【あの日から13年】3.11に生まれて 9歳の語り部の1年
東日本大震災からまもなく13年。3月11日に生まれたこちら、釜石市の佐々木智桜さんは、語り部としてあの日のことを伝えています。自分の生まれた日に起きた「悲しい出来事」を一生懸命伝え続ける智桜さんの一年を追いました。
ハッピーバースデー
ろうそくに灯った9つの火をうれしそうに吹き消した佐々木智桜さん。でも
智桜さん「楽しい日でもあるし、悲しい日でもあると思います」
智桜さんが生まれたのは3月11日です。おばあちゃんもおばちゃんも震災で亡くなっています。
母・智恵さん
「生まれる前はただただ悲しい日だったんですけど、生まれた後は誕生日を祝う事で、私たち家族がすごく明るくなれるので」
智桜さんはお母さんと同じ震災を伝える活動をしています。
母・智恵さん「智桜さんは、なぜ伝承者になったのですか?」
智桜さん「自分でも伝承者になってみたかったからです」
生まれた3月11日に起きた「悲しい出来事」を伝えることを自分で選びました。
釜石市では、5年前から「大震災かまいしの伝承者」として震災を伝える人を養成しています。智桜さんは2年前、震災を伝える施設で働くお母さんと一緒に講習を受けました。
智桜さん
「きょうは、お母さんが未来館で仕事をしているので私もやってみたいと思ったので参加しました」
講習を受け、伝承者となった智桜さん。
智恵さん
「いずれはこのような伝承者になってほしいと親の希望もありまして、きょう一番若いんですけど、参加させていただきたく一緒に参加しました」
智桜さん「きょうは練習しに」
智桜さんは語り部としてデビューする日が決まり、この日は2日後の本番に向けお母さんとリハーサルを行いました。
智恵さん
「ゆっくりしゃべんなきゃダメなの、早口でしゃべるとみんな聞いているとこわからない。そしたら時間計りながらいくからね。何分、やってみないとわからないから。はいではいきます」
智桜さん
「東日本大震災は自分が生まれる前に起きたことですが、お父さんの家族は震災で亡くなっています。」
智恵さん「3分。まそんなもんだな」
智桜さん「3分?はみがきする時間とほぼ一緒じゃん」
声の大きさ、イントネーション、時間の使い方などお母さんの指導を受け練習を重ねます。
智桜さん
「(あと2日で本番だが?)うまく言えるかなってめっちゃ緊張してます」
迎えたデビューの日。いつもより緊張している様子の智桜さん。座布団の位置を何度もなおしたり、なんだか落ち着きがありません。たくさんの人の視線が智桜さん1人に集まりました。
智桜さん
「地震が起きた時は何も持たなくていいから、とにかく逃げて。命さえあればいいんだよとお父さんに教えてもらっています。自分が教えてもらったことを、みんなにも伝えたいと思います」
拍手
智桜さん
「どきどきした、めっちゃ。語り部になってもっといろいろな人に伝えていきたい」
次は東京の企業からの指名を受け、語り部活動を行うことが決まりました。学校から帰った後、たくさんの練習を行いました。
迎えたその日。桜の花びらがデザインされたピンク色の名刺も用意。交換する姿も様になっています。
智桜さん
「佐々木智桜です」「私は東日本大震災の3年後、2014年3月11日に生まれました」「毎月11日に(鵜住居小学校で)命を大切にする日というものがあります。てんでんこの歌を歌っています」
歌「てんでんこ」
「津波が来るから急いで逃げろ。遠くじゃなくって高い場所。ここなら平気と思っちゃダメ。もっともっと高い場所。てんでんこ てんでんこてんでんこ」
語り部を聞いた人
「地震が起きた後に生まれたのに勉強して伝えている姿を見て感銘を受けました」
智桜さんは、語り部以外にどんなことをしたいか質問されると…
智桜さん「防災士の資格をとるために受けようかな」
今年1月、お母さんから離れた場所で1人で真剣にパソコンを見つめる智桜さん。防災士の資格取得を前に防災危機管理者の資格に挑戦することになりました。世界中の人に伝えていきたいと去年から英会話教室にも通っています。
智桜さん
「英語で語り部できるようになりたいし、あと未来館で働きたいし、防災士をとりたい」
記者 Qそういえば防災危機管理者の資格の勉強してたけどどうだった?
智桜さん「合格しました」
記者 Q3月11日ってどんな日かな?「悲しい日と楽しい日ですね」
1年前より、はっきりとそのことばを話した智桜さん。
自分が生まれた日について向き合い、考え、伝え続けた経験を経て、5日後の3月11日、10歳になります。