浸水被害の戸沢村蔵岡地区 コメの収穫始まる 「生産者が損しない仕組みを」集団移転協議に抱える思い
7月の記録的大雨で多くの家が浸水し甚大な被害が発生した山形県戸沢村の蔵岡地区では、浸水があった田んぼでコメの収穫が始まっています。地区住民の集団移転が協議される中、地元の生産者にいまの思いを聞きました。
中川悠アナウンサー「戸沢村の蔵岡地区です。1か月前と比べて道路脇にあった泥などはかなり撤去されています。日中ですが、避難している人も多いということで非常に静かな印象を受けます」
大雨の発生から2か月となった25日、地区内の作業場では収穫されたばかりのコメのもみを取る「もみすり」作業が行われていました。
みらいカンパニー中村健一社長「2か月前を思えばこんなに収穫できると思っていなかったのでようやく刈れたなと。ここまでしっかり刈れるようになったのは本当にうれしい」
蔵岡地区では7軒ほどの農家が稲作を行っています。大雨の際は最上川が増水した影響で、ほぼすべての田んぼや農機具などが水没しました。
みらいカンパニー中村健一社長「コロナ禍以降お米の安い時期が続いたのでことしようやく利益が出るかなと。ことしコメ高く売れそうだから頑張ろうとそういうところに大雨だったので非常に悔しかった」
農業法人を経営する中村健一さんの田んぼでは大雨の影響で一部に生育の遅れが出たものの、なんとか稲刈りにこぎつけたといいます。
現在は農家同士でコンバインなどの器具を貸し借りしながら毎日の作業に追われています。しかし、用水路が泥で埋まり、稲に水が行き届かなかった影響もあり、中村さんの田んぼでは「つや姫」以外の品種は去年の半分ほどの収量に落ち込むと見込まれています。
みらいカンパニー中村健一社長「一番豊作と言われる時期よりは少し落ちるかと思うが、実際食べてみても例年と変わりなくおいしかったのはよかった」
蔵岡地区に生まれ育った中村さんですが、村が行った地区からの「集団移転」について賛否を問うアンケートには、賛成と回答したといいます。
みらいカンパニー中村健一さん「本当の最初は残りたいと言っていたが、みんなが出るのであればみんなに足並みを揃えて集団移転をして水害とかそういうものの無い土地で安心して暮らしていくのが一番いいかと思う」
新庄市にも農地を持つ中村さん。もし集団移転したとしても蔵岡地区での稲作は続けていきたいと話します。
みらいカンパニー中村健一社長「やっぱり蔵岡で取れるお米が大好きなので蔵岡での農業はやめないと思う。それに他地区での農地の経営規模を増やしていってリスク分散したいといまのところは考えている」
一方、これまで県外であった集団移転では、自治体が住民から買い取る土地の中に、田んぼなどの農地は含まれないケースが多く見られました。集団移転に向けた議論が進む中、中村さんは「移転した場合にすべての農家が損をすることのないような仕組みを作ってほしい」と話しています。