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【ビジネス最前線①】「能登半島地震」被災地に水循環装置 災害に強い地域づくり 北上・北良

2024年6月11日 18:59
【ビジネス最前線①】「能登半島地震」被災地に水循環装置 災害に強い地域づくり 北上・北良

 岩手県内の企業が全国、世界で活躍しています。

 6月はそうした企業の取り組みを毎週火曜日3回のシリーズでお伝えします。

 1回目の11日はことし1月に発生した能登半島地震の被災地に水循環装置を届けるなどして災害に強い地域づくりを目指す北上市の企業を遠藤記者が取材しました。

 この装置が、ことし元日に発生した能登半島地震で被災地の断水対策で使われたWOTA BOXです。

 東京のベンチャー企業WOTA(ウオーター)が開発しました。

 シャワーの排水をろ過してきれいな水にして繰り返し使うことが出来るものです。

 北上市の企業、北良の笠井社長が災害時に使えないか検討し、販売を手掛けています。
 今回の地震では地震の2日後1月3日に北良の先遣隊が石川県に入り、現地のニーズを調査。

 6日から現地での設置を始めました。

  笠井健社長
「『これは結構深刻な状況だな』と。しかも金沢から能登の状態も行ってみなければわからない誰も現地のことがなかなかわからないという話がかなり早い段階で入っていたので、これは今までの災害の経験上早い段階で現地入りをしてどういう支援が必要かをできるだけ早く把握する必要があるということでかなり早い段階で能登入りをしたということになります」

 北良の歴史は昭和25年、1950年に酸素ガスを配送したことから始まりました。

 その後、LPガスの販売医療用ガスの取り扱いを開始。

 2011年の東日本大震災では医療用酸素ボンベの配布や被災した設備の再稼働に向けて夜通しの作業が続きました。

 この経験が災害に強い地域の構築に会社が大きく舵を切るきっかけとなりました。

  笠井健社長
「(災害の)規模が大きくなればなるほど障がいを持った方って結構、置き去りにされるというか小さな困りごとというのが、その人たちにとってはとても命を左右するくらい大きな問題だったりするんですけど社会の方がなかなか理解してくれない。そのギャップというのがすごく浮き彫りになるのが大規模災害ということで今回の能登半島地震でもそうだったんですよね」

 東日本大震災、さらに2016年の熊本地震への支援を通じて笠井社長は、人工呼吸器などの医療機器がなければ命をつなぐことが出来ない医療的ケア児と言われる人たちの避難の問題を目の当たりにしました。

 一関に住む千葉一歩さんはCFC症候群という難病で成長の障がいなどがありますが、さらに脳出血を発症し常に人工呼吸器をつけています。

 また、一歩さんは体温調節ができないため、夏はエアコンや冬は床暖房で常に電気が必要です。

 停電をすると命に関わることもありますが、今年4月、北良が開発したプロパンガスによって動く発電機を自宅に設置しました。

 ガソリンで動く発電機と違って静かで、エアコンの室外機ほどの音しか出ないので一般住宅でも使いやすいのが特徴です。

  千葉淑子さん
「すごく体温調節が難しい人なので、今って本当に暑いときはものすごく暑くて寒いときはものすごく寒い医療機器が動いたからと言って真夏のものすごく暑いときに家の中にいられるかなって、多分この人はどんどん体温が上がっていって、生死も危ういことになりかねない」

 北良の技術は電気や水の供給が難しい離島でも生かされています。

 去年、東京都、伊豆諸島の利島村はソーラー発電と浄水装置を備えた北良が利島村のために改良したトレーラーを導入しました。

 周囲を海に囲まれた利島では川がなく、雨水を水源としたり海水を活用していますが塩分が強く装置が故障することもあり、水を供給するコストは通常の地域の14倍に達しています。

 村では、このトレーラーを平時・非常時を問わず使用したいとしており、現在、実証実験を続けています。

  利島村総務課 中川晃介氏
「Q、災害とか困難を抱えている地域が持続できる生活を支えるあちこちで期待できると思うんですが中川さんどう思われますか」「例えば水道が通っていないとか電気が通っていないところでの居住環境を提供できると思いますし、能登半島の地震もそうですけど、防災面でも水道通らなくなった電気通らなくなったという環境でも生活できるという意味では非常に多くの自治体だったり、課題を持っている地域での運用ということで可能性を持っていると思います」

 県内でも矢巾町は北良を通じて2基のWOTA BOXを導入し大規模災害に備えています。

 去年9月の矢巾町総合防災訓練では医療的ケア児を対象にした避難所開設の訓練をしました。

 避難所にはWOTA BOXが活用されることになっています。

  矢巾町総務課 防災安全室大和田剛室長
「矢巾町内にも要配慮者と言われる方々が多数おりまして、またその中でも医療的ケア児の方々そういった方々とご家族含めまして何とか避難体制をしっかり構築したいという考えから進めさせていただいております」

 笠井健社長
「人が住んでいくのが難しいという地域が出てくるかもしれない、こういう過疎の部分でも住み続けられるそういう社会課題の解決にもつながっていくかなと思いますし、万が一、災害もそうですし、例えばウクライナのような戦争が起きた時のことも今後考えなくてはならないそういう時に安全な場所が各地に確保できるということにもつながると思うと、いろいろな人の命を守ることに役に立っていくと思う」

 発電機と蓄電器を組み合わせた停電のないトレーラーハウス。

 さらに水も循環させて地域が断水しても安全に避難生活を送ることが出来ます。

 北良はこうした取り組みを通して、障がいのある人も住み続けられる地域づくりを目指しています。

 シリーズ「ビジネス最前線」18日は岩手で開発した装置が宇宙で使われた話題をお伝えします。