられています」

許可を得て、実際に記者が池に近づいてみるとー

(警告音)「危険です、池に入らないでください」

AIがカメラで人の侵入を検知し、近くのスピーカーから警告音が。

英語や韓国語など4か国語で池に入らないよう呼びかけます。

同時に、撮影された画像が町と観光協会に届く仕組みです。

(美瑛町商工観光交流課 成瀬弘記さん)「どこでどのように無断立ち入りされるのか、実態を(画像で)把握できるので、それに対応して対策を考えられる。(畑に侵入する人は)減っていると思います」

実際、取材中にも警告音が鳴り、畑から出る観光客がいました。

一定の効果が出ていますが、カメラのないところでは畑に入る人も見られました。

農業と観光の共存へ試行錯誤が続く

専門家は、マナーを周知させる仕組み作りが必要だと指摘します。

(北海道大学 石黒侑介准教授)「地域に対する理解がない中で誘客が進んできた結果だと思うので、美瑛町を訪れるときには必ず施設に寄って観光マナーを知ってから行くとか、旅行者の訪問の仕方を設計していくことも今後大事になる」

実効性のある対策をどう進めていくのか。

農業と観光の共存に向け、試行錯誤が続いています。