「観光の灯は消さない」観光船の利用客半減も再生の道へ 安全対策を徹底 葛藤続く知床のいま
観光のマチ・知床。
1年前には事故の影響が色濃く影を落としていました。
さらに1年が経ち、葛藤しながらも再び以前の知床を…と奮闘している人もいます。
様々な思いを胸に抱く知床の観光はいまー
斜里町ウトロ地区・波飛沫。
観光客の大半が立ち寄る、地域を代表するラーメン店です。
あの事故の影響で来店客が半減したといいますが…
(波飛沫 北林弘昭さん)「去年もちょっとずつ戻ってきていたので、今年も前みたいに少しずつ戻ってくるんじゃないかなと思います」
一方で、2年前の暗い影から脱し切れていない観光業者も。
(北本アナウンサー)「事故を起こした知床遊覧船の事務所があった場所です。その隣の別の企業も観光船事業からの撤退を余儀なくされました」
知床の雄大な景色が楽しめる観光船は、ウトロ観光の目玉でした。
沈没事故の影響はいまなお大きく、観光船の利用者はコロナ前の半分以下のままー
ウトロで居酒屋も営む、漁師の古坂彰彦さんです。
事故直後、連日捜索に加わった古坂さん。
知床の海を知るものとして葛藤を抱える日々。
それでも、自分たちのマチを元気にしたいと、事故後に漁業の傍らこの店を開きました。
(北本アナウンサー)「知床の海のイメージが悪くなってしまったことが、いい方向に変わっている手ごたえは?」
(古坂彰彦さん)「海のことだから普通の人は分からないと思う。僕らがこういうことをやることによって変わっていくんじゃないかな。やっぱりウトロにいろんな人が戻ってきてくれて、素晴らしい景色を見て、おいしい魚を食べてもらって」
「観光船おーろら」のウトロ事務所です。
冬は網走で、夏はウトロで観光船事業を営んでおり、かき入れ時のゴールデンウィークを前に、知床での営業に向けた準備を進めていました。
今月19日、斜里町が設置した協議会が1年半以上かけてまとめた安全対策の最終報告では…
(知床アクティビティリスク管理体制検討協議会 石黒侑介座長)「地域や事業者が責任を負うのではなく、リスクを共有していこうという考え方」
ただ、観光船事業者の東海林さんは、まずはそれぞれの事業者が安全対策を徹底することの重要性を指摘します。
(道東観光開発 東海林竜哉さん)「事故のことを風化させてはいけない。忘れてはいけない。お客様の入りは事故後、非常に厳しいものがあります。観光の灯は消さない。安心して楽しんでもらえるように努めるのが船業者の使命だと思っています」
二度と悲惨な事故を知床の海で繰り返さない。
そして立ち止まってもいられない。
2年経ついまでもウトロは葛藤を抱えながら再生に向かっています。