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【特集】里山の絶景 そこに暮らす人々「里山の尊厳」を後世に アマチュア写真家の思いとは【長野】  

2023年12月7日 21:10
【特集】里山の絶景 そこに暮らす人々「里山の尊厳」を後世に アマチュア写真家の思いとは【長野】  

失われゆく里山の自然。そこに暮らす人々の姿を写真に残し続ける男性がいます。過疎化や温暖化。迫り来る危機の中で伝え続けていきたいと願う「里山の尊厳」とは。

宮之尾剛さん
「難しいですよねなかなかそうならない。7年ぐらい来てますけど自分が来た時になっていたのは1、2回しかないです」

長野市鬼無里地区と戸隠地区の境。標高およそ1000メートルの大望峠。北アルプスや戸隠連峰が目の前に広がります。条件が重なると息をのむような雲海が広がります。

その美しい景色を知るアマチュア写真家の宮之尾剛さんです。

「7年前に一回このぐらいよりもうちょい早い時間にその、あの集落の辺まできれいに(雲海が)入って雲もなくてそれが一番良かった写真ですね。それを超えるのを撮ろうと思って7年通っているんですけどだめですね、撮れないです」

平日は会社員として働き週末を撮影にあてています。宮之尾さんは8年前に写真撮影を始めました。もともと自然の風景が好きだったこと。さらに里山の油絵を描いていた父親の影響でいつしか被写体は里山になっていきました。

宮之尾さん
「里山の風景写真でもテーマは“里山の尊厳”っていう言葉を使っているんですけど、お一人で高齢になってもその場所を愛してこだわりを持ってしっかりお住まいになっている方が多くて。皆さんやっぱり自分の土地や今までの生活習慣を大事に生きて来られてるんですね。これからもその生活を続けていくとおっしゃっているんですけど、それって本当に大事な尊厳の部分で」

宮之尾さんが「里山の尊厳」をテーマに撮り続けようと強く心が動かされた一枚です。信頼関係を築きながら2年がかりで撮影したといいます。

手作業で田植えをする女性。田んぼの向こうに立っているのは脳梗塞でもう、自分の手では田植えをすることがかなわなくなった女性の夫でした。

この日、宮之尾さんはかやぶきづくりの小屋を訪ねました。

清水加久雄さん
「入っていいよ、お入り。こんな、狭いところよ」

長野市鬼無里地区で暮らす清水加久雄さん。96歳。撮影で訪れた6年前、偶然出会いました。清水さんは戦争から戻り18歳の時からかやぶき職人として、鬼無里地区で暮らしてきました。

そして去年、かやぶき職人としての人生に区切りをつけました。これは「最後」の作業。人生をかけてその手、その体に刻んできた技術。宮之尾さんが写真に残しました。

失われたら二度と取り戻すことができないかやぶき技術を学ぼうと清水さんのもとを訪れる若者が多くいます。

11年前に妻が亡くなり今は一人で暮らし。自分で漬けた漬物で宮之尾さんをもてなします。

宮之尾さん
「今年ね6回ね大望峠に撮りに来たんだけど、雲海とアルプスと」

清水さん
「ほう、いい出来あったかい」

宮之尾さん
「一回だけ雲海入ったけどきちんと入らなかったんですよ」

清水さん
「なかなかいい雲海はこねえんだよ。あったかいとさ、いい雲海は撮れねえんだわ。いい雲海できねえんだよかえって」

温暖化や過疎化。里山の風景も確かにその影響を受けています。

庭に出ればふるさとの山々が目の前に広がります。そしてはるか遠くには雪化粧した北アルプス。

清水さん
「子どもが来いっていうけど行かねえんだわ自分で食べたり…自分のことができるうちは景色が離れらんねえから」

「子どもはみんな町とか下へ降りていくからねこういう景色と違うんだ全然。やっり雄大な景色をみるとさ気が大きくなるじゃん。気持ちも晴れるし、きょうもいいなと思って、この景色がいつまで眺められるかなと思って」

里山で暮らし続ける人の温かさ。そして穏やかな中に持ち合わせる力強さ。宮之尾さんが写真に残して、伝えていきたいと願う尊厳がそこにありました。


清水さん「ありがとね」

宮之尾さん「火に気を付けてね」

清水さん「はい!ありがとね」

宮之尾さん
「里山の貴重な尊い風景や、人のね尊厳が、自分の撮った写真の中に映し取れるような、そういう写真家になりたいなと思います」

失われゆく里山の風景、暮らし。この時代に生きた証として写真に残し、後世に伝えていきたいと宮之尾さんは考えています。

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