【能登半島地震】活断層の“割れ残り”が佐渡沖に存在か…離島の避難 課題とは《新潟》
今回は「離島の避難」についてです。専門家は佐渡の付近には今回の地震では動いていない活断層の“割れ残り”があると指摘しています。
再び大きな地震に見舞われたら・・・。
住民たちは支援物資の輸送など離島ならではの問題に不安を募らせています。
佐渡にも津波が
石川県で最大震度7を観測した元日の地震。能登半島には各地に津波が押し寄せました。
震源地から約100キロ離れた佐渡でも津波警報が発令。
住民
「また引いとるな」「間違いない」
佐渡市で約20分後に第一波を観測
海では引き波が。揺れから約20分後、島の最北端に位置する鷲崎では第一波の津波を観測しました。しかし、震源地に近い場所ではもっと早く津波が到達していたといいます。
「比較的早く到達した」
長岡技術科学大学の犬飼直之准教授です。
犬飼直之 准教授
「先端部には2,3分で到達していますね、第一波が。佐渡の方にはあまり大きな津波は行っていなかったと思うんですが、とはいえ比較的早く到達していたと考えています」
佐渡市の小木地区の住民たちは、地震の後、川をさかのぼる津波を目撃していました。
住民
「割りと早かった。津波ってこんなに速いんだなと」
「強い揺れを感じたら直ちに避難行動の開始」
犬飼准教授によりますと、津波は水深の深いところで時速350キロメートルほどの速さで迫ってくるといいます。
犬飼直之 准教授
「日本海沿岸域の地震の発生域は他の領域に比べて比較的陸地に近く、津波が発生した場合、陸地に早い時間で到達しやすい。津波に関する情報をみて避難行動をしたのでは2分ロスし遅いと考えられます。強い揺れを感じたら直ちに避難を開始する行動をしていただきたい」
佐渡沖に活断層の“割れ残り”が存在か
さらに・・・。今後について懸念を示す専門家も。東京大学地震研究所の佐竹健治教授です。
東京大学地震研究所 佐竹健治教授
「能登半島の沖の断層は傾斜が南側に向かって陸の方に向かって傾いているんですね。ですから能登半島の真下で地震が起きて大きな揺れが伴ったということなんですが、佐渡の方につながる断層は動いていないということが分かりました」
こちらは能登半島地震によって活断層がどれだけ動いたか表した図です。
能登半島の北東側にある活断層は最大で4メートル以上動いている一方で、佐渡に近いこちらの活断層はほとんど動いません。佐竹教授はこれが活断層の“割れ残り”なのではないかと指摘します。
東京大学地震研究所 佐竹健治教授
「先日1月9日にあったマグニチュード6.1という地震もその辺で起きています。ですから地震活動は起きているので、今後そこで大きな地震が発生する危険性がある」
津波のおそれも
さらに今後、佐渡に近い活断層でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合、県内の沿岸部に3メートルを超える津波が襲ってくる危険性があるといいます。
東京大学地震研究所 佐竹健治教授
「活断層から直角の方向に津波が大きくなる傾向がありますので、新潟県ですと直江津、上越とか柏崎とかの辺りで津波が大きくなるという傾向がありますし、あと佐渡も特に南部、小木の辺りは大津波警報レベルの津波になるということで十分注意して頂く必要があるということです。津波が来るまでの時間が太平洋側に比べて圧倒的に短いということですね。地震が来たらすぐに津波が来る」
新潟地震で津波被害
佐渡市の両津湊に住む星野正夫さん(77)です。自宅があるのは海から300メートルほどの場所。
星野正夫さん
「津波は地震が来ればくると思ったよ。かなりの勢いで加茂湖の中に水がどんどん入ってた、すごい勢いだったね」
元日を襲った大きな揺れ。避難所にやって来る住民たちの中には星野さんの姿もありました。
星野正夫さん
「新潟地震の時に津波で家がやられたもんだから、慌てて逃げてきた」
1964年に発生した新潟地震。佐渡の両津には3メートルの津波が押し寄せ多くの家屋が浸水しました。星野さんの自宅も水に浸かりました。当時は避難生活も経験したといいます。石川県の避難所について心配していることがありました。
「体が冷えるし」
星野正夫さん
「食べ物と飲み物と風呂だね。実際になったら体は冷えるし、年取った人は特に大変だと思う」
過酷な避難所生活
過酷な避難所での暮らし。増えているのが“災害関連死”です。避難生活などで亡くなる人が出ています。多くの助けられたかもしれない命。避難所に何が起きているのか。
新潟大学大学院の高橋昌特任教授です。災害派遣医療チーム「DMAT」として1月5日から5日間、石川県の支援に入りました。
新潟大学大学院 高橋昌特任教授
「介護介助が必要な方とか見守りが必要な高齢者の方を、交通事情が悪いので安全な場所に避難させるのに非常に時間がかかって、地元の方も避難できないし高齢者の方のお世話をしなくてはいけない」
能登では幹線道路が寸断
能登半島では地震により幹線道路が寸断された場所も多く、被災地へ陸路で支援物資を運ぶことが困難となっています。一方、海路での輸送にも支障が。悪天候に加え海底の隆起や港の被害などで船が入港できず物資の到着が滞ることもあったというのです。
高橋特任教授はこうした問題は「離島の佐渡でも起こりうる」として警鐘を鳴らしています。
「能登と佐渡は似ている」
新潟大学大学院 高橋昌特任教授
「能登と佐渡は高齢者が多いとか道路事情が悪いであるとかそういった部分が似ています」
佐渡には島の沿岸部を結ぶ「佐渡一周線」が通っています。しかし、ひとたび土砂崩れなどが起こると集落が長期間に渡って孤立する可能性があります。また、悪天候で船が出ず支援物資が届かなくなることも想定されています。
備蓄倉庫はあったが
元日の地震では21か所の避難所に合わせて2700人ほどが避難しました。
避難所には一定数の防災用品を保管しています。それとは別に佐渡市内には備蓄倉庫を20か所以上設置していて、災害時には倉庫から避難所へ物資を補充するといいます。しかし 元日の地震では、どこの避難所にどのくらいの人が避難しているか把握に時間がかかったため一部の施設で毛布などが足りないこともあったといいます。
佐渡市 小木行政サービスセンター 本間 悟 センター長
「陸路が寸断されるケースは佐渡でも考えられる。大型のヘリコプターなどで避難物資を運ばれているような映像も見ましたけど、そういった場所も整備していかないといけないと感じました」
佐渡市長は
そうした問題に佐渡市の渡辺竜五市長は。
渡辺市長
「孤立の可能性がある公民館などは物資などを常時置いておくことも必要と考えています」
能登半島地震を受け集落の公民館にも防災用品を備蓄するなど災害時の避難体制を強化していくということです。
新潟大学大学院 高橋昌特任教授
「佐渡に何か起きた時にということについては、今回の震災で学ぶことが多いと思っています」
離島が抱える多くの課題。災害への備えが急がれています。
2024年2月2日「夕方ワイド新潟一番」放送より