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ゴジラと信州上田のコラボレーション!赤い橋に、蚕に、農民美術に…「特撮のDNA in信州上田展」【長野】

2024年8月13日 21:00
ゴジラと信州上田のコラボレーション!赤い橋に、蚕に、農民美術に…「特撮のDNA in信州上田展」【長野】

ゴジラ映画とともに特撮映画の軌跡を振り返る企画展「特撮のDNA in信州上田展」。実はゴジラ映画に通じるような産業や芸術が古くから伝わる上田市。人気怪獣とのコラボレーションも実現していました。

実現しないものや状況をあたかも現実のように見せる技術「特撮」。今から70年前に公開されたゴジラ映画から始まったと言われています。先月12日から上田市のサントミューゼ・上田市立美術館で開かれている「特撮のDNA in信州上田展」。
企画展では映画のために作られた現存する最古の模型から去年、公開された最新の映画「ゴジラ-1.0」まで、実際に撮影で使われたスーツやミニチュアなどおよそ260点が展示されています。先週、来場者が1万人を突破するなどこの企画展をきっかけに全国各地から多くの特撮ファンが訪れています。

そんな会場内でひと際目を引くのが、上田市の街並みを再現したジオラマです。「赤い橋」として親しまれる上田電鉄別所線の千曲川橋梁も再現。2019年の台風19号災害で千曲川が増水し落下しましたが、およそ1年5か月ぶりに全線復旧。復興のシンボルとなっている橋です。

上田市立美術館 山極 佳子学芸員
「ゴジラ映画というのが大きな脅威、災害であるとか脅威であるとかっていうのを描きつつ、復興というものが裏のテーマとしてあるもの考えておりまして、そんなことでこの赤い鉄橋をジオラマの中に作っていただいた」

実は「赤い橋」がかけられてちょうど100年の節目。かつて、この橋を渡って運ばれていたとされているのが…。蚕のたまご=蚕種です。

【上田蚕種】植物の種のように見えることから名付けられたという蚕種。この種のような卵からカイコの幼虫がふ化します。蚕種を製造販売するのは100年以上の歴史を持つ大正時代創業の「上田蚕種」です。

江戸時代末期から昭和にかけて県内の経済を支えた養蚕業。信州は蚕種と製糸の生産が全国一を誇り、上田も「蚕都」と呼ばれるなど養蚕業が盛んに行われました。「上田蚕種」が今回の企画展に向けて作ったのが「ちびモスラのおくりもの」です。

人間の味方で温厚な性格が特徴の蛾の怪獣モスラ。劇中では東京タワー、そして国会議事堂に巨大な繭を作ったモスラ。「ちびモスラのおくりもの」は、実際にカイコのサナギが入っていた繭玉を使い、毛羽や汚れを取って袋詰めされました。人形やストラップなどに加工したり、肌のマッサージに利用できたりするなど使い方はさまざまです。

上田蚕種の従業員
「うちは種屋ですから中にあるサナギが大事なんですよ」「繭をカットしてこの中のサナギを出す」「サナギをオス・メス鑑別しましてそれで部屋ごと分けて交尾をさせて卵を産ませるっていうのがうちの仕事なんですよ」

「上田蚕種」ではサナギが入った繭玉を地元や県外から仕入れ、成虫に羽化させます。その後、交尾させ1匹から500個ほどの卵が産まれます。放っておいても1年後には自然にふ化し幼虫になるといいますが、ここでは、温度や明るさの調整など人の手を加え、産卵から最短2週間ほどで、客が購入したいタイミングに合わせて幼虫にふ化させることができます。それら全ての基本になるのは何気ない感覚やさじ加減です。

上田蚕種 戸堀真澄社長
「やはり優しさの部分だったり愛おしく見える部分っていう何か奥ゆかしさの部分ていうのはモスラもカイコも通じるものかなとは思っています」「多分私たちの蚕種業とか蚕糸業っていうのも明治以降、たぶん海外に学んででも日本独自の進化をして、カイコの世界では日本が一番ていう風に言われている部分もありますから、そういう点は(ゴジラ映画と)相通じるものを感じます」

【農民美術】
ホオノキやクスノキから作られていたのは…ゴジラです。企画展に合わせて30体限定で作られています。

上田市に伝わる伝統的工芸品「農民美術」。その昔、冬場に農家が作り始め木彫り製品をはじめその数、数百種類に上ります。温もりのある人形、材料には木の端材=こっぱが使われたことから「こっぱ人形」と呼ばれています。大きな彫りあとが特徴の断面。温かくて可愛らしい素朴なフォルムが特徴です。今回オファーを受けて、木彫りのゴジラを手掛けたのはこの道50年の徳武忠造さんです。

徳武忠造さん
「ゴジラと言えども、あれは架空の動物ですけど、その後ろにはやっぱり人間の生活っていうのがあるわけですよね、ですからそういう点ではね」「作っている、製作している人たちの気持ちっていうのは、たぶん似たようなところがあるんじゃないかっていう風には思ってます」

企画展が開催されているサントミューゼ・上田市立美術館。大正時代に農民美術を提唱した作家、山本鼎の作品がコレクションの中心を担うこともあり今回のコラボレーションが実現しました。

サントミューゼ 山極佳子 学芸員
「上田の地で農民美術であるとか蚕糸であるとか、やはりモノづくりの技術で発展、栄えていった面がある土地ですので」「ものづくりの情熱ですとか技術的側面ですとかそういうところから、捉えていっていただけるのかなと思っています」

上田市とゴジラ映画のつながりを感じることができる企画展「特撮のDNA in信州上田展」は、来月8日まで開かれています。