「いじめと自殺の因果関係ある」尾木直樹委員長で再調査…決め手は「ネットでSOS」旭川市
3年前、北海道旭川市の公園で女子中学生の遺体が見つかった問題で、再調査委員会は2024年6月30日、いじめと自殺の因果関係を初めて認めました。
決め手は生徒がネット上で発していたSOSでした。
(旭川市いじめ問題再調査委員会 尾木直樹委員長)「いじめのトラウマやフラッシュバックが影響してずっと尾を引いて、長期間にわたって彼女を苦しめていたということがつぶさにわかるんです」
旭川市で30日に開かれた会見です。
教育評論家の尾木直樹さんが委員長を務める再調査委員会は、市内の公園で自殺した廣瀬爽彩さんについて調査結果を公表し、いじめが自殺のおもな原因であった可能性が高いと初めて認定しました。
運動会で元気によさこいを披露する女の子。
当時、小学4年生の廣瀬さんです。
2019年4月に中学校へ入学しましたが、その直後から体の不調を訴え、学校に行きたがらないなど様子が変わっていきました。
再調査委員会によりますと、廣瀬さんは学校内でマネをされて笑われる、疎外されていたなどを含む計7件のいじめを受けたといいます。
中には性的ないじめも含まれていました。
廣瀬さんは別の学校に転校しましたが、家に引きこもるようになります。
そして2年後の2021年冬。
「ねえ、きめた。今日死のうと思う」
廣瀬さんは知人にこう告げて消息を絶ち、翌月、公園の雪の中から凍死した状態で見つかりました。
廣瀬さんの死後、旭川市教育委員会はいじめの疑いがある「重大事態」として、第三者委員会による調査を開始しました。
しかし、第三者委員会の最終報告書では上級生らによるいじめが認定されたものの、廣瀬さんが公園で自殺した背景にいじめがあったかは明言を避けました。
これに対し遺族側は反発。
「理解に苦しむ内容であるのみならず無責任とのそしりを免れない」
遺族側の訴えを受け再調査委員会が立ち上がり、30日に市長にいじめと自殺の因果関係を認める調査結果を報告したのです。
認定結果が覆った決め手。
それは、廣瀬さんがネット上で発していたSOSでした。
「いじめを受けてから1年がたちそうなのに私は何もできません。何もかもが怖くて怖くてたまりません」
転校したあと、廣瀬さんはSNS上にいじめの記憶を綴っていました。
また、インターネットでライブ配信する男性に自ら相談もー
(廣瀬爽彩さん)「いじめを受けていたんですけれど、そのいじめの内容が結構きつくて、自分のほうでなかなか納得がいかないというか処理できないという気持ちになってしまっていて」
失踪直前まで廣瀬さんが綴った「死ぬ」「怖い」などの言葉。
こうしたSNSの履歴などから、より踏み込んだ調査結果が導きだされました。
(旭川市いじめ問題再調査委員会 野村武司副委員長)「いじめ被害が存在しなければ自殺は起こらなかったと結論付ける」
遺族代理人弁護士は「非常に完成度の高い画期的な調査結果」と内容を高く評価しています。
廣瀬さんの遺体が発見された公園には、いまも花を供えに訪れる人が絶えません。
(旭川市民)「大人が子どもの気持ちを考えて悩みに悩んで命を絶つなんてことがないような、寄り添った対応を考えるべき」
いじめと自殺の「因果関係は不明」とした第三者委員会の結果を覆した今回の再調査。
学校の対応についてはいじめへの対処を怠ったと指摘し、再発防止策として早期発見やいじめの認知について提言しました。