【特集】価格高騰するコメは安くなるか 備蓄米放出は「からくりがある」「効果は限定的」と専門家が指摘 “消費者が置き去り”となる可能性も 《新潟》

備蓄米の放出について影響を口にしました。
キヤノングローバル戦略研究所 山下 一仁 研究主幹
「もし農水省が言っているように “21万トンを誰かが隠している”というのであれば、備蓄米が放出されるとすると、 いま高止まりしているコメの値段が下がる」
3月に行われる備蓄米の放出。
政府は茶わん32億杯分、約21万トンのコメが消えたとしています。
市場関係者によると、一部の卸売業者や生産者などが値上がりを受け「より高い時に売りたい」と売り渋り、コメを余分にストック。
市場に出回る量が減ってしまい、価格の高騰が続いているとの見方もあります。
政府はそれを補うために、備蓄米21万トンを放出します。
高騰したコメの価格を抑える狙いです。
21万トンとはどのくらいの量なのか。
国内では、いま1年で約700万トンが消費されています。
1か月にすると約60万トン。
21万トンはわずか11日分に過ぎません。
山下さんは、“消えたとされる21万トン”について、誰かが隠しているには矛盾があると指摘します。
もし売り渋りで隠していた場合、放出によって価格が下がることをおそれ、“隠していた21万トン”を出してくるはずだといいます。
キヤノングローバル戦略研究所 山下 一仁 研究主幹
「そうすると、21万トン放出されるじゃなくて、隠してると言われている21万トンもさらに供給される。農水省が言っていることが本当なら、42万トンの市場の供給増になる。米価暴落ですよ。でも農水省は、 そんなことは起きないと思っている」
21万トンという数字に矛盾があるという指摘は他にも。
新潟大学でコメの流通について研究する伊藤亮司助教です。
戦時下など、法律で国がコメを管理していた時代は終わり、いま推測のデータしか集められず、その誤差が21万トンとなって現れたのではないかといいます。
新潟大学 農学部 伊藤亮司 助教
「実際に21万トンどこかに隠れている証拠もない。実は幻想に過ぎないんじゃないか論はリアル」
さらに、伊藤助教は備蓄米の放出には、ある“からくり”があると指摘します。
それは、政府が放出する先が、消費者に近い小売業者や卸売り業者ではなく、その手前の“集荷業者”だという点です。
その指摘によると、大手の“集荷業者”はコンビニのおにぎり用のコメを年間で契約しているといいます。
しかし、いまの争奪戦の結果、契約分のコメを確保できず、違約金を払う事態に直面しています。
そこに備蓄米を放出することで、集荷業者はコンビニおにぎり用のコメの補てんにできるというのです。
新潟大学 農学部 伊藤亮司 助教
「そうするといま、実際にスーパーの店頭で困っている消費者向けよりは、3か月後のコンビニおにぎり用にそれが使われると考えると、なおさら思っているような効果は限定的。彼ら(集荷業者)にとっても助け船になるし、国民にとっても21万トン放出して“政府は頑張ってる感”出せたらいいと思ってると、こういうことになる」
消費者は置き去りとされてしまうのか。
さらに、生産者からも“ある懸念”の声があがっています。
生産者
「(米価が)下がってほしいね。下がらないと困る。我々は高ければいいと思われていると困る。買う人も我々もお互いに“いい状況”でなければ続かない」
生産者
「我々は農業所得が必要。コメの値段にこだわっているわけじゃない。ただし、いまの概算金レベルの 2万5000円が我々レベルの経営でやっと経費が賄えるレベル。それを国民が高いと言うなら、 1万円下げて、1万5000円でもいいけど、下がった1万円分はちゃんと(国が)補てんしてくれれば」
放出する備蓄米をめぐっては、3月10日に集荷業者による入札が始まります。
消費者に救済の手は届くのか。
見通しは不透明です。
2025年3月6日「夕方ワイド新潟一番」放送より