火防の奇祭「水しぎ」に密着 古着をまとい一斗缶を打ち鳴らして家々を回る伝統行事 岩手・住田町
特集は、古着をまとった一団が一斗缶を打ち鳴らし、家々を練り歩く住田町の珍しい祭り「水しぎ」です。火災防止を願うこの伝統行事と、そこに集う人々の思いを取材しました。
住田町に、この冬一番の寒波がきた日。この町に200年続くとされるお祭りが。奇祭「水しぎ」です。古着などを着た一団が人々の安全を願い、一斗缶を打ち鳴らし街を練り歩きました。この祭りにカメラが密着しました
思い思いにメイクをする参加者。メイクさんも大忙し…。
メイク係「私、白塗り専門なんで」
今年13年目だという、こちらの女性。手つきも慣れたもの。
記者「メイクに注文はあるんですか?」
メイク係「あります。半分だけ白くしてくださいとか、ここから下を白くしてくださいとか」もっとやりますか?」
参加者「もう終わっちゃったの?やられてるの気持ちいいからもっとやってもらおうかな」
メイク係「もっと白くしますか?」
参加者「もうちょっとやります」
菊池芳幸会長「水しぎとは江戸時代に火事を見つけた、今で言うホームレスが鍋釜を叩いて火事を知らせたというのが始まりです」
戦後、一度は途切れたこの祭り。有志の力で復活を果たしますが、新型コロナの影響で中止を余儀なくされました。今年は4年ぶりの開催、町内だけでなく、遠くは東京からの参加者も。いよいよ祭りが始まります。
「大黒舞(だいこくまい)」と呼ばれる「数え歌」が、商店街に響き渡ります。久しぶりの掛け声に、思うことは?
住民「1日1日何事もなく過ごせたら」
住民「お札を見たら安心します。こういう風に貼っておくとね。今年も大丈夫だなって、そうい気持ちになります。」
幼い頃から、この祭りが待ち遠しいと語る女性。
住民「当たり前の毎日が続くっていうことがありがたいと思うことがすごくあります。」
記者「そういう思いもこの祭りに込めている?」
住民「本当にそう思います」
不安が広がった今年の年始め。日々の平和に願いを込めて。一行が向かったのは、町内の小学校。例年、大盛り上がりする場所ということですが。
ワクワクしているのは子どもたちだけではありません。特別参加するのは、校長先生。
記者「今日のメイクのポイントは?」
校長「バレないようにと思ったのですが、バレますね(笑)」
大人も楽しんでいました。
Q 子どもたちには何を感じて欲しい?
校長「4年ぶりなのでちょっと分かりませんが、水しぎという伝統行事が住田にはあるんだということは子どもたち勉強しますので。こういう伝統があったんだということを感じて欲しい」
Q 今年の目標・願いは?
生徒「お勉強を頑張りたいです」
生徒「野球に入りたい」
生徒「運動とかもっともっと頑張りたい!」
盛り上がりは最高潮に。寒さに負けず、頑張れ!住田の小学生!
商店街の魚屋さん。50年前、自らも参加したという「水しぎ」。
記者「やっぱり楽しい??」
住民 (魚屋ご主人)「(疲れるから)酒飲まないとやってらんない」
参加者も当時と比べるとかなり減りました。そして、街の元気もなくなっていると話します。
Q 町の様子は?
住民 (魚屋ご主人)「いやぁ…寂しい町になってきたねぇ。元は、もっと人が歩いてたけど今は誰も歩いてない。お勉強を頑張りたいです」
Q "水しぎ"に願う想いは?
住民 (魚屋ご主人)「いやぁ…火が出なきゃいい。あとは健康。それだけでいい」
代々続くお店が多い中、移住して新たなお店を開いた人も。
Q 最近の景気は?
住民 (服屋ご主人)「値上がりが凄くて。うちはインポート(輸入)も多いので…どうしても…。もうちょっとね、商店街も埋まってくれたら、商店街に遊びにくる人が増えてくれたら。特色あるお店が入ってくれたらと思いますけど」
午後6時:祭り終了
菊池芳幸会長「一本締めの代わりにカンカンで締めたいと思います!」
参加者「一軒一軒回って本当に楽しみにしてくれてたんだな、そんな顔が浮かんだ。すごくあったかい気持ちになれた」
参加者(県外からの常連参加者)「今年は大変なことが色々ありますけど、この町、住田町、商店街が元気になって欲しいと思ってやっています」
つながれる伝統の祭り"水しぎ"には、町民をつなぎ、町を元気づける力がありました。
♪大黒舞ノイズ)