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山形の一年を振り返る 大雨で甚大被害最上地域 旅館や舟下り再開した所も 集団移転はこれから

2024年12月12日 18:11
山形の一年を振り返る 大雨で甚大被害最上地域 旅館や舟下り再開した所も 集団移転はこれから

山形県内のことし1年のさまざまな出来事をシリーズで振り返る「カメラが見つめたやまがた2024」です。2回目は7月の大雨で甚大な被害を受けた最上地域の当時と今を伝えます。

記者リポート「新庄市は一時目の前が見えなくなるほどの大雨が降りました。升形川では濁流となっています」

7月25日。新庄市全域に初めて緊急安全確保が発表されました。

視聴者提供「やばいやばいやばい。流れがすごい」

夜になってもやまない雨。川は一晩のうちに一気に増水し、濁流が押し寄せました。

空撮実況「パトカーが完全に裏返っています」

7月25日の夜、新庄市本合海で住民の救助に向かったパトカーが氾濫した川に流され、2人の警察官の行方がわからなくなりました。

記者リポート「安否のわからない人でしょうか。ビニールシートに覆われて運ばれていきます」

捜索の結果、下流で2人の遺体を発見。死因は溺死でした。

鈴木邦夫県警本部長(当時)「大切な仲間がこういった結果になってしまって大変残念でなりません」

県警は今回のような大雨災害を想定した初動対応のマニュアルを策定し、同じ悲劇が繰り返されないよう努めていく方針です。

記者リポート「裏の山から流れ込んだ土砂は旅館の露天風呂のこのあたりまで来たことが分かります」

最上町瀬見温泉の旅館「観松館」では建物に土砂が流入。長期間の営業休止を余儀なくされました。

ゆめみの宿観松館 高橋裕社長「6月の上旬にリニューアルオープンしたばかり。かなりショックで泣きそうになりましたよね。見た時は」

空撮実況「どこかから流れてきたんでしょうか。遊覧船でしょうかね」

戸沢村では名物の「最上川舟下り」に使用する11隻の舟が雨で増水した川に流されました。

記者リポート「酒田市両羽町の最上川堤防です。河川敷には戸沢村舟下りの観光船が打ち上げられています」

中には海を渡り、200キロ離れた秋田県で見つかった舟も。

船頭・三瓶勇さん(見つかった舟の状態は?)「ほとんどが使えない状態半分になってしまったり穴が開いているのがほとんど」

熊谷ナメコ生産所熊谷佳之代表「この辺から下が水に浸かったので泥が付いたり発生不良があったりかびが生えたり」

鮭川村では特産のナメコが浸水被害に。この工場では空調も壊れた影響でナメコを栽培していたおよそ11万本の瓶を廃棄処分しました。
鮭川村羽根沢温泉の「ホテル紅葉館」。大雨で裏山の砂防ダムが決壊し、大量の土砂が建物の中まで入り込みました。

ホテル紅葉館 元木洋典専務「この危険が取り除かれない限りはこの場所での再建は厳しい」

ホテルは現在の場所での営業を断念。新天地での再開を目指しています。
大雨被害からおよそ1週間後、無事だった舟を使って最上川舟下りは営業を再開。初日から多くの観光客が訪れました。

観光客「災害の跡が見受けられたので想像した最上川とは少し違ったけれど乗れてよかった」

「おかげさまで無事に再開できたこれからも頑張っていきますのでよろしくお願いします」

被害額は3億5000万円に上ったという瀬見温泉の旅館「観松館」。クラウドファンディングで資金を募り、大雨で被害を受けた館内を一部改装。11月、およそ3か月半ぶりに営業を再開しました。

ゆめみの宿観松館 高橋裕社長「お風呂は一旦土砂にまみれてしまったが、本当にきれいになった。たくさんの方に支援してもらってきょうを迎えることができたので機会があればぜひお風呂に入りにとか遊びに来てもらいたい」

一方、大きな決断に向けて動き出したところも。

戸沢村加藤文明村長「集団移転に向けて県および国とも十分協議して進めていく」

空撮実況「辺り一面が水浸しになっています。住宅のほとんどが水に浸かっています。様子が見て取れます」

69世帯が暮らしていた戸沢村の蔵岡地区。近くの最上川が氾濫し、地区全体が大量の泥水に飲み込まれました。

地区住民 川窪啓一さん「自衛隊からヘリで救助してもらった。命が助かったのでよかった」

この地区はこれまでも大雨のたびに水害に悩まされてきました。地区内に輪中堤と呼ばれる堤防を建設するなど対策を講じてきましたが、今回、想定を超える氾濫が起きました。

地区住民「もう水の心配の無いところに集団で移転するしかないですね。だって6年ほど前もこんな目にあっているんですもん。もうここは住む場所じゃないとみんなそんな気持ち」

村は住民に対し、蔵岡地区を離れて暮らす「集団移転」を提案。9割以上の住民が蔵岡地区からの「移転」を希望し集団移転に向け進めていくことが決まりました。

蔵岡地区会 山崎昇会長「願わくば蔵岡が良い方向に向かうようにみんなが誰一人取り残されないような対策が講じられるように村とも歩調を合わせながら頑張っていきたい」

村は2025年1月、役場内に「集団移転対策室」を新たに設置し、事業を進めます。

戸沢村 加藤文明村長「暮れから正月にかけてしっかりと家族と話し合っていただいて地域の方々に沿ってこれからの移転計画防災計画を立てていきたい」

村ではいまも蔵岡地区と古口地区の28世帯が仮設住宅での生活を送っています。

蔵岡地区住民 芦原美智子さん「何人かは新庄や山形に移ったバラバラになったなと思ってやっぱり寂しいね」

大雨からまもなく5か月。いまも多くの不安を抱えながら住民たちは新たな年を迎えようとしています。

最終更新日:2024年12月12日 20:03